話題沸騰! 『VIVANT』が絶賛放送中! 眠い目をこすってワールドカップ、見ましたか? 映画の『国宝』は? ブームや流行についていけない、ってことありませんか? 人それぞれに趣味嗜好が変わるのは当然とはいえ、なかなか言い出しにくい「見ていない話題のアレ」について聞いてみました!
『VIVANT』はモンゴルの景色しか印象に残らず
'23年に放送され、大きな話題を集めたドラマ『VIVANT』(TBS系)。今夏は、同作の続編がスタートし、再び大きな盛り上がりを見せている。こうした“ブーム”の裏で「大きな声では言えないけれど、実は見ていない……」という本音を隠している人も少なくないはず。
そこで今回は「実は見てない・興味がない“社会現象”」に関するアンケートを実施。日々、さまざまなコンテンツに触れているコラムニストの辛酸なめ子さんと、平成生まれで言葉を吟味することが生業であるラッパーのEeveeさんをコメンテーターに迎え、ブームとの距離感を探る。
“社会現象”になりやすいのが、ドラマや映画などのコンテンツ。冒頭でも紹介した『VIVANT』は、海外ロケや豪華俳優陣の競演、複雑なストーリー……エンタメ要素の“全部乗せ”が奏功したドラマだ。
しかしアンケートでは、
「毎週末SNSで『伏線回収』とか『裏切り者』とか大騒ぎしていたが、考察しながら見るのが面倒で脱落。ドラマくらい何も考えずに見させてほしい」(愛知県・58歳・男性)
などの声も。近年の考察ブームに対する“疲れ”を思わせるコメントが寄せられた。辛酸さんは壮大なスケールに興味を抱き、シーズン1を完走したそう。
「ただ、3年もたつと“モンゴルの自然がすごかったな”という記憶しか残っていないんですよね。1を見返すほどの熱量もないので、続編は最初のほうしか見ていません」(辛酸さん)
考察ドラマの続編は、前作の視聴者をいかに離さないかが重要そうだ。池井戸潤原作のドラマ『半沢直樹』シリーズ(TBS系)は、化け物級の高視聴率ドラマとして社会現象となった。
特に'20年版は配信サービスが定着した時代に32.7%の驚異的な視聴率を記録したが、未視聴層からは、
「『倍返しだ!』のフレーズや顔芸のネタはニュースやバラエティーで散々見たけれど、本編は一度も見ていない。わざわざおじさん同士の怒号や社内政治のドロドロを見たくなかった」(神奈川県・52歳・女性)との声もあり、話題になりすぎた結果、本編までたどり着かない人も。また「もともと池井戸潤の小説が好きで読んでいたため、そのイメージを壊したくなかった」(埼玉県・62歳・男性)
という、複雑なファン心理が視聴を遠ざけるケースも。ドラマ化の悩ましいところだ。
最終回終了後の喪失感を表す“あまロス”が話題になった『あまちゃん』(NHK)も、
「朝ドラを見る習慣がない。今後、別の朝ドラが人気になっても見ないと思う」(神奈川県・56歳・女性)
「話題になっていたが、毎日15分ずつ見る努力ができなかった」(神奈川県・84歳・女性)
などの声が寄せられた。
『国宝』は「約3時間の作品と聞いて諦めた」人も
作品への興味以前に、毎朝決まった時間に見るという朝ドラ特有のスタイルがハードルにもなりうるのだ。そのほか、
「『3年B組金八先生』シリーズは、裏番組の『太陽にほえろ!』を見ていたため見ていない」(東京都・62歳・男性)
「『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)は気になっていたが、第1話を見逃して、そのまま最後まで見なかった」(山口県・72歳・男性)
などの声も目立った。今のように見逃し配信が普及する前は、やむを得ず見られなかった作品も多かったことがうかがえる。
「映画館で見たかったが、約3時間の作品と聞いて諦めた」(兵庫県・55歳・男性)
「3時間の作品を映画館で見るには体調的に不安があり、断念」(愛知県・67歳・男性)
などの声が多数。こちらも“やむを得ない理由”で見ていない人が多そうだ。
人気作ゆえのシリーズ化が、リタイアにつながるケースもある。'01年に1作目が公開され、10年かけて全8作が製作された『ハリー・ポッター』シリーズ。魔法学校を舞台に主人公のハリー・ポッターの成長を描いた同作をリタイアした人からは、
「3作目までは覚えているが、だんだんワケがわからなくなってきて、興味がなくなった」(兵庫県・66歳・女性)
「初期の作品は映画館で見たが、主人公が大人になるにつれて、面白くなくなってしまった」(大阪府・69歳・男性)
などの意見がチラホラ。ハリー・ポッターを全作見ているというEeveeさんも「リタイアする気持ちはわかります」と話す。
「コメントにもあるとおり、作品を追うごとにストーリーが重く、過去作との絡みも謎を解くカギになるなど、ハードさが増していった印象です。正直、見ていた私も混乱しました」(Eeveeさん)
シリーズ作品の中には、熱烈なファンの存在が視聴のハードルを上げてしまったものもある。
『鬼滅の刃』は「戦いのシーンがグロすぎる」
アニメ放送開始から30年を迎え、今年4月に公開された29作目の映画も大ヒットした『名探偵コナン』も、そのひとつ。
「アニメだから仕方ないかもしれないけれど、荒唐無稽すぎる。ファンの人が『見てて当然!』というテンションで話してくるのもイヤ」(神奈川県・43歳・女性)
「妻が『コナン』のファン。自分があやふやな記憶で間違ったことを言うと怒られるので話題に出さないようにしている」(東京都・30歳・男性)
など、コアなファンの世界に“踏み込みづらさ”を感じている人もいるようだ。
社会現象になったアニメといえば、記憶に新しいのが『鬼滅の刃』だ。原作漫画は全世界累計発行部数2億部('25年7月時点)を突破し、劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』の興行収入は日本国内で407億円に達した。
主人公・竈門炭治郎が身につけている市松模様のグッズが街にあふれ、“鬼滅旋風”を巻き起こしたが……。
「話題になっていたけど、内容や戦いのシーンがグロすぎる。3人の息子がいるが、誰もハマらなかった」(東京都・48歳・女性)
など、内容の過激さから敬遠した人や、
「CMやショート動画がそこらじゅうで垂れ流されて、どうも見に行く気がしなかった」(東京都・64歳・男性)
など、ブームが仇となり、食傷ぎみになった人も。
「私も、話題になり始めたころは『残酷そう』という理由で見ていませんでした。でも、友人に誘われて『無限列車編』を見たときは映像の素晴らしさに衝撃を受けたんです。その後は原作も買って、内容の面白さにさらにハマり、グッズも買う……典型的な“鬼滅キッズ”になりました」(Eeveeさん)
そんな経験から、彼女は“ヒット作”に対する見方が変わったという。
「流行っているからあえて見ない、と斜に構えている人もいるかもしれません。でも、実際に作品に触れてみると、ヒットした理由は必ず見えてきます。食わず嫌いをしたまま、作品と出会う可能性を狭めてしまうのは、とてももったいないですよね」(Eeveeさん)
社会現象が起きるのはドラマや映画だけではない。世界的なスポーツイベントの熱狂も、興味のない人にとっては“苦行”になりうる。
平和の祭典「オリンピック(夏季・冬季)」には、
「競技がたくさんありすぎて、とてもじゃないがすべてを見ることは叶わなかった」(兵庫県・71歳・男性)
との声もあり、競技の多さに萎えてしまった人も。一方で、
「スポーツに興味がないので競技は見ないが、開会式と入場行進だけは見る。国によっては民族衣装などが見られるのは楽しい」(兵庫県・45歳・女性)
という独自の楽しみ方を見いだす人も。
「開会式・閉会式は、国のカラーが見えて面白いですよね。でも、コロナ禍に開催した東京オリンピックの開会式は、日本の“お金のなさ”がにじみ出ていて物寂しさがありました……」(辛酸さん)
先日幕を閉じた「FIFAワールドカップ2026」にも、“熱狂”とは距離を置くコメントが寄せられた。
「野球を見るためだけに有料会員になりたくない」
「深夜や早朝の放映が多く、健康のために寝てしまった。翌朝のニュースのハイライトで十分だし、普段サッカーを見ないのに、急ににわかファンになるのも気が引けた」(東京都・49歳・女性)
「自分が興味ないだけで、ほかの人が盛り上がるのをバカバカしいとは思わないし、選手たちに対しては『頑張ってるなー』とは思う。でも、自分にとってはまったく関心がわかない世界」(大阪府・51歳・女性)
など、世間の盛り上がりとは対照的に、温度が低めな意見も。
そこには“にわかファンにはなりたくない”という本音も漂う。今年はW杯だけでなく、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)も開催され、スポーツの当たり年でもある。しかし……。
「Netflixに入っておらず、野球を見るためだけに有料会員になりたくない」(東京都・80歳・女性)
「Netflixだけでしか見られず、商業的興行に成り下がってしまったので見ていない」(愛知県・48歳・女性)
など、今回のWBCが日本国内でNetflixによる独占配信となったことへの不満が挙がった。たとえ興味があっても、視聴方法が限定されると心が離れるきっかけになるようだ。
こうしたスポーツイベントの盛り上がり方には“世代間ギャップ”があるのでは、と辛酸さんは分析する。
「娯楽がたくさんある現代では、基本的に自分が興味のあるコンテンツを選びます。しかし、子どもの好きなものが『巨人・大鵬・卵焼き』といわれた時代には、多くの人が同じものに夢中になり、それが話題の中心でした。
そうした時代を経験した世代の方は、サッカーのルールがわからなくても、夜ふかしをしたり早起きをしたりして試合を見る人もいますよね。かつてのように“みんなで盛り上がる感覚”を楽しむ気持ちが、今も残っているのかもしれませんね」(辛酸さん)
W杯だけサッカーに熱中するあの人も、みんなで応援する感覚を懐かしんでいるのかも?
見ない理由も、興味を持てない理由も人それぞれ。今回のアンケートは、さまざまな思いや事情が交錯した。辛酸さんは「無理にブームに乗らなくても大丈夫」と話す。
「私も、話題についていくために流行のコンテンツはチェックします。ただ、インド映画の『RRR』を見たときは、すでにブームが去っていたし、今年は『プラダを着た悪魔2』を急いで見たのに周りの人は意外と見ていなかったり、と社会現象のど真ん中にいた経験のほうが少ないんですよね。昨今はブームのサイクルはどんどん短くなっているので、乗り遅れたら、次のブームを待ちましょう」(辛酸さん)
意外と見られていない人気ドラマやお笑い賞レース
移り変わりの激しい時代。時には待つ姿勢でいるくらいが、ちょうどいいのかもしれない。
40歳以上の大人男女500人に聞いた! 実は見てない話題作あれこれ
『愛の不時着』(Netflix・2020年)
「韓流ドラマは1回の話の時間が長いので見なくなった」(新潟県・59歳・男性)
『HERO』(フジテレビ系・2001年ほか)
「キムタクが絶対悪役でないのがわかっているから」(山口県・48歳・女性)
『タイタニック』(映画・1997年)
「当時は映画館の立ち見が出るほど大混雑していたので諦め、そのまま四半世紀以上が過ぎてしまった」(群馬県・75歳・男性)
『となりのトトロ』(アニメ映画・1988年)
「ジブリアニメの絵柄が好きではない。それを言ってはいけないような、世間の同調圧力がイヤ」(東京都・63歳・女性)
『君の名は。』(アニメ映画・2016年)
「『映像が美しいアニメ』と言われてもピンとこない。若者のキラキラした恋愛ものなら実写で十分では?と思ってしまう」(愛知県・57歳・女性)
『アナと雪の女王』(アニメ映画・2013年ほか)
「結局歌だけしか聴いてない」(京都府・50歳・女性)
『M-1グランプリ』(ABCテレビ/テレビ朝日系・2001年〜)
「お笑いは好きだが、審査員が点数をつけたり芸人たちが人生をかけて緊張している殺伐とした雰囲気が苦手。ただゲラゲラ笑って見たい」(北海道・50歳・女性)
※インターネットアンケートサイト「Freeasy」にて7月下旬、全国の40歳以上の男女500人を対象に選択方式で実施
取材・文/とみたまゆり
辛酸なめ子さん 1974年、東京都生まれ。漫画家、イラストレーター、コラムニストとして活躍。核心を突くコメントに定評がある。近著『世界はハラスメントでできている』(光文社新書)など著書多数。
Eeveeさん 1997年、千葉県生まれ。ラッパー。小学5年生で大手芸能プロダクションに研修生として所属、中学2年生でデビューを果たし国内のフェスや海外のイベントにも出演。19歳でラップの世界へ。'23年にHIPHOPラップのフリースタイルバトルに参加し話題に。
