空き巣のイメージ

トクリュウによる強盗事件など、空き巣・強盗の被害があとを絶たない。「犯罪の現場は、『入りやすく、見えにくい』場所で起こります」と警鐘を鳴らすのは、犯罪学者の小宮信夫さん。その具体的な、家や周囲の特徴と、侵入者を防ぐ対策を解説。

犯罪が発生する“場所”に注目

 近年、空き巣や強盗などの事件が多発している。中には金品を奪われるだけでなく、暴行を受けるケースもある。日本の安全神話は完全に崩壊したといえるだろう。

「怖いわね。でもどうしたらいいのかしら……」。強盗事件をニュースで見て、わが家の防犯対策に頭を悩ます人は少なくないはずだ。

「犯罪が発生する“場所”に注目してみてください」

 こうアドバイスするのは、犯罪学の第一人者で、立正大学教授の小宮信夫さん。

「日本では『人(犯人)』に注目し、犯罪が起きた原因を探ります。犯罪学でいう『犯罪原因論』を基本とするスタンスですが、いくら犯行動機を突き詰めたとしても、空き巣や強盗を防ぐことはできません。“犯人”は都度かわるからです。対して防犯対策が進む欧米では『場所(犯行現場)』に注目する、『犯罪機会論』を重要視します。

 犯行現場には、犯罪を誘発する機会や環境が潜んでいます。犯罪を起こす機会を与えなければ、犯罪は実行されないのです。それを頭において自宅のリスクを見直し、防犯対策を講じればいいのです」(小宮さん、以下同)

 小宮さんによると、犯罪が発生する場所には共通点があるという。

「『入りやすく、見えにくい』という点です。多くの犯罪は、『入りやすく、見えにくい』場所で行われています。玄関や勝手口、窓の位置などがこの条件に該当していれば、犯罪者に狙われやすい家ということになります。近年、多発している『トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)』による強盗事件現場も、大抵この条件を満たしています

 とはいえ、標的にされるのはお金持ちの資産家なはず。「うちは一般家庭だから関係ない」と考える人もいるだろう。しかし、それは大きな間違い。

「いわゆるピンポイント強盗は、精度が高い個人情報のリストを入手し、お金持ちの家だけに狙いを定めます。リストのおかげで失敗はなく、着実に金品を奪います。ただ、いま増えているのは、その手口をまねた素人の窃盗団です。SNSの闇バイトなどで集められた実行犯の彼らは、お金持ちのリストなど持っておらず、Googleストリートビューを使い『入りやすく、見えにくい』場所を下見。

 現地に行き、『この家はいけそう』と判断します。そして犯行に及ぶものの、情報の精度が低いため、盗む物がなく暴行だけ働くというケースもよくあります。つまり、どの家が狙われても不思議ではないのです」

 では、犯罪者が選定する「入りやすく、見えにくい」場所とは、具体的にどんな条件を指すのか。狙われやすい家の特徴を見ていこう。

『入りにくく、見えやすい』家にすることがポイント

例えば、台所などにある『勝手口』を思い浮かべてください。玄関と違って鍵が簡素だったり、場合によっては鍵自体かけていなかったりするはずです。これは誰でも『入りやすい』といえます。一方で勝手口はだいたい裏手にあるため、表通りから『見えにくい』場所でもあります

小宮信夫さん

 そのほか、

・家の門がない、または開きっぱなしなど
・窓ガラスが薄い、または窓が外から見えづらい位置にある
・家を囲む塀や生け垣などが高く、外から家が見えにくい
・周囲に家などがなく、ポツンと一軒家状態

 などが、「入りやすく、見えにくい」条件となる。

犯罪者に狙われる条件は、個々の家や住環境で変わってきます。自宅の玄関、裏口(勝手口)、窓などが、犯罪を誘発する『入りやすく、見えにくい』条件にあてはまっていないか、確認するようにしましょう

 いよいよ防犯対策。犯罪者に狙われない家にするにはどうしたらいいのか。その術を教えてもらおう。

「狙われる条件の反対、『入りにくく、見えやすい』家にすることがポイントになります。具体的な工夫として、鍵や窓ガラスを防犯性能の高いものに切り替える、敷地内にセンサーライトを設置する、庭や窓の下に防犯じゃりを敷くなどです

 お金をかけなくてもできる防犯対策もある。

勝手口へ続くルートに植木鉢などを置いて、入りづらくします。また、外からのぞける場所に花を置いたり、日中は洗濯物を干すなどして人の気配を感じ出せれば、“見えやすい家”という印象を与えられます。これらの対策は、犯罪者に心理的負担をもたらす効果が望めます

 そのほか、家の周囲を掃除してキレイに保ったり、庭の花木を常に整えたりすることも有効だ。

手入れの行き届いた家は、防犯対策にも力を注いでいると推測されるからです。また、整備された環境はそこに誰もいなくても人の気配が漂うため、犯罪者を遠ざけます

 いま述べた対策は戸建てをメインにしたものだが、セキュリティーが高いと思われがちなマンションも油断はできない。

マンションのオートロックを過信してはいけません。宅配業者を装って入り込んだり、住民の出入りに合わせてマンション内に侵入する『共連れ』という方法もあります。オートロックでも、各戸の玄関の鍵を常時かけるのは必須。宅配を依頼する際は時間指定にして、宅配者の行動を把握し、『共連れ』は住民同士で情報共有して、見知らぬ侵入者を防ぎましょう

 都会だから危険、田舎だから安心という地域差はもはやなし。犯罪者に場所は関係なく、ターゲットになりそうな家をネットでリサーチしている。また、一度強盗に遭った家が再び狙われるケースもあるという。

侵入者がイヤがる条件にする

防犯のあり方は時代に応じて変化しています。侵入者も、プロの空き巣から素人の集団までさまざま。ひと昔前の防犯対策は通用しなくなっています。犯罪機会のない家、地域づくりが大切です

 防犯の知識、対策を日々アップデートしていこう。

空き巣のイメージ

狙われやすい家の特徴

「入りやすい」

・勝手口がある
・門がない、または開いている
・侵入ルートに障害物が少ない
・窓ガラスが薄い など

「見えにくい」

・家を囲む塀や生け垣が高い
・周囲に家がない
・庭木や樹木が家を隠している
・坂道に家がある など

 犯罪が発生する現場は、「入りやすく、見えにくい」場所という共通点がある。この条件が重なるほど、犯罪者の犯行機会を誘発する。上記は2つの条件の具体例の一部。わが家の状況と照らし合わせて、危険度を確認してみよう

侵入者がイヤがる4つの条件

1・光 スポットライトが効果的

 人が近づいた瞬間に、スポットライトがあたる人感センサーを犯罪者は嫌う。暗闇(見えにくい)を瞬時に明るく(見えやすく)するからだ。逆に、玄関や勝手口などを一晩中ライトで照らすのはNG。犯罪者が手元、足元の確認をしやすくなり、侵入を助けることになる。

2・時間 5分以上の耐久防犯部品が◎

 鍵や錠を選ぶときは防犯性能の高い「CPマーク」付きのものを選ぶとよい。犯罪者の侵入行為を5分以上防御できた、「防犯建物部品」として保証されたもの。侵入に5分以上かかると大半の侵入犯が断念するという、警察庁の調査結果が根拠となっている。

3・音 大きな音で注目を集める

 「音」は人の注目を集めるため、防犯対策として効果的。手軽にできる対策は、庭や窓の下などに「防犯じゃり」を敷くこと。踏むと通常の砂石よりも大きな音が出る。

4・目 機械、人の目を利用する

監視の「目」は犯行の妨げになり、防犯効果が大きい。防犯カメラはその代表例。ただし、それなりの費用を伴う。家の目立つところに花を置く、洗濯物を干しておくなどすれば、人の気配を生み出して防犯対策につながる。

取材・文/百瀬康司

小宮信夫さん 立正大学教授。社会学博士。専門分野は犯罪学。日本人として初めて英国ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。本田技研工業、法務省、国連アジア極東犯罪防止研修所などを経て現職。全国各地で、生活安全の指導などを行っている。