約4000台の販売機を並べる「ガシャポンのデパート」外国人観光客も目を輝かせてハンドルを回す

 令和女子の間で今、超流行っているのが「カプセルトイ」。まるで千羽鶴のようにカバンや携帯にぶら下げて歩く姿に目を丸くして立ち止まり、二度見、三度見してしまったなんていう読者もいるのでは。一体全体、どんなブームが起きているのか……。

ガムボールからスーパーカーに

 そもそもカプセルトイの歴史はとても古い。

「アメリカのペニイ商会から1965年に輸入され、東京・浅草に設置されたのが日本における第1号機です。それがいつの間にかおもちゃ屋や駄菓子屋、文房具屋の軒先に置かれるようになり、瞬く間に増えていきました」

 そう話してくれるのは、自らも約11万個のカプセルトイをコレクションし、これまで何冊も書籍を上梓しているタレントのワッキー貝山。

 当初は、カプセルではなくガムやキャンディーの中にそのまま玩具を入れていたという。それがなぜ、カプセルトイという“おもちゃ”に進化したのか? 第1次ブームの火付け役は今から50年ほど前。大人気を誇った高性能で高価格、特徴的なデザインが魅力のフェラーリやランボルギーニ、ポルシェといった“スーパーカー”である。
 
 そのブームにあやかって'77年、「スーパーカー消しゴム」のカプセルトイが登場。大ヒットを記録し、ここから世間にカプセルトイが認知された、とワッキー貝山は振り返る。
 
 しかし当時はフィギュアという概念もなかった時代。そのため思わぬ珍事件が巻き起こる。

「本物の消しゴムだと思って実際に使ってしまい、ノートやテストの答案用紙が破れるなんていう事件が何度も起きて、当時話題を呼びました」(ワッキー貝山、以下同)

 このブームに目を付け、二匹目のドジョウを狙って「ウルトラマン消しゴム」「仮面ライダー消しゴム」などの類似商品も世の中をにぎわせたが、本家本元の「スーパーカー消しゴム」の人気には到底、かなわなかった。

第2次カプセルトイブームを巻き起こした「キン肉マン消しゴム」

 しかしその6年後。新たなトレンドの波が訪れる。それが'83年に第2次カプセルトイブームを巻き起こした「キン肉マン消しゴム(通称キン消し)」である。
 
 原作は、人間を超越した存在・超人のキン肉マンことキン肉スグルが仲間と共に立ちはだかる強敵と戦っていく漫画『キン肉マン』。やがてアニメ化もされ、子どもたちの心をつかみ大ヒットになった。

 この『キン肉マン』をモチーフにした「キン消し」ブームをきっかけに、カプセルトイはいつしか男の子から熱烈に支持されるアイテムに育っていく。

ひと昔前、駄菓子屋などの店頭にあったガチャガチャ。小銭を握りしめて通った人も多いのでは?

 そんなカプセルトイに大きな転機が訪れたのは、'94年のことである。

単なるおもちゃからの脱皮

この年、'60年代から'80年代にかけて人気を呼んだガンダムなど、アニメ・特撮ヒーローもののカラー彩色フィギュアがカプセルトイに登場。これが子どものころに買えなかった、20代・30代の大人たちの心にも刺さって話題沸騰となり、第3次ブームを巻き起こしました」

 日本上陸から30年。ついにカプセルトイは、子どもから大人まで楽しめるアイテムとして確固たる地位を築くことになる。

 その後、'06年には、雫形をした外観の中央にあるボタンを押すことで内蔵された音声が流れる「サウンドロップ」と呼ばれる商品も登場。しかし─、

「スーパーマリオブラザーズや、ウルトラマン、ルパン三世など学校や飲み会などでサウンドロップは人気を集めますが、大きなブームになることはありませんでした」

 このままカプセルトイは、子どもや男性ファンたちのアイテムとして役割を全うするかに見えた。そんなカプセルトイの世界に'12年、革命が起きる。

 それがカプセルトイの企画・制作を行っている奇譚クラブと、漫画家タナカカツキが共同開発した「コップのフチ子」シリーズである。

大ブームになった「コップのフチ子」シリーズ。コップだけではなく、パソコンのモニターにぶら下げる人も

「そのシュールでかわいいポーズやうつろげな表情が、ひとり旅やソロキャンプを楽しむ女子の心を捉え、SNSとの相性もよく、購買力のある20代から40代女性の心を捉え、大バズり。第4次カプセルトイブームを巻き起こしました

 フチ子シリーズは「ぶら下がりフチ子」「ひっかかりフチ子」「座るフチ子」「乗り越えフチ子」「バランスフチ子」「レモンとフチ子」「ないしょのフチ子」といったバリエーションも豊富。

 あっという間にカプセルトイを買う男女の比率は“2対8”と大逆転を遂げている。

 さらに写真展や書籍、劇場マナーCMへの登場などカプセルトイの枠を超えて、「コップのフチ子」は社会現象になっていった。

 気がつけば、昨年のカプセルトイの市場規模は出荷ベースで1960億円(日本カプセルトイ協会調べ)。

 対面販売ではないことからコロナ禍でも売り上げを落とすことなく、この4年間でおよそ3倍まで成長を遂げ、現在「第5次ブーム」といわれている。

最近は、1か月で発売されるカプセルトイの新商品の数は300種類。女性マーケットを意識して、香水などの化粧品も増えています。

 さらにモー娘。から生まれたユニット『ミニモニ。』やサンリオの『ハンギョドン』といった平成レトロなキャラクターものも人気を呼んでいます」

 そこでワッキー貝山、イチ推しの最新カプセルトイを教えてもらった。

「0・5センチほどのアクリルカードに愛、嘘、悪、秘、寂などの文字が書かれたトイズキャビンの『脳内メーカーシャカシャカキーホルダー』はレトロ感たっぷり。アクリルカードの裏面にキーワードを書き足せば、オリジナルものを作ることもできる。そんなところも大きな魅力です。

 そしてもう一つ挙げるなら、ブルーマウンテンの猫フィギュアシリーズ『勝手に牛乳を注ぐ猫』。

 カップのふちなどに猫が乗り、ミルクを注いでいる。その猫背がたまりませんね」

 このところ日本人だけではなく、外国人観光客からも注目を集めているカプセルトイ。

 あなた好みのカプセルトイをチェックして、ファッションアイテムに取り入れてみてはいかが!?

取材・文/島 右近

ワッキー貝山
カプセルトイ専門家。小学生のころから集めたカプセルトイは約11万個に及ぶ。関連書籍5冊を出版。「ワッキー貝山ガチャンネル」YouTube配信中。