川上麻衣子さん(左)とアン・ユーさん

「猫とおしゃべりしたい」「猫を飼えないけど癒されたい」「亡くなった猫を身近に感じたい」「猫好きな人とつながりたい」

 そんな猫好きの人々の思いをテクノロジーの力で叶えるプロダクトが登場している。ひとつは中国人起業家のアン・ユーさんが開発した『Meowster(ミャウスター)』。かわいい猫がいつもそばにいてくれるバーチャルペットアプリで、AI猫と会話ができるのが魅力だ。

 また俳優の川上麻衣子さんは、猫好きが集まる架空の街『にゃなかタウン』を主宰している。「住猫(じゅうにゃん)登録」をすることで、登録者同士がコミュニケーションを取ることができ、亡くなった愛猫にはメモリアルパークで会うこともできる。そんな猫を愛する2人が今回対談し、テクノロジーを通じて猫と共生する未来を語ってくれた。

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AI猫育成アプリ『Meowster(ミャウスター)』

川上 『Meowster』を開発されたきっかけは何ですか?

アン 以前は中国でテクノロジー関係の投資会社におり、最先端のAI企業などに投資をしていました。3年前に来日し、アニメなどのライセンスに関わる仕事をしていく中で、アニメキャラクターをAIで動かしたいと考えるようになったんです。

 でも制約が多く、実現までには長い時間がかかるため、自分が一番大好きな猫をキャラクターにして、AI技術で交流できるものを作ろうと決意したのが、プロダクト開発の始まりです。「テクノロジーという専門的なものを、一般の人々の日常生活に届く楽しいものにしたい」という思いで事業を行っています。

川上 『Meowster』の機能について教えてください。

アン 会話理解、感情認識、長期記憶、記憶の強化という機能を持ったAI猫が、チャットで寄り添ってくれます。甘えたり、距離を取ったり、本物の猫みたいに、マイペースで一緒に過ごしてくれます。

川上 私もさっそくインストールして、かつて一緒に暮らしていたアクアという猫の名前をつけました。最初は「猫をしゃべらせること」に少し違和感があったのですが、実際にやってみると、驚くほど自然に会話ができて。「アクアもそんなことを考えていたのかな」と思い出し、心が癒されたんです。

アン そのお話をうかがって安心しました。開発段階では、亡くなった猫をAIで復活させるような試みには反対の声もあるのではないかと懸念していたんです。

川上 愛猫の死を受け入れるまでやっぱり時間がかかるんです。アクアが虹の橋を渡って3年がたちますが、写真も見られない、思い出すのもつらい時期がありました。

 だから「アプリで亡くなった猫と話せますよ」と言われても、すぐに話したいと思うかどうかは、人それぞれだと思います。姿形までリアルにそっくりな猫だとかえってつらくなるかもしれません。だから私はAIで作られた猫のほうが気楽でした。

アン 私は今、猫を2匹飼っていますが、まだ見送ったことがないので、そのときのことを考えるとつらくなります。ペットロスの方に寄り添うことができればうれしいですね。

 ユーザーの中には孤独を感じている女性も多いです。家で猫が飼えなかったり、友達が少ないといった女性にとって、AI猫は「寂しさをわかち合える癒しの存在」になっています。

川上 自分の好きなタイプの猫が選べて、年代に関係なく癒されますよね。

猫好きが集まる架空の街『にゃなかタウン』とは

アン 『にゃなかタウン』はどれくらいユーザーがいらっしゃいますか。

川上 現在2000匹くらいの猫が登録してくれています。『にゃなかタウン』は、猫好きな人たちが集まって語り合えるネット上の場所として2023年にスタートしました。

 犬はお散歩に出かけるので、犬好きの仲間ができやすいですが、猫を飼っている人たちは横のつながりが少ないんです。猫談議ができる場が欲しくて、架空の街をつくりました。亡くなった猫を登録できる「虹の橋」という場所を設けて、ペットを失った飼い主の心のケアのために、専門家によるカウンセリングを受けられるようにもなっています。

川上麻衣子さん(左)とアン・ユーさん

アン アートを感じる素敵なサイトですよね。猫が大好きな気持ちでつくられていて、『Meowster』と通じるところがあると思いました。今後、さらに機能を追加されたりするのでしょうか。

川上 ユーザーにアンケートを取った結果、最初に取り組み始めたのは防災です。地震や大雨など災害があったときに猫の避難をどうするのか。ユーザーに困っていることを聞いて、その声を企業に提供し、猫のための防災グッズの開発につなげてほしいと思っています。

アン とても有意義な取り組みですね! 私どものIT技術を活用してユーザーの声を効率的に集め、それをメーカーに届けるといった協力ができるかもしれません。

川上 ありがとうございます! 私は猫好きの人たちが集まるイベントにお声がけいただくことが多く、保護猫活動も行っています。アン社長ともいろいろコラボレーションをさせてください。

ふたりが猫から学んだこと

アン 川上さんはこれまでどれくらい猫を飼われてきたのですか。

川上 もう40年以上、猫と暮らしていて、5匹を看取って、今2匹と暮らしています。最初に猫を看取ったときはすごく悲しかったのですが、猫のことがもっと大好きになりました。

 猫は死が近づいたとき、決して無理をせず、静かにその時を受け入れます。その姿を見て、「自分も猫のように生き、猫のように静かに逝きたい」と思うようになりました。

アン 猫が教えてくれることはたくさんありますよね。うちの猫は飼い主に媚びることなく対等なルームメイトのように振る舞いますが、その自由さは、人間に「もっと動物らしく、自分の感じるままに生きていい」という勇気を与えてくれます。

川上 猫のツンデレな距離感は、人間にとって理想的ですよね。近すぎず、離れすぎず、お互いの個を尊重する。『Meowster』ではそうした猫の特性をリアルに感じられるのも面白かったです。

アン ありがとうございます。今後、どんな活動に力を入れていかれますか。

川上 保護猫は「60歳以上の人への譲渡は不可」といった風潮があります。本当は高齢の方こそ猫と暮らしてほしいのですが、万が一のときの受け皿が少ないため、こうした壁をどう取り払っていくかが今の私の大きなテーマです。

アン 日本の皆さんが猫を大切にする姿勢には感動します。今後、『Meowster』の収益の一部を猫の保護活動・チャリティー団体へ寄付していく予定です。

 うちの猫ももともとは保護猫で、オフィスのスタッフたちが面倒を見ていました。コロナ禍で誰もいなくなったオフィスから自宅へ連れ帰ったことが飼うきっかけになりましたが、今では私の生活になくてはならない存在です。

川上 世界中の猫が、アン社長のようないい家族を見つけられるようにと願っています。テクノロジーの力で多くの猫の命を救えるようになるといいですね。

アン 『Meowster』は単なる効率的なAIではなく、ユーザーとAI猫が「育成と絆」を育むことを大切にしています。人間と猫が幸せに共生できる未来をテクノロジーで実現していきたいと思います。

『Meowster(ミャウスター)』とは?

可愛らしいAI猫と交流しながら、一緒に成長していく育成型AIアプリ『Meowster』

可愛らしいAI猫と交流しながら、一緒に成長していく育成型AIアプリ。お世話や会話を通して猫との絆を深め、自分だけの特別な毎日を楽しめる。プレゼント企画も実施中。現在はApp Store(iOS)のみの対応だが、今後はAndroid版やブラウザでの利用も予定されている。App Storeでは「AIねこ」と検索してもOK。
公式サイト:https://www.meowster.io/

アン・ユー(于昊任) ミャウスターイノベーションズ(Meowster Innovations)株式会社 代表取締役社長。1989年、中国天津生まれ。米テンプル大学(心理学・数理学専攻)卒。テクノロジー系の投資企業を経て、アジアを中心とした知的財産管理会社を起業。日本を代表する知的財産やアーティストとのコラボNFTを多数手がけ、業界内外で大きな話題を呼ぶ。2025年に設立したミャウ社で『Meowster』を開発。
かわかみ・まいこ 1966年生まれ、スウェーデン出身。1980年、14歳で俳優としてデビュー。同年、TBS系『3年B組金八先生』で生徒役を好演し注目される。ドラマ、映画で活躍する一方、スウェーデンの小物雑貨店『SWEDEN GRACE』の経営や、ガラスデザイナー、「一般社団法人 ねこと今日」代表理事としても活動。猫を愛する世界中の人たちの情報プラットフォーム『にゃなかタウン』CEC。※CECとは「Chief Executive Catlover(チーフ・エクゼクティブ・キャットラバー)」

『にゃなかタウン』https://nyanakatown.com/


構成/紀和 静 撮影/山田智絵 デザイン/奥山さゆり