毎熊克哉 撮影/矢島泰輔 取材・文/花村扶美 ヘアメイク/MARI スタイリスト/カワサキタカフミ

「よし、俳優をやろう!と決意したわけではなくて、1回ちょっと演技の勉強をしてみようかなぐらいの、ヌルっとしたノリが始まりだったんです(笑)」

「自然と親にしてくれた」現場

 そう話すのは、映画やドラマで圧倒的な存在感を放つ俳優・毎熊克哉。故郷の広島から上京し、映画監督になるため専門学校に通っていたが、3年目の終わりに「撮り方を知るために、一度お芝居を経験してみよう」と考えたのが役者の道を歩むきっかけだった。

 最新主演映画『見えない娘 THE INVISIBLES』は、そんな毎熊の演技力が光る作品。「末っ子の娘が透明人間」という物語を通し、大切な家族の絆を描く。本作は、7月に開催された「第30回プチョン国際ファンタスティック映画祭」で子どもたちが選ぶ賞を受賞した。

「一番うれしいですね。僕が初めて見た『ジュラシック・パーク』も子どもが主役の映画だったし、今作も子どもたちが主役だなと思って。親子連れのお客さんが大笑いしている姿を見てるだけで幸せな気持ちになりました」

 劇中では、姿の見えない透明人間の娘・ひかりを抱きしめて泣くシーンなど、CGを使わない生身の掛け合いも見どころ。

「形のない何かをどう届けるかっていうのが、自分的には大事だと思ったんです。一緒には映らないけど、ひかり役の鈴木凜子ちゃんがずっと現場にいてくれて、コミュニケーションを取っていたから、見る人も自然とキャラクターを感じてくれるのかなと思います。難しかったけど、楽しみながら撮影できました」

 娘役のキャスト陣と、本物の親子さながらの温かい空気を醸し出している。

「自分の感覚ですけど、家族ごっこをしていたんですよ。みんな、お芝居ってわかってるんだけど、気づいたらなんとなく家族だったなっていう。カメラが回っていないところで父親気分になる瞬間もありました。普通におんぶしたりとか(笑)。

 凜子ちゃんは撮影当時、小3ぐらいでしたけど、『ねぇ、お父さん』って普通に話しかけてくるし、次女役の矢山花ちゃんは『これ知ってる?』とか聞いてくるし、長女役の近藤華さんに関しては変な大人に出会っちゃダメだぞとか(笑)、そういう親心が芽生えたりして、自然と僕を親にしてくれたのかも」

休日の意外な素顔

 毎熊が演じる父親・星野学は非常に心配性なキャラクターだが、自分自身は「まあ、なんとかなるだろうというスタンス(笑)」だそう。劇中での変化をわかりやすく提示するのではなく、親としての成長のきっかけを少しつかんだくらいのイメージで演じたという。

『見えない娘 THE INVISIBLES』8月28日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開(C)THE INVISIBLES Production Committee配給:PARCO CHOCOLATE Inc.

 作品や役柄に対して真摯に向き合う毎熊だが、プライベートはどこかミステリアス。休日の過ごし方を尋ねると、意外な素顔を明かしてくれた。

「最近はドラムの練習をしてます。もともと音楽が好きで、ダンスは20代でやめたんですけど、音楽はずっと聴いていて。ドラムやベースのリズム隊が好きなんです」

 バンドを組む予定は「とりあえずはない」とのことだが、朝、目が覚めきっていない状態でドラムを叩くと、1時間ほどで頭が冴えてくるのが良いルーティンになっているそう。この“リズム”へのこだわりが、彼の演技の根底にもつながっている。

「リズムを外さない、そこしかないタイミングで音を出すのって、意外と生活やお芝居の中でもある気がして。ずっと今までオンでしかリズムを取ってなかったな、でも裏もあれば3連もあるなみたいな。いろんなリズムを身体に入れるトレーニングをしています(笑)」

 不器用な父親の成長と家族の絆を描く本作。常に新しい“リズム”を取り込みながら進化を続ける毎熊克哉という俳優の底知れない人間味が、見る者の心をじんわりと温めてくれるはずだ。

子どものころの夏の思い出は?

「宿題は『早くしなさい』と言われながら、漢字ドリルを適当に済ませて、頭を使う読書感想文はギリギリまで残してました(笑)。子どものころの夏休みの一番の楽しみは、車で家族と出かけることでしたね。

 父親が運転する車で家族4人と犬を連れて、長崎や奈良の両親の実家へ6時間以上かけて、みんなでワイワイ行くのが本当に楽しかったです」