東京・杉並区の岸本区長(公式サイトより)

「長期休暇を取れる組織文化に」

 誰であっても、働く人が休暇を取ることは当然の権利だ。それは首長であっても変わらない。しかし、職責の観点で「いつ」「どのタイミングで」「どんな説明で」取るのかによって、その受け止め方はまるで違ってくる─。

杉並区長・岸本聡子氏、就任会見から4日後に長期休暇

東京・杉並区の岸本区長(公式YouTubeより)

 6月28日、投開票の杉並区長選挙で再選を果たした岸本聡子氏(51)は、7月9日に行われた2期目の就任記者会見で「長期休暇を取る」と発表。期間は7月13日から8月4日までの23日間で「家庭の事情で、次男のケアのためにしっかり時間を使いたい」と説明。

 再選からわずか11日後の就任会見、そこからさらに4日後にはもう休暇に入ることになる。休暇中も区の職員から連絡を受け、週1回はオンラインで情報共有のミーティングを実施。地方自治法が定める「職務代理者」は立てず、必要に応じて区長として決裁を行うという。

 岸本区長は会見で「首長が長期休暇を取ることは、個人の事情を超えた意義がある」と語り、「トップが率先して休みを取ることで、職員のみなさんが安心して長期休暇を取れる組織文化にも貢献したい」と続けたが区民との温度差はあるようで─。

「岸本区長によると区議の反応としては、好意的かつ共感を得ているそうです。しかし、区民からは《区長の勤怠が区職員の職務に影響を与えるとは思えない》《再選したばかり。そんな長い休み、杉並区の職員さんたちは実質とれないじゃん》《職責の重さが違う》など、主に仕組みづくりやガイドライン作成を取らず、自分ファーストの姿勢に疑問を感じている区民も多いのが実情です」(全国紙社会部記者、以下同)

休暇を取ること自体に異論はなし

「母にしかできないことがある」などの賛同も多く、休暇を取ること自体に異論はないとしてもやや“否”の声が目立つ。その背景にあるのは、休暇の正当性そのものの異議というより、タイミングと説明の順序に対する違和感だろう。

 選挙期間中には休暇の可能性などは一切言及されず、当選後の就任会見で初めて明かされたことに対しての疑問と職務代理者を置かないという判断は裏を返せば「中途半端に公務を続けながら休む」とも受け取れる。

 近年では、首長と休暇をめぐる議論が動いている。

 全国で最年少の京都府八幡市の川田翔子市長(35)が女性市長の国内初となる産休を取得した。産休中は副市長が職務代理者を務めるとし、川田市長も「管理職や組織のトップであっても、産休・育休がしっかり取れると示し女性が挑戦しやすい社会に」と語っている。

「2022年時点での総務省の調べによると、全国の首長の中で女性は全体の2%で世界的に見ても女性進出という点で遅れています。今でこそ女性首長も増えているとは思いますが、この“遅れ”もあり産休や女性の休暇に対する議論が先送りにされてきたことも背景にあるでしょう。今回の事案に関してはしっかりとした説明と、区民の不満を解消するプロセスを曖昧にしないことで、先進的な事例として認められると思います」

 政治分野の男女格差が依然としてある中、首長が家庭の事情で堂々と休めること自体は社会として目指すべき方向に違いない─。