愛子さま

 秋の気配が微かに漂う9月のある朝。白の大型車が東京の日本赤十字社の本社へと入っていった。

「'24年3月に学習院大学を卒業されて以降、愛子さまは日本赤十字社の青年ボランティア課で勤務されています。熊本県の地震など、相次ぐ自然災害への対応で、多忙を極められており、この日も朝の8時55分に出勤された後、午後8時を回っても本社に残っていらっしゃいました」(日赤関係者)

オランダとベルギーには愛子さまと同世代の王女が

 8月は三重県・大阪府・滋賀県の3つの府県をご訪問。日々、日赤の仕事と成年皇族としての公務という2つの仕事を立派にこなされている。そんな愛子さまと重なるように、世界でも、同世代の女性王族が活躍されているーー。

今年6月、両陛下が訪問されたオランダにはアマリア王女が、ベルギーにはエリザベート王女という愛子さまと同世代の王女がいます。しかし、愛子さまと異なる点は、おふたりは将来、王の位に就く身なのです」(皇室担当記者、以下同)

 さらに、8月28日、ノルウェーの国王ハーラル5世の崩御により、女性が王位を継ぐ傾向がより顕著になった。

「ノルウェーは'90年の憲法改正により、男子優先の継承から、絶対的長子相続制へ移行しています。国王の崩御で継承権第1位は現国王のホーコン8世の長女アレクサンドラ王女に渡ることとなりました。これで、次期国王が女性の国はスウェーデン、オランダ、ベルギー、スペイン、そしてノルウェーの5つとなりました」

 そんな中、時代の変化を新たに捉えた国があった。

『男女平等』『安定的継承』から『男系男子』継承を変更

「欧州で唯一『男系男子』の継承を守っていたのは、立憲君主制国家のリヒテンシュタインです。ところが、アロイス皇太子が8月15日の建国記念日に、国家元首を務める公

両陛下をカーテシーで迎えるベルギーのエリザベート王女(写真/共同通信)

爵位の継承順位を長子優先に変更することを発表。今後生まれてくる子どもから適用されるといいます」(全国紙社会部記者、以下同)

 これで、欧州ではすべての立憲君主制国家で女性に継承権が認められたことに。

リヒテンシュタインは、これまで日本で長年行われてきた皇室典範改正の議論において、日本と同じ『男系男子』継承の代表として挙げられてきました。日本と同様の制度をとる国がまた一つ消えたことは、日本の制度を振り返る際に重要なポイントとなるはずです

 欧州の王室に詳しい駒澤大学の君塚直隆教授は、リヒテンシュタインの法改正についてこう解説する。

「リヒテンシュタインは神聖ローマ帝国の最後の生き残りともいえる国で、最後まで男系男子限定継承を定めるサリカ法を維持し続けてきた国でもあります。その国でさえも、女性に継承権を与える法改正を行いました。男系男子限定継承という古い制度の『最後の砦』が崩れたといえます」

 アロイス皇太子は「今回の法改正により、リヒテンシュタイン公国と公爵家は、この責任に対して最も準備ができている人物によって率いられるようにしたい」とも発言した。

『男女平等』『安定的継承』どちらも改正の理由とは思いますが、前提が日本とまったく異なります。というのも、継承者の人数も多く、圧倒的に『余裕』がある国なのです。にもかかわらず、合理的な法改正へと踏み切ったわけです」(君塚教授)

国連が強く介入すべき種類のものではない

 世界の“女性への継承”という潮流を長年研究されてきた君塚教授。皇室典範改正から約1か月半がたつ現在、どう見えているのか。

私の意見は、女性に継承権を与える。これは'21年の『皇位継承の在り方を検討する有識者会議』以降変わっていません。やはり世界の潮流として女性でも皇位を継承できるように制度を改正し、その第一歩は、愛子さましかいないと思います。今回の皇室典範改正について私は『始まりの終わり』と表現しますが、皇室典範改正の実現自体は大きいことといえます。改正の議論を通して国民の皇室への理解も深まったように思うので、今後の改正への始まりと捉えることもできます

 また、女性の皇位継承に関しては、国連から厳しい視線が注がれている。

国連の女性差別撤廃委員会のバンダナ・ラナ氏は皇位継承を男系男子に限る皇室典範について“女性を従属的な立場に置き、家父長的規範に基づいている”と批判しました。
'24年には、同委員会が皇室典範の継承規定は“女性差別撤廃条約の目的や趣旨と相いれない”として改正を勧告していたこともあり、ラナ氏は日本が対応するまで勧告を継続する旨を表明しています」(前出・全国紙社会部記者)

ノルウエーのハーラル5世の棺が王宮礼拝堂へと移される様子。右はアレクサンドラ王女(写真/共同通信)

 しかし、君塚教授は国連の皇室に対する介入には苦言を呈する。

王位や皇位の継承方法というのは極めて繊細な国内の歴史と伝統に関わる事柄であり、国連が強く介入すべき種類のものではないと思います。重要なのは、外圧によって変えることではなく、日本国民自身がヨーロッパなどの王室を見て、自発的に“自分たちの力で皇室をよりよい形に変えていくべきだ”と気づくことです。その参考になるのは、他国の素晴らしい例でしょう。例えばハーラル国王が崩御された際、国民が自発的に花を手向け、国全体が悼むムードに包まれたことは、国王が国民に深く愛されていた証明です。そのような存在を自然と望むようになることが本筋といえるのではないでしょうか」

 今年6月の記者会見で、陛下は「皇室のあり方や活動の基本は国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にすること」と述べられた。国民にとっての皇室とは、どのような存在なのかーー。

君塚直隆 駒澤大学法学部教授。イギリス政治外交史などを専門とし、著書は『エリザベス女王 増補版 史上最長・最強のイギリス君主』(中央公論新社)ほか多数