岸惠子さん

 8月7日、俳優やエッセイストとして活躍した岸惠子さんが老衰のため亡くなった。93歳だった。

「岸さんは1951年に銀幕デビュー。1953年から1954年にかけて公開された3部作映画『君の名は』でヒロインを演じました。映画は、記録的な大ヒットに。劇中で彼女が頭から首にかけてストールを巻いたスタイルは役名から“真知子巻き”と呼ばれ、女性たちの間で大流行しました」(映画誌ライター)

 人気絶頂だった1957年にフランス人映画監督イヴ・シャンピ氏と結婚し、パリへ移住。

「当時は海外旅行が自由化されていなかった時代。それでも日本とフランスを行き来しながら女優業を続けました。1975年に夫と離婚してからも、一人娘を育てるために、2000年までフランスを生活の拠点としました」(ワイドショースタッフ、以下同)

 国境を越え、自ら人生を切り開いてきた岸さん。強い自立心の原点は、幼少期の体験にあったようだ。

「岸さんは12歳だった1945年に横浜大空襲を経験。大人から防空壕に入るよう促されるも、飛び出したことで九死に一生を得、“今日で子どもをやめよう”と決意したことを、後に自伝などで振り返っています。平和への関心は生涯消えることなく、後年、社会情勢が不安定な地域に赴いて取材し、本にまとめるなどのルポルタージュにも力を注ぎました」

 岸さんが生涯向き合い続けたテーマのひとつが、自分らしく生きることだった。

「自身の経験をもとに異国での生活、女性の自立などを綴ったエッセイを多数執筆しました。90歳を超えてからも、かつて親しい間柄だった鶴田浩二さんや萩原健一さんとの思い出を綴った本を出すなど晩年まで執筆意欲は衰えませんでした」

「そんなことありませんわ」

1953年から1954年にかけて公開された、岸惠子さんがヒロインを演じた3部作映画『君の名は』。3部作合計の観客動員数は約3000万人を記録(松竹公式サイトより)

 週刊女性は今から10年ほど前、一部で体調不良説が流れていた岸さんについて、事実確認を兼ねて取材を試みたことが。当時、岸さんが住んでいた自宅のチャイムを押すと、本人が対応。率直に体調不良について尋ねたところ、

「そんなことありませんわ」

 と、一笑してみせた。その際、手土産のスイーツを渡そうとすると、

「甘いものは控えています」

 とピシャリ。ただ取材には終始、丁寧に応じてくれた。

「プライベートのお姿をお見かけしたこともありますが、お年を召しているのにハイヒールを颯爽と履きこなしていて、まさに“気品そのもののような”方でした。あれほどの雰囲気を持った女優さんは、もう現れないのでは」(映像業界関係者)

 全身で体現した強く気高い生きざまと、その名は永遠に語り継がれていくのだろうーー。