阪神甲子園球場

 連日、熱戦が繰り広げられる夏の甲子園。その華やかな舞台裏で学校や保護者が直面しているのが、物価高や宿泊費の高騰による深刻な金銭的負担だ。高校教育の一環として、過度な商業主義を避けてきた高野連だが、甲子園のビジネス化を通じた資金還元を求める声も上がり始めている――。

甲子園には1000億円規模の潜在的な市場価値がある!

 国民的イベントとして注目を集める全国高等学校野球選手権大会。しかし、その裏側にある収益構造はあまり知られていない。

 公益財団法人である日本高等学校野球連盟(高野連)の決算資料によると、春夏を合わせた年間の経常収益は約16億1000万円であり、そのうち夏の大会が約9億円前後を占めている。最大の特徴は、その収益の約87%にあたる約14億円が入場料収入という極端なチケット依存型構造になっている点だ。ペナントやキーホルダーといった記念品販売などのロイヤリティ収入は約1億3000万円にとどまる。

 さらに際立つのが、テレビ放映権料の扱いである。全試合を地上波やBSで生放送しているNHKからの放映権料収入は0円で、民間放送局である朝日放送や毎日放送からの放映料も「協力金」という名目で年間6000万円ほどにとどまる。

高野連が放映権料を請求しないのは、高校野球を『教育の一環』と捉えているから。もっとも、国内のアマチュアスポーツ界全体で見れば、甲子園大会の集金力はケタ違いに高い。他の高校スポーツの頂点であるインターハイの場合、入場料収入はほぼ発生せず、事業収益も2億円に届くかどうか。甲子園大会は日本の学生スポーツとしてはモンスター級のコンテンツであると言えます」(スポーツライター)

 一方、他競技へ目を向ければ、全国高校選手権大会では、日本サッカー協会と共に日本テレビをはじめ民間放送43社が主催。多くの大企業が協賛している。高校サッカーの強豪校が揃うプリンスリーグではスポンサー企業のロゴが入ったユニフォームを着用するチームも多く、部活動のクラブチーム化が進行中だ。翻って、高校野球の場合、基本的には学校の補助や部費がベースとなる。

元ソフトバンク球団取締役でスポーツビジネスに詳しい小林至氏は、メディアや著書などで『甲子園には1000億円規模の潜在的な市場価値があり、事業化を進めれば現在の10倍以上の収益化が可能だ』と提言。視聴者数が同規模であるアメリカの大学スポーツNCAA男子バスケットボール選手権は、放映権料だけで年間1200億円以上を創出し、チケットも高値で取引されるビジネスモデルであることを指摘しつつ、甲子園のポテンシャルを活かして得た資金を現場へ還元し、学校や選手の負担を減らすべきだと主張しています」(同前)

2025年11月の「長嶋茂雄さんお別れの会」に参加した江川卓氏

 現在、野球界は深刻な競技人口の減少に直面しており、球界OBからも懸念の声が上がっている。

元巨人の江川卓氏はYouTubeチャンネルで高校球児の部員が大幅に減っているというニュースに言及。48都道府県を代表して甲子園を目指す高校球児が協議のベースになっていると語っています。そのうえで、『9人中5人は地元選手にするべき』という持論を展開。過度な選手集めや地域差を抑え、地元に根ざした環境づくりを模索すべきだという意見は、甲子園大会の魅力を引き上げるうえで重要な視点と言えます」(スポーツ紙記者)

「甲子園大会」というコンテンツを野球界の発展にどうつなげていくのか。次世代への責任論を踏まえて、「商業化」に対する議論を活発化させていく時期にきているのかもしれない。