2025年6月に沖縄を訪問された際も、仲むつまじいご様子が伝わった雅子さまと愛子さま

 自民党の中曽根弘文氏による「愛子さまが天皇になったら、結婚する人もいない」という不適切発言が波紋を広げる中、政府は6月30日、皇族数確保に向けた皇室典範改正案を閣議決定した。

 改正案には女性皇族が婚姻後も皇籍に残る案などが盛り込まれたが、十分な議論のない強硬突破のようなプロセスに対し、野党関係者からは「だまし討ちだ」と批判や疑問が噴出している。宮内庁の黒田長官は閣議決定について「非常に重い」と国会の判断に委ねたが、プロセスへの緊迫感は高まる一方だ。

 法案が抱える問題点について、作家の北原みのりさんに話を聞いた――。

女性皇族の姿は男尊女卑が根強く残る社会の映し鏡

 今回の皇室典範改正案の議論は、何が何でも「男系男子でなければダメだ」という前提のもと、男性優位の構造を制度として確定しようとする動きに見え、強い不快感を禁じえません。

 改正案では、女性皇族が結婚後も皇室に残る案が浮上していますが、夫も子どもも皇族になれず、住民記帳台帳法を適用するといいます。男性皇族とは異なる境遇に置くことは、彼女たちを「公務の駒」として利用しようとしているようにしか思えません。

 特に違和感を抱くのは、「皇室の話だから」と言えば、女性への差別的な言動がまかり通る現状です。愛子さまの結婚相手に勝手に介入、子どもが生まれても「夫の血筋だから」と皇位継承を認めない。そこには愛子さまの意思への尊重は一切なく、ただ「相手の男」と「遺伝」だけを見る、露骨な女性軽視の思想が透けて見えます。

 一夫一婦制のもと、男子だけで血統をつなぐのは不可能に近いことは明白。世界の王室の潮流を見ても、直系長子相続が最も安定した方法です。そこを無理に男性へこだわるのは、皇族を人権の及ばない存在として扱い、人間として尊重していないからでしょう。中曽根氏の「愛子さまと結婚する人はいない」という発言は、こうした歪んだ認識が水面下では共有されていることの表れだと思います。どこか家父長的な、女性を軽視してきた古い男性文化が集約されています。

 私たちが何よりつらいのは、かつて皇后雅子さまが経験された苦しみが、30年経った今、愛子さまにも向けられようとしていることです。優れた外交官だった雅子さまがキャリアを断たれ、「世継ぎを産むこと」を求められる凄まじい重圧の中で苦しまれてきた姿を、私たちは見てきました。

 時代の変化で身の周りで差別が消え、安心感を抱けるようになったと思ってきました。しかし今回の議論を通じ、社会の根幹にある男尊女卑は変わっていない現実を突きつけられました。不安や絶望を感じるのは当然の感情です。本来なら敬愛の念が向けられるはずの皇室が、女性たちの「痛みの象徴」になっているのはあまりに悲しいことです。

 多くの国民が愛子さまに天皇になってほしいと願うのは、その平和な空気に未来の希望を見出しているからです。女性皇族の姿は、いまだ男尊女卑が根強く残る社会の映し鏡にほかならない。これからの世代の女性たちに、決して同じ思いを繰り返させてなりません。

北原みのり 作家。女性のためのフェムケアグッズショップ「ラブピースクラブ」、出版社「アジュマブックス」代表。時事問題から普遍的テーマまでをジェンダーの観点から考察する。『毒婦。』(朝日新聞出版)など著書多数