7月16日(現地時間15日)、アメリカスポーツ界の「アカデミー賞」とも称される『ESPYアワード』表彰式が行われた。メジャーリーグで異次元の“二刀流”でファンを魅了する、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平も選出されたのだが、アメリカスポーツ界のレジェンドが思わぬ珍事を引き起こした。
「最優秀シングルゲームパフォーマンス賞」を受賞した大谷に対し、プレゼンターとしてステージに上がったのは元ボクシング世界ヘビー級王者のマイク・タイソン氏。手元の“メモ”を読み上げたーー。
「聞いてくれ。受賞したのはショウヘイ・オオタニだ」
拍手が起きる中、司会者が式典を欠席した大谷の感謝メッセージを代読すると、タイソン氏が横から「ショウヘイって男なのか?」と、まさかの質問。プレゼンターが受賞者当人を知らずに紹介したことで、会場には何とも微妙な空気が流れることに。
「タイソンらしいアクシデントではありました」と苦笑いするのは、アメリカスポーツ事情に詳しいスポーツライター。
大谷を「知らない」アメリカ人
「たとえばボクシング世界3階級制覇王者の井上尚弥といった、“同業”の日本人選手のことは詳しいんですよ。大谷のことを“知らない”としたのは決してブラフではなく、本当にMLB“チャンピオン”を知らなかったのだと思います。
これも“唯我独尊”タイソンのキャラと言えますが、さすがに受賞者のことを事前に把握しておくのは当然のことで、プレゼンターとしてふさわしいとは言えません。これは完全に主催側の人選ミスです(苦笑)。
ただタイソンを擁護するわけではありませんが、MVPを4度獲得したメジャーリーガーを“知らない”アメリカ人が多いのも事実なんです」
海外で活躍する日本人選手の筆頭として、日本のメディアでは一挙手一投足が伝えられ、その知名度は100%と言ってもいいほどに、国内では各世代に名前が知られている大谷。もちろん現地のMLBファン、ロサンゼルスでも相当の知名度を誇るが、アメリカ全土となると話は変わってくる。
イギリスの市場調査会社『YouGov』が2026年に公開した、アメリカにおけるスポーツ選手の「知名度ランキング」。つまりアメリカ人にとってどれだけ知られているかを測る指数だが、1位に選出されたのはゴルフ界の「キング」ことタイガー・ウッズで91%。タイガーは9割以上に認知されていることになる。
2位にはバスケットボール界のレジェンド、ロサンゼルス・レイカーズのレブロン・ジェームスで90%。3位にはプロレス団体「WWE」スーパースターのジョン・シナが88%で貫禄の3位。この3名はアメリカの全地域で、ほぼ全員に知られている超有名人と言えよう。
ロナウドやメッシも4割は「知らない」
以下、4位にNFLのトラビス・ケルシー、5位にリオ五輪で体操4冠に輝いた金メダリストのシモーネ・バイルズ、6位に女子テニスのビーナス・ウイリアムズ。国民的スポーツのアメリカンフットボール選手に、国際大会で結果を出している各スポーツのスーパースターが続く。
15位には「FIFAワールドカップ北中米大会」にも出場した、ポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド。19位にスペインとの決勝戦を控える、アルゼンチン代表のリオネル・メッシがランクイン。サッカー界を代表するレジェンドだが、知名度はそれぞれ62%、61%とだいぶ低くなっている。
ここまで大谷どころか、メジャーリーガーは1人も出てきていない。29位にようやく「WBC2026」アメリカ代表主将を務めた、ニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジが。すでに知名度は52%と約半分、ジャッジですら2人に1人が知らない現実。繰り返すが、アメリカでの知名度ランキングである。
そして35位にしてメジャー選手で2人目、ついに大谷がランクイン。知名度はジャッジとほぼ同様の51%で、約半分のアメリカ人が「知らない」という結果。もちろん『YouGov』独自データから算出された指数ではあるが、タイソン氏の「ショウヘイって?」発言も、あながち違和感がないように思えてくる。
なぜ、ベースボールが国民的スポーツであるにもかかわらず、大谷らは知られていないのか。前出のスポーツライターによると、アメリカ国内における「MLB人気の変化」にも影響があるとも。
野球人気は地域差も関係する
「アメリカの人気3大スポーツといえば、これまでNBA(バスケットボール)、NFL(アメリカンフットボール)、そしてMLB(ベースボール)でした。しかし近年、特に若い世代の野球離れが懸念され、一部メディアではMLS(サッカー)人気が野球を上回ったとする報道もあるほど。
そして日本以上にサブスクリプションが主流になっているだけに、余計に普段からMLBを視聴しない世帯も増えています。またカリフォルニアやニューヨーク、テキサスといった地域では大谷選手の知名度は高いものの、野球人気が低い州では“知らない”人も多く、地域差はさらに広がっている現状があるんです」
2028年にはロサンゼルス五輪が開催されるアメリカ。普段は野球を見ない層を含め、アメリカ全土が注視する国際大会で異次元の活躍を見せれば、タイソン氏もまた大谷を認知することになるのかもしれない。
