佳境に入ってきたNHK連続テレビ小説『風、薫る』。こちらの結末も楽しみだが、宇野千代さんがモデルの次作『ブラッサム』や来春スタートの『巡るスワン』への期待も高まっている。
『巡るスワン』は『ホットスポット』などで人気のバカリズムが脚本。先日はバラエティー番組で「とんでもないものに手を出した」と執筆の苦労を語った。確かに、民放でヒットを飛ばした脚本家でも、朝ドラという半年間の長丁場は厳しかったと視聴者に思われてしまうケースも時にはあり、難易度は相当高そう。
そこで、30代〜60代の朝ドラ視聴者500人に、'10年代以降の朝ドラに向いていなかったと思う脚本家をアンケート。手厳しい意見から見えてきた法則とは!?
流行語大賞にノミネートされるほど話題に
5位は17票で『マッサン』('14年後期)、『ちむどんどん』('22年前期)の羽原大介氏。『黒革の手帖』『白い巨塔』、映画『フラガール』など人気作多数だが、「『マッサン』はよかったが、『ちむどんどん』は支離滅裂に感じられた」(千葉県・60歳・男性)と、『ちむどんどん』への不満が目立つ結果に。「ストーリーが意味不明で登場人物も好きになれなかった」(愛媛県・59歳・男性)などの声に、「“ちむどんどん反省会”が流行語大賞にノミネートされたくらい、話題になりましたね」と振り返るのは、漫画家&テレビウォッチャーのカトリーヌあやこさん。
「前代未聞の略奪婚をするヒロインや、次から次へと借金をする兄とそれをかばう母など、イライラするところが多かったですね。ヒロインがよく“まさかやー”と言ってましたが、展開そのものが“まさかやー”(笑)」(カトリーヌさん、以下同)
4位は'25年後期の『ばけばけ』を書いたふじきみつ彦氏で20票。小泉八雲の妻がモデルの物語だ。「最初、暗かったので没入できなかった」(愛知県・61歳・男性)、「盛り上がりに欠けた」(東京都・61歳・男性)などの声に、
「私自身は大好きなんですが、こういう意見もわかる異色の作品でした。
ふじきさんは他の作品も『バイプレーヤーズ』や『きょうの猫村さん』など脱力系で、今作でもたわいもない日常の素晴らしさを描いていた。それに乗れないと、視聴習慣がつかなかったのかな。でも最終回のオチも素晴らしく、噛めば噛むほど良さがわかる作品でした。また朝ドラを書かれたら、ぜひ見たいです」
恋愛ドラマの神様という異名をとる
3位は22票で『半分、青い。』('18年前期)の北川悦吏子氏。『ロングバケーション』『ビューティフルライフ』『オレンジデイズ』など数々の大ヒット作を手がけたが、本作は「キャラクターに感情移入できない」(愛知県・52歳・女性)、「民放向きだった」(大分県・63歳・男性)、「展開がひどかったなあと思う」(北海道・43歳・女性)と低評価に。
「恋愛ドラマの神様といわれるほどの方ですが、朝ドラは尺の難しさがあるのかな。民放の1時間ものと違って、15分だと盛り上がる前に1日分が終わってしまったり、ヒロインのエキセントリックさが悪目立ちしてしまったり。三谷幸喜さんが以前、尺の短さや放送期間の長さなどから、朝ドラを書くのは絶対ムリとおっしゃってましたが、本当に難しいんだろうなと思います」
朝ドラは民放1時間ドラマの約4クール、大河ドラマ1作とほぼ同じ分量。
「戦国武将と同じくらい、いろんなことが起きなきゃいけない計算(笑)。本作のヒロインは夢が迷走していましたが、1クールずつ分けて見ていたら、そこまで違和感はなかったのかも」
73票で2位に入ったのは『純と愛』('12年後期)の遊川和彦氏。「朝は爽やかでわかりやすいものがいいが、これは真逆。好きな脚本家だが朝ドラには向かない」(富山県・59歳・女性)、「朝ドラとしては重い内容。遊川氏の脚本は夜のほうが合う」(愛知県・61歳・男性)と、ベテラン人気作家ゆえか、厳しい意見が。カトリーヌさんも「遊川さんのへそ曲がり感が出てましたね(笑)」と語る。
「朝ドラはヒロインが夢をかなえていく過程を見る、という王道を全部ひっくり返した作品。あり得ない不幸が連続する、強烈な展開でした」
祖父のホテルを再生させたいと修業のために就職した先が買収されクビに。次に勤めたホテルは火事に遭い、地元に戻り別荘を修繕して開業しようとするも台風で甚大な被害。脳腫瘍で倒れた夫は意識が戻らないまま終わる。
「こんな朝ドラあるのか!?と思いました(笑)。遊川さんは『家政婦のミタ』や『女王の教室』など社会派の方で、やっぱり夜10時が合うのかな。ある意味、朝ドラ史上に残る作品だと思います」
原作ありの脚本は評判が良いが……
そして1位は98票で『おむすび』('24年後期)の根本ノンジ氏。「食なのかギャルなのか震災なのか、よくわからなかった」(北海道・66歳・男性)、「感動がなく、震災との結び方が“おむすび”とはいかなかった」(宮城県・62歳・男性)などの声が。カトリーヌさんも「やはりひと言でいうと、震災とギャルの組み合わせが悪かったのでは」と。
「あと、前代未聞のヒロイン2週間不在も驚きでした。橋本環奈さんのスケジュールの都合で事前にわかっていたことだから、NHK的にももう少し回避のしようがあったのでは……」
そのスケジュール問題もあってか、阪神・淡路大震災で食べたおむすびのおいしさが大きなモチーフにもかかわらず、東日本大震災では管理栄養士の受験勉強で現地に行かなかったヒロイン。
「今度は自分が行っておむすびを配れば、きれいな流れだったと思うんですが。後のコロナ禍も含め、ヒロインがあまり関わっていかないので、芯を食わないストーリーになってしまったのかなと」
また「原作を脚本にする力は素晴らしいが、オリジナルは難しいのか」(東京都・56歳・男性)という意見も。
「根本さんは『監察医 朝顔』『サ道』『正直不動産』など、原作ありの脚本が本当にいいんです。脚色力が抜群なので、モデルありでぜひまた朝ドラを書いてほしいですね」
トップ5中、4作がオリジナルで舞台が現代。カトリーヌさんはそこに注目する。
「羽原さんも、ニッカウヰスキー創業者夫婦がモデルの『マッサン』は評価が高い。モデルがいると、成功に向かっていくことがわかるので安心感があるんです。一方オリジナルは、どこに連れていかれるんだろうという不安感が生まれやすい。また歴代朝ドラは太平洋戦争で主人公の人生が激変する作品が多いですが、現代ものでヒロインの困難を描くと夢が迷走しがちになるんですよね」
そのジンクスを破れるか、期待したいのがバカリズム。
「『巡るスワン』もオリジナルの現代ものですが、『あまちゃん』や『ひよっこ』のように成功例もありますし。バカリズムさんがどんな物語を描いてくれるか、ものすごく楽しみです」
注目度が高いだけに厳しい目を向けられがちな朝ドラだが、65年間も私たちを楽しませてくれているのは偉大のひと言。迷走やトンデモ展開も、意外と日々のスパイスになっているのかも!?
取材・文/今井ひとみ
