月見バーガー ※写真はイメージです

 街に月見バーガーの広告が並ぶと、秋の訪れを感じる人も多いのではないだろうか。

 KFCはたまごが3段、マクドナルドはチーチー倍月見など新作3品を含む全8種、ドムドムは個性発揮の赤い月見……。今年も「月見商戦」が過熱している。“中秋の名月”に例え、卵を具にした、月見バーガー。なぜこんなにも日本人に愛され、“秋の風物詩”となったのだろうか。

月見バーガーの誕生経緯

 食文化研究科のスギアカツキさんは、これには日本人の卵好きが関係していると解説する。

「初めて月見バーガーが登場したのは、1991年のマクドナルドといわれており、すでに30年以上の歴史があります。当時の月見バーガーはぷるぷるの卵にクリーミーなオーロラソースがのったシンプルなもので、日本オリジナルのメニューとして開発されました。たまごが安定的に供給される秋に出す商品を開発する、というのが最初の開発背景だったそうです。実は日本人は、年間1人あたり約327〜339個の卵を消費しており、世界でもトップクラスの卵好きの国民。ハンバーガーにのせるなら卵というリクエストがあり、生まれたのが月見バーガーでした」(スギアカツキさん、以下同)

 さらに、季節感を手軽に楽しみたいという現代人のニーズにも合致しているという。

「『忙しくても季節を感じたい!味覚の秋を楽しみたい!』という気持ちの表れだと捉えています。忙しい現代人は月見団子を並べてゆっくり月を眺めるような時間を過ごさなくなっています。その代わりとして誰でもすぐに簡単に食べられるファストフードがピッタリハマったのだと思います。秋の訪れをワンハンドで、一口で楽しむことができるという構図です」

 では、なぜ各社が一斉に参入するようになったのだろうか。実は、夏から秋へ変わる9月は外食産業において絶好の稼ぎ時だ。ハロウィンのようにターゲットが若い世代に偏りがちな外来イベントに比べ、「お月見」は老若男女が共感できる日本独自の習慣。だからこそ、企業側にとっても秋の主役として仕掛けやすいビッグビジネスなのだとスギさんは明かす。

「暑さが和らぎ、温かいものや濃厚な味わいがおいしく感じられる気候になってきたタイミングでの月見バーガー登場は、多くの人々を楽しませる存在になるべくしてなったといえそうです。それに月見商戦は9月商戦として市場が盛り上がるシーズンに重なっています。9月は決算期・モデルチェンジなどの影響で年間最大級の売り上げを叩き出す『一大催事市場』といわれています。毎年恒例の月見バーガーを各社が発売するからこそ、大きなトレンドとなって、秋の新作メニュー=月見バーガーになるのです」

注目は「和素材との融合」

 近年では、シンプルな月見バーガーから、進化版月見バーガーが続々登場している。その中でも特に注目すべき特徴について、ここでも日本人ならではの味覚が反映されているそうだ。

「とろける卵は特徴の一つといえます。そもそも海外の人は生卵や半熟卵を衛生上好まないので、半熟卵がおいしいという感覚は日本人ならではの感覚です。満ち満ちてとろけた月見感を口の中で体感できることは、月見バーガーの醍醐味といえます。マクドナルドのようにとろけない蒸し焼き卵を採用しているお店もあるので、自分の好みを確認するのもオススメです。

 和素材との融合も面白いですね。ウェンディーズの揚げ餅、マクドナルドの北海道産ジャガイモ、KFCの和風カツなど、和を感じる食材を積極的に使い、日本らしさを実感できるハンバーガーが多いです。ハンバーガーに餅?と驚く話題性なども楽しい要素になっています」

ウェンディーズの月見バーガー(公式Xより)

 加えて、味の決め手となるソースのバリエーションも年々豊かになってきているという。

「マクドナルドのすき焼きや黄金のたまごタルタルソース、KFCのタルタルソース、ゼッテリアの特製月見ソースに柚子マヨなど、各社のソースがユニークで、同じ月見でもさまざまな味わいが楽しめるので、どこか一つに決めるのではなく、シーズン中にいろいろ食べ歩くことが楽しい環境になっています」

 すっかりニュースタンダードとなった、秋の味覚を手軽に楽しむお月見。自分だけの“推し月見”を食べ比べて見つけてみてはいかがだろうか。