「暴れない太田光」が、思わぬ形で視聴者の心をつかんだ。NHK連続テレビ小説『風、薫る』に初出演した爆笑問題・太田光。長屋で暮らす酒好きの男を演じると、《想像以上にいい演技》と驚きの声が相次いだ。実は太田には、若い頃から抱き続けてきた“朝ドラへの夢”があり……。
称賛の声が相次いだ「抑えた演技」
お笑いコンビ・爆笑問題の太田光が、NHK連続テレビ小説『風、薫る』に初出演。8月19日に放送された第103回で、長屋に暮らす身寄りのない男・遠藤平蔵として登場した。
太田が演じる平蔵は、ケガをしているにもかかわらず酒を飲み、看護に訪れた大家直美(上坂樹里)にも「礼は言わないよ」とぶっきらぼうに接する男。しかし、直美から「貧しい人や弱った人にこそ手を差し伸べたい」と看護の理由を聞くと、自身も「体を壊して稼げないから貧乏だ」と語りながら、「弱い人間じゃねえと思ってるよ」と返す。
ひと癖ありながら、どこか哀しさを抱えた人物。そんな平蔵を演じる太田に、放送直後から、
《想像以上にいい演技》
《めっちゃハマってる》
《やさぐれ感が本物》
《渋くてかっこよかった》
など、SNSでは普段の太田からは想像しにくい「抑えた演技」に称賛の声が相次いだ。
太田といえば、バラエティー番組では共演者に鋭く切り込んだり、予測不能な発言で場をかき回したりする姿がおなじみだ。ところが、俳優として作品に入った太田は少し違う。
「太田さんというと、どうしても“しゃべって、暴れて、笑いを取る人”というイメージが強い。でも、今回の平蔵ではそれを前面に出していません。むしろセリフの間や表情で、人物の置かれている状況を見せている。そこが、視聴者に“太田光なのに”ではなく、“平蔵としていい”と思わせた理由ではないでしょうか」(芸能記者)
実は太田は、今回が演技初挑戦というわけではない。2024年には『それぞれの孤独のグルメ』第1話で、松重豊演じる井之頭五郎が訪れる町中華の大将役を担当。料理人役という、普段の太田とは異なる役柄に挑んだ。
さらに2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』では、蔦重が耕書堂に呼んできた評判の人相見・大当開運役で出演。こちらも太田の個性的な雰囲気を生かした役どころだった。
「『孤独のグルメ』では料理人、『べらぼう』では人相見、今回は長屋暮らしの男。どれも本人のイメージをそのまま演じる役ではありません。太田さんは芸人としてのキャラクターが強いだけに、役を演じるときに“太田光らしさ”をどこまで抑えられるかがポイントになる。その意味で、今回の平蔵はかなりうまくハマっています」(テレビ誌ライター、以下同)
プライベートで酒は飲まない
そして、今回ひそかに注目したいのが「酒」だ。平蔵は第103回でも酒を飲んでおり、医師から「しばらく酒は控えるように」と言われるほど。ところが、太田自身はプライベートで酒を飲まないことで知られている。
「普段まったく飲まない人が、朝ドラでは酒が手放せない男を演じているわけです。しかも、今回の視聴者の反応を見ると、そこに違和感を持たれたというより、“酒飲みの演技がうまい”と評価されている。これは太田さんが自分のキャラクターではなく、平蔵という人物を演じていたからこそでしょう」(前出・テレビ誌ライター、以下同)
実際、SNSには《飲めないのに酒飲みの演技がうまい》《あれは水だったのか!?》といった反応も見られた。
さらに興味深いのは、太田自身が今回の役について語ったコメントだ。朝ドラ初出演が決まった際には、
「若い頃『おしん』の泉ピン子さんを見て、いつか朝ドラに出たいと思い、その為に漫才師になりました。ようやく念願が叶って嬉しいです」
と喜びを明かしている。もちろん太田らしいユーモアも忘れていない。
「人間ドックに行く度に、採血が怖くて暴れ回り、看護師さんに迷惑をかけています」と続け、看護師を描く作品への出演に感謝を寄せた。
「太田さんは61歳になりましたが、今回の朝ドラ出演は、単なる“芸人の朝ドラ挑戦”とは少し違うと思います。本人が若いころから憧れていた舞台に、芸人として長いキャリアを積んだ末にたどり着いた。しかも、そこで見せたのが“いつもの太田光”ではなかった。そこに今回の面白さがあります」
念願の舞台で見せたのは、芸人としての派手なパフォーマンスではなく、酒も飲まない本人が酒浸りの男を演じる、静かな芝居。“暴れない太田光”という意外な一面が、朝ドラという舞台で新たな評価につながり始めている。
