物価高が続くなか、多くの外食チェーンにとって値上げは“客離れ”と隣り合わせの決断になるだろう。ところが、その形が当てはまらない店がある。静岡県のご当地ハンバーグチェーン『炭焼きレストランさわやか』だ。
看板商品の値上げに意外な反応も
同社は10月1日から看板商品の『げんこつハンバーグ1,540円→1,680円(税込)』『おにぎりハンバーグ1,380円→1,520円(税込)』に値上げすると発表。あわせて「土曜日ランチメニュー」を終了し、「げんこつ・おにぎりフェア」の内容も変更するとのこと。主力商品であるハンバーグ・ステーキの原料となるオーストラリア産牛肉の価格が想定以上に高騰し、円安の影響も加わって「これまでにない厳しい局面を迎えている」と説明した。
人気店だけあってこの値上げにガッカリするユーザーも多そうだが、《500円くらい値上げしても全然平気そう》《まだ全然安い》《この値段ならいくらでも食べに行きます》《地元民からすると高くなればなるほど、遠方の人向けになっていくようで寂しいわ》という声が並び、値上げを歓迎する消費者も見られた。
なぜ、さわやかは値上げしても客が離れないのか。
「まず、さわやかの店舗は静岡県内にしか存在しません。牛肉100%のハンバーグを、鮮度を重視してレアの状態から目の前で焼き上げるという提供スタイルゆえに、輸送や静岡限定というレア感戦略などで県外にはほぼ進出しない方針を貫いています。
静岡でしか食べられない、静岡といえばという点で遠方の方にとって目的地化しているでしょう。実際、来店客の約6割を東京や神奈川といった首都圏の客が占める店舗もあるといいます」(グルメライター、以下同)
その人気さ故に休日には受付発券機で整理券を取り、数時間待つことも珍しくない。最も混雑する御殿場プレミアム・アウトレット店では、土日祝日に開店直後で整理券がなくなることもあるそうだ。
さわやか人気が示す異例の成長率
「人気の高さは売上が示しています。2024年度時点で96億円、静岡県内の35店舗の限定展開でありながら、1店舗あたりの売上が2〜3億円以上と推察できます。しかも直近6年で2店舗しか増加していないにも関わらず、売上は20億近くまで伸びているのです」(前出・グルメライター)
全国区でさわやかの名が知れ渡った背景として、静岡県磐田市出身の長澤まさみの一説がある。長澤まさみがテレビ番組で「地元のなつかしい味」として紹介し、翌日から行列ができるほどの影響があったと言われている。その後、周年フェアでのPRなどでの新規客の獲得、リピーターや口コミで全国に広がった。
さわやかは働き方改革の一環として木曜を定休日とするなど、従業員の待遇改善にも取り組んできた。品質とサービスを守るための価格改定であることは、同社の説明からもうかがえる。
かつて静岡県民のささやかなご褒美だった「げんこつハンバーグ」は、いまや全国から人が訪れる“名物”へと姿を変えた。値上げの発表後「それでも行く」との声が多いのは多くの消費者から愛されている証だろう─。
