9月19日より開催されている第20回アジア競技大会『愛知・名古屋2026』。水泳や卓球など多くの種目で日本人選手がメダルを獲得し、連日大きな盛り上がりを見せている。白熱した戦いの裏で、予期せぬ形で注目を集めてしまっているのが運営側の不手際だ。
多くのトラブルが発生しているのが、各国選手や関係者の宿泊施設。今大会では、経費削減のため選手村を新たに建設せず、宿泊地は近隣のホテルやコンテナ型宿舎、大型クルーズ船に分散させている。
「コンテナ型宿舎で水漏れが起きたほか、クルーズ船では、タイのセパタクロー代表がチェックインできず、ロビーの床で長時間横になって待機する画像が拡散され、物議を醸しています。そのほかにも“食事の量が少なすぎる”“宿舎のベッドが小さくて脚を伸ばせない”など、各国選手から様々な不満の声が上がりました」(スポーツ紙記者、以下同)
サッカー韓国代表を野球場に送迎
宿泊施設のみならず、バスでの送迎トラブルも相次いだ。9月15日、サッカーのU-23韓国代表を試合会場ではなく野球場へ送迎するというミスが起き、会場入りが30分遅れる事態に。20日朝には、決勝戦を当日に控えたバスケットボール男子の韓国代表のもとに送迎バスが現れないというトラブルが発生。午前の練習中止を余儀なくされた。
「国際問題になりかねない重大なミスも起きているんです。大会開幕前の9月15日に選手の宿泊用クルーズ船で行われたイベントでは、観光PR隊『名古屋おもてなし武将隊』を代表して、豊臣秀吉に扮した男性が登場したのですが、これがよくなかった。朝鮮出兵を行った秀吉の登場に、韓国の大韓体育会からは抗議が寄せられたといいます」
9月18日に行われたホッケー男子の韓国対バングラデシュ戦では、韓国ではなく、北朝鮮の国歌を流してしまうという失態もあった。不手際が続出する事態に対し、「残念ながら予想通りと言ってもいいぐらいでした」と話すのは、スポーツ文化評論家の玉木正之氏だ。
「今大会の様子を見ていると、“事前にブリーフィングの機会が1度でもあったのかな?”と思ってしまいます。東京オリンピックの際は準備期間に勉強会が何度も開催されていましたからね。今回も、招致した愛知県や名古屋市が中心となって、大会の原義や目的を関係者に事前共有すべきでした。それができていなかったことが一連の不手際にも繋がったのでしょう」
選手の交流の場「選手村」がない
相次ぐ失態の背景には理念の欠如があるという。それを物語っているのが、これまでのアジア大会ではおなじみだった“ある場所”がないことだ。
「今大会で象徴的なのが、選手村が無いことです。それを聞いただけで“あ、もうダメだ”と思いました。アジアのアスリートたちが集まって平和の祭典を行うことが目的の大会であるはずなのに、選手たちの交流の場である選手村が無いのでは、何のためのイベントなのかよく分からないとしか言えないですよ。人が集まってお金が動くから、という理由だけで開催すれば、今回のようなトラブルが起こるのも当然でしょう」(玉木氏)
単なる準備不足にとどまらず、スポーツの原義を置き去りにしてきた日本の課題が浮き彫りとなってしまった。
