腎臓を自力でよみがえらせる(写真はイメージです)

 20代で右の腎臓の機能をほぼ失ってしまった、鍼灸師の大野沙織さん。絶望的な状況から東洋医学と出合い、現在も腎機能値を正常にキープ。自身の体験から生み出した「腎臓を自力でよみがえらせる」方法を紹介。

東洋医学の「腎」はエネルギーの貯蔵庫

「20代前半で腎盂腎炎を患い、現在、私の腎臓は片方しか機能していません。でも、東洋医学と出合って食事や生活の工夫をするようになり、腎機能値は問題のない状態をキープすることができています」

 そう話すのは「心合いの風鍼灸院」を主宰する鍼灸師の大野沙織さん。大野さんは病気を機に腎臓に関する勉強を重ね、その過程で東洋医学と出合ったという。

「西洋医学では、腎臓の働きには老廃物のろ過、水分・ミネラルバランスの調整、血圧のコントロール、血液や骨をつくるホルモンの分泌などがあるとされています。対して、東洋医学における『腎』は生命のエネルギーの源であり、人間が生まれ、成長し、老いていくサイクルをすべてコントロールする、広義な身体の機能として捉えられています」(大野さん、以下同)

「腎」が担っている具体的な役割とは?

「腎には生命力の源である『精』が蓄えられています。『精』には親から受け継いだ生まれ持ったエネルギーである『先天の精』と、食べ物から得たエネルギーである『後天の精』の2つがあると考えられています。これらを合わせた『腎精』が充実していると若々しく、消耗して枯れてくると老化が進んでいきます。例えば、不摂生をしていても長生きをする人がいますが、そうした人は先天の精が多いと考えられます」

 そう聞くと、先天の精が少ない人は健康面で不利に思える。

「先天の精は自分の力で増やすことはできないので、後天の精である食事でカバーすることが大切です。つまり、生まれつき腎が弱い人でも、生活習慣を含む食事によってカバーできるということです。腎を大事にすることで、年齢を重ねても若々しく、健康に長生きできるのです」

「腎」が弱るとさまざまな不調を招く

 腎臓は「沈黙の臓器」といわれており、不調がわかりにくい。東洋医学の「腎」が弱るとどのような症状が起きるのだろうか。

「腎には全身の水分代謝を調節する働きがあるため、機能が低下すると体内に水がたまってむくみや冷えが起こりやすくなります。また、尿の異常も生じやすく、頻尿・夜間頻尿が起きることもあります」

 腎は身体のさまざまな部分に関係している。

「腎の状態は髪や歯にも反映すると考えられており、腎が弱ると髪は細くなり、白髪や抜け毛が増えます。また、骨がもろくなり、歯がぐらついて最終的には抜け落ちてしまうことも。耳にも関係し、耳鳴りがする、聞こえが悪くなる、めまいがするといった症状も生じたりします」

 年齢のせいにしてしまいがちなことにも、腎が関わっているようだ。

「腎は脳にも関係し、腎が弱れば物忘れが増える可能性があります。また、気力が湧かなくなって落ち込みやすくなり、根気が続かなくなったりもします。『なんだか体力が落ちた』、『最近、やる気が出ない』などといったことも、『生命エネルギーが減ってきていますよ』という腎からのサインかもしれません」

 腎をできるだけ健やかに保つには、どのようにすればいいのだろうか。

「後天の精である食事によって、精を充実させることが大切です。ただし、日本の湿気や土地の影響から、日本人は胃腸が弱い傾向があります。腎の働きを高めるためには、まず胃腸の消化吸収能力を改善する必要があります。そのためにおすすめしたいのが、『解毒スープ』です」

 解毒スープによって得られる効果とは?

「温かいスープは消化器全般の働きをつかさどる『脾』を温めます。解毒スープは野菜を細かく刻んで煮込むので、胃腸の弱い人でも無理なくたくさんの野菜が食べられます。脾が元気になれば消化吸収能力が高まり、スープにたくさん含まれている野菜の抗酸化パワーを、腎臓はもちろん全身に届けることができます。

 解毒スープを飲み続けると、効率的に栄養を吸収することができるようになり、身体が温まって血の巡りもよくなります。その結果、老廃物を排出する解毒の力も高まり、腎臓もしだいに元気になっていくのです」

 解毒スープを飲むことで、さらに次のような変化も期待できるという。

「早い人では、スープを飲んだ翌日には大量の便が出るなど、胃腸の調子が良くなったことを実感できると思います。ほかにも、むくみがとれたり、肌や髪にツヤがよみがえったり、花粉症や生理痛が改善したりと、うれしい効果が次々と表れるはずです」

 解毒スープのほか、生活習慣の改善も腎機能アップにつながる。

「レッグウォーマーなどで足首を温かく保つ、腹巻きでお腹や腰を温める、簡単な運動をするといったことも大切です。毎日の積み重ねで、衰えがちな腎機能を高め、たくさんの方に元気な毎日を過ごしていただきたいと願っています」

「最強の腎臓ケア」基本の解毒スープ作り方

●材料(2人分)
・ニンジン…1/2本
・ダイコン…50g
・ロッコリー…1/2株
・タマネギ…1/2個
・カボチャ…150g
・ミニトマト…6個
・ナス…1本
・きのこ…80g
・蒸し大豆…50g
・オリーブオイル…ひとまわし
・水…400ミリリットル
・天日塩…小さじ1

●作り方
(1)野菜の皮をできるだけ残して、好みの大きさに切る。大きめに切ると食感が残り、小さく切ると程よくとろける。
(2)鍋にオリーブオイルを引き、(1)を入れて軽く炒める。炒めることで栄養素の吸収率が上がり、コクが出る。
(3)(2)に水を注いで天日塩を加え、ふたをして煮る。野菜がやわらかく煮えたら完成。ミキサーにかければポタージュスープになる。

季節の野菜を使って「基本の解毒スープをアレンジ」

【春】冬の間にため込んだ毒素や老廃物を排出
ブロッコリーの代わりに、血巡りをよくして腎臓への血流をサポートする作用がある「菜の花」や、腎と胃を元気にする「キャベツ」を使用。ニンジン、カボチャの代わりに、胃腸を強化する「新じゃがいも」。ダイコン、ナスの代わりにはセロリがおすすめ。

【夏】失われた水分を補い、熱から腎臓を守る
体内の余分な熱と水分を排出し、腎臓の働きを助ける「冬瓜」はダイコン、ナスの代わりに使用。トマト、ナスの代わりには、気の停滞をスムーズにする「ピーマン」を。高い利尿作用があり、疲労回復にも役立つ「トウモロコシ」はニンジン、ブロッコリー、カボチャの代わりに。

【秋】冬に備えて、腎のエネルギーを蓄える
気力をつけ、皮膚に潤いをもたらし、風邪予防にもなる「長いも」をニンジン、ナスの代わりに使用。ブロッコリーの代わりに、気の巡りを改善し、老廃物を排出する「カリフラワー」を。食べる風邪薬ともいわれる「春菊」はニンジンの代わりに。

【冬】腎臓に最もダメージを与える寒さに要注意
身体を温める作用がある「カブ」はニンジン、ダイコン、カボチャの代用におすすめ。胃腸を元気にする「白菜」はダイコン、ナスの代わりに。ニンジン、ダイコン、ナスを「レンコン」にかえると、脾と胃のエネルギーに。ブロッコリーを「キャベツ」にすると、腎と胃を元気に。

取材・文/熊谷あづさ

大野沙織さん
鍼灸師。心合いの風鍼灸院主宰。20代で腎盂腎炎を患い、右の腎臓の機能を失う。実体験に基づいた情報を発信するYouTubeチャンネル「腎機能アップ!ちゃんねる 大野沙織」が話題に。チャンネル登録者数は現在12.4万人。