8月5日の「第108回全国高校野球選手権大会」開幕戦で、春夏含めて甲子園初となる女性審判委員がグラウンドに立った。見事に大役を務めてみせた、2児の母でもある森田真紀審判委員(以下、審判員、審判とする)は「失敗してはいけない」と、試合後に安堵の表情を浮かべた。
今大会では5人の女性審判員がジャッジにあたっているが、8月7日の第3試合、有明(熊本)と立命館宇治(京都)との一戦でその女性審判員による“誤審”騒動が勃発。物議を醸している。
この試合で二塁審を務めたのは佐藤加奈審判員。普段は教諭として勤務する傍らで、高校野球も含めた男女の学生野球において審判を務めている。審判として場数を踏んでいるはずの佐藤審判員だったが、1点をリードする立命館宇治の6回裏の攻撃。
ノーアウト一塁で4番・増澤裕星選手が送りバントをするも、猛チャージしていた有明の三塁手がボールを素早く二塁に送球。クロスプレーとなったがタイミングは完全にアウト。佐藤審判員もそう確信したのだろう、「ヒズアウト(He is out)」と高々とコール。
ところがアウト宣告されたランナーは驚き、納得いかない表情で「タイム」をとるジェスチャー。それも当然で、二塁カバーに入った有明の遊撃手は捕球し損ねてボールを落としていたからだ。
慌ててボールを拾う遊撃手をよそに、二塁前のポジションで微動だにせずコール姿勢をとったままの佐藤審判員。すると球審はプレーを止めて各塁審を呼び寄せ、競技の末に二塁手の捕球が認められずに「セーフ」。アウトの判定が覆ったのだ。
女性審判員の判定に「初のビデオ検証」
また7回にも“誤審”疑惑が上がった。1点差に詰めるタイムリーヒットを放った有明・永田晴輝選手が二塁への盗塁を試みるも、際どいプレーながら佐藤審判員のジャッジはアウト。永田選手の「タッチされていない」とするアピールによって、こちらも初導入された「ビデオ検証」を有明ベンチが要求。
検証に間には甲子園のビジョンでもリプレイ映像が流れ、場内の観客からは「セーフだ」との声も上がっていたが、結果は判定は覆らずに「アウト」。これに有明側だけでなく、立命館宇治の応援スタンドからもどよめきが起きたのだった。
試合は9回、その盗塁死を宣告された永田選手が、ツーアウト満塁から意地の逆転二塁打を放って6対3で有明が勝利。被災地の代表校として熊本県に1勝を届けるも、“誤審”騒動によって少々後味の悪い一戦となってしまった。
試合後、6回に覆った判定について「私がミスをしてしまった」と、自ら他の審判員に相談を持ちかけたことを明かし、反省の態度を示した佐藤審判員。一方で7回のビデオ検証に持ち込まれたプレーについては、
「ビデオ検証は選手、チームにとって正しい方向に変えられるのかなと。間違ったジャッジのまま試合が進んでいくよりも正しいジャッジを選手に返すほうがいいと思う。」
と「正しい判定を選手に返すことができた。」とコメント。こちらは自身のジャッジが正しかったことを証明してみせた。
“誤審”は男性審判員にも見られる
「たとえば先のワールドカップやオリンピックといった国際大会、はたまたMLBなど男子競技における女性審判の進出が目立つ昨今。お隣の韓国プロリーグでも起用されていますが、NPBでは性別制限はないものの女性審判のなり手はいません。注目度が高い甲子園での登用は日本の野球界にとって大きな進歩と言えます」
アマチュアスポーツ事情に詳しいスポーツライターによると近年、高野連(日本高校野球連盟)はジェンダー平等の観点から、そして審判不足の解消のために女性審判員の育成を推進。2024年の全国講習会で初めて女性が参加した4名を含む、今大会に臨んでいる5名を選定した経緯がある。
いずれも甲子園に至るまでに各講習会、現場でジャッジをしてきた彼女たちは男性審判員には負けない審判歴と技術を持つと言えよう。
「今回、甲子園初の女性審判員ともあって、必要以上に“誤審”が目立って取り沙汰されていますが、正直なところ男性によるミスジャッジも少なくはありません。逆に女性でも、際どいプレーへの見事なジャッジも見受けられました。
もちろんアマチュア審判にとっても甲子園は夢の舞台であり、ましてや初の女性審判員とのプレッシャーと緊張があったのも確かでしょう。そして高校野球は教育の一環であることから“審判”は“審判委員”とも呼ばれ、彼らがあくまでもボランティアです。男女に関係なく時にミスもあるでしょうが、それぞれの代表校の監督や選手、応援席はまず敬意と感謝を払うべきでしょう」(前出・スポーツライター)
ネットでも女性審判委員の登用、そして“誤審”騒動にも様々な声が上がっている。
《性別ではなく、審判の技術が重要だと思います。》
《性別は関係ない 青春捧げて頑張ってきた球児たちに最高の試合をさせてあげられる人が審判してほしい》
《自分から誤審を認めてすぐに修正を依頼したことはとても審判として素晴らしいと思う。 これからも頑張って欲しい》
《性別で審判の力量を判断するのは違うよね。判定が正しかったなら、見るべきなのは「女性かどうか」じゃなくて「ナイスジャッジだったかどうか」だと思う。》
