NHK職員が番組出演者との懇親会後に性被害を訴え、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されていたことが明らかになった。注目されているのは被害そのものだけではない。被害を訴えた後、組織がどのように向き合ったのか――その対応が問われている。
被害後の復職、希望した環境変更は認められず
NHKが5日に公表した調査報告書によると、職員は番組出演者との懇親会後、意に沿わない性被害を受けたと訴え、その後、体調を崩して休職した。
職員は被害について職場に相談。フラッシュバックなどの症状から、所属部局とは別の職場での復職を希望したものの、認められなかったという。その後、職員側は労働組合を通じてNHKに対応の経緯について申し入れを行い、NHKは昨年5月、外部の専門家らによる調査検討委員会を設置。
調査の結果、職員は復職後も異動を求め続けていたものの、実際に異動が実現したのは被害から3年余り後だったことが明らかになった。
井上会長は「被害が発生したことは痛恨であり、さらに、その後の対応により職員にさらなる負担をかけ、復職まで時間を要するなど、キャリアに大きな影響を与えたことを重く受け止めています」とコメント。「当時の対応の不適切さを心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。
今回の問題で浮かび上がったのは、性被害への対応は発生時だけでなく、その後の環境づくりも重要だという点だ。
「性被害では、被害後にどのような環境で過ごせるかが回復にも大きく影響します。相談すること自体が大きな負担であり勇気がいること。その後も苦しい環境が続けば、『声を上げても状況は変わらない』と感じてしまうことがあります」(全国紙社会部記者、以下同)
テレビ業界では、2024年末から2025年にかけて、フジテレビをめぐる一連の問題でも、問題を把握した後の組織対応が厳しく問われた。
元タレント・中居正広氏と女性とのトラブルを受け、フジテレビは第三者委員会を設置。報告書では、会社側がトラブルを把握した後の対応や、被害を受けた女性への配慮のあり方が問題視された。
「NHKとフジテレビでは事案の内容は異なりますが、共通するのは、問題発生後に組織がどう動いたのかが問われている点です。被害を訴えた人を守る仕組みが機能していたのか、組織が優先されていなかったかが重要になります」
「誰を守る組織なのか」が問われる時代に
影響力を持つ出演者と、現場で働く職員。その間にある力関係をどう管理するのか。
「今回のNHKの事案は、一企業だけの問題ではありません。華やかな番組の裏側で、立場の弱い人の声が届かなくなることはなかったのか。誰を守るべきなのか。組織としてのありかたを明確にしなければなりません」(前出・全国紙社会部記者)
NHKは被害者特定の恐れがあることから、出演者を明らかにしていないが、聞き取りに対しては、「飲酒していたため記憶にないが真実であれば申し訳ない」と話しているという。
被害を受けた人が求めているのは、特別な扱いではなく、安心して働き続けられる環境だ。性被害は、その瞬間だけで終わらない。心身への影響が続く中で、組織がどう寄り添うのか。その対応一つで、被害者が抱える苦しみは大きくも小さくもなる。
今回のNHKの問題は、テレビ業界に限らず、すべての組織に「声を上げた人を守る仕組みが本当に機能しているのか」という問いを投げかけている。
