浜木綿子

 こんにちは。浜木綿子でございます。暑い日が続きますが、夏バテしていませんか?

東宝の上層部に直談判!

 みなさん! 真夏に冷房がない舞台を考えられますか? それが、あったんですヨ。今の日比谷「シアタークリエ」、'05年までは「芸術座」だった劇場には、ステージ上に冷房がなかったのです。

 客席にはありましたヨ。私たちは重い衣装とカツラをつけて、お客様と“キャッチボール”をするのですから、汗ビッショリ。でも、演出家の菊田一夫先生がね、

「身体に汗をかくのはよろしい!! でも、顔には決してかいてはならない」

 って。エェーッ! 先生、そんなムチャな─と言いかけたとき、先生はチャッカリご自分の顔の汗を拭いてらっしゃるの。メガネまで外して。私、笑いを堪えましたが……。本当に可愛らしい先生でした。

 そこで私は衣装さんにお願いして、ガーゼで小さな汗拭きを作っていただきました。それをコッソリ帯下に忍ばせて、後ろを向いたときにパパッと鼻の下の汗を拭いていましたのヨ。気づかれた方、いらしたかしら?

 それでも耐えかねて扇風機を置いていただいても、生温い風しかこない……。もう、我慢の限界。東宝の上層部に直談判いたしました。若気の至りですね……。で、ナント、冷房がついたのです! 後日、赤木春恵さんから「涼しくなったわ、浜さんのおかげね」と、感謝されちゃいました。

 舞台は、まず、お稽古場で“基礎”をつくります。セリフは早めに入れて。共演者やスタッフと、タイミングや呼吸、気持ちをひとつに整えます。20日間ほどお稽古をして“初日”を迎えるのです。それからは、お客様との“間合いの闘い”になるのですが、演じている私は─。

 本当に申し訳ないのですが、一度も楽しいという気持ちにはなれませんでした。楽しんでいただくのは、あくまでもお客様に、ですから。でも、幕が下りた瞬間、あぁ! 無事に終わった─お客様の反応や笑顔を感じたとき、初めて喜びが生まれるのです。こうして70年以上、お客様に励まされながら私は歩き続けることができました。

舞台は“命”

「この役が楽しかったぁー」「撮影が楽しくて毎日が夢のよう」って思われる方がうらやましい。私は舞台で共演した左とん平さんからは、「浜ちゃん、ぶきっちょだねぇ」って言われてましたから(笑)。

 エッ!? 私から役者さんに伝えたいことですか? ありませんよ、そんな偉そうなことは。でも、しいて言わせていただくなら「驕り高ぶり精神は捨てなさい」「謙虚さや敬意を失わないで」と申し上げておきます。すみません、エラソーに。でも、子役チャンには厳しく言わせていただきました。お稽古で注意すると、すぐ泣き出す子がいました。

「こんなことで泣きたくなるなら、舞台はできませんよ。辞めますか?」

 かわいそうですが、そこまで言ってしまいます。私にとって舞台は“命”ですから。子役チャンは慣れてくると気持ちを置いてきてしまい、ただセリフをスルスル言うだけになるので、演出助手が注意をします。

 そういえば以前、子役チャンの中に小栗旬さんがいらっしゃいましたね。私の舞台『人生は、ガタゴト列車に乗って……』に出ておられました。今は大変な活躍ですね。ご一緒した方はたくさんで書ききれませんが、みなさんがビッグになられてうれしいかぎりです。

 芸は人なり─私も大切にしている言葉です。年を重ねた私も、最後まで人生を丁寧に歩んでまいります。みなさん、またネ。

はま・ゆうこ/1935年、東京都生まれ。宝塚音楽学校卒業。'62年に文化庁芸術祭奨励賞、'73年にゴールデン・アロー賞、'89年に菊田一夫演劇大賞、'95年に橋田賞などを受賞。2000年に紫綬褒章、'14年に旭日小綬章を受章