中日ドラゴンズが工藤公康氏に監督就任を要請したことが、複数メディアで報じられた。毎年の監督人事の“風物詩”として名前が挙げられていた工藤氏だが、地元・名古屋のチーム“再建”のために再びユニフォームを着ことになるそうだ。
野球解説者らがこぞって2026年シーズンのAクラス入りを予想した中日だが、蓋を開けてみればセ・リーグ最下位が決定。2021年の与田剛監督、2022年から3年連続6位の立浪和義監督、そして2025年から指揮をとった井上一樹監督と6年連続のBクラスに、かつての“強竜軍団”の見る影はない。
それでもバンテリンドームの観客動員数は右肩上がりだけに、これまでは危機感が感じられない球団だったが、ようやくフロントも重い腰を上げたよう。中日とは選手、指導者としても関わりがなかった“外部の人”の召集を決めたのだ。
現役時代は“優勝請負人”として西武ライオンズ、福岡ソフトバンクホークス、読売ジャイアンツなど複数球団を渡り歩いてリーグ優勝に貢献した工藤氏。監督としても2015年から2021年までソフトバンクで指揮をとり、3度のリーグ優勝、5度の日本一に導くなど結果を残した。
他球団の一部ファンの間では「工藤が勝てたのは大型補強のおかげ」と、ソフトバンクの潤沢な補強費に頼った勝利との穿った見方もあるが、それは見当違いと言えよう。
ソフトバンク時代にFA補強はなし
実は2015年の監督就任から7年間、工藤氏のもとでFA移籍してきた選手はいない。主な移籍組といえば、千葉ロッテマリーンズから加入したアルフレド・デスパイネ、同じく東京ヤクルトスワローズからウラジミール・バレンティン、メジャーリーグから日本復帰した松坂大輔、そして新加入した外国人選手の面々。
当時のスタメンには柳田悠岐、松田宣浩、今宮健太、中村晃、本多雄一ら“生え抜き”を多く並べた、“自前”選手の活躍が目立っての“常勝軍団”だった。それだけに現有戦力では、阪神タイガースや巨人にも劣らないとされる中日だけに「選手個々の能力、適性を見抜く力」に長けた工藤氏への期待は高い。
一方で「育成」を重視する氏だからこそ、中日で能力を存分に発揮できるかとの不安もある。それは時に「ケチ」とも揶揄される、中日フロントによる現実的な球団運営方針が再建する上での“足枷”にもなりうるからーー。
パ・リーグ球団を取材するスポーツライターは、工藤監督時代も含めた「ソフトバンクの強さ」を次のように分析する。
「ソフトバンクの戦略として根底にあるのが“育成”で、“補強”はあくまでも戦力の足りない部分を補うだけで、有力選手であれば誰でもとるわけではありません。そして“育成”には投資を惜しまないのがソフトバンク。
たとえば中日は1軍、2軍の支配下70人と育成選手を合わせて80人ほどの選手層ですが、ソフトバンクは4軍選手まで含めて120人以上。当然、大所帯となれば人件費や施設、あらゆる面でお金がかかるわけで、そこは資金力や球団運営力がものをいいます」
中日との選手数の差は40人以上。2軍以下の選手たちは1軍に昇格するために必死に練習し、また億を稼ぐレギュラー選手も気を抜けない。そんなチーム内での競争力を作り出せるのも「ソフトバンクの強さ」だとか。
工藤監督は「お金がかかる」理由
また工藤氏も、他球団の監督と比較すると「お金がかかる」ようで。
「監督としての年俸がべらぼうに高いわけではなく、チームへの投資を必要とする監督なのです。たとえばソフトバンク監督就任時、王貞治会長に出した条件というのが“選手データをとること”。今ではセ・パの球団が取り入れる“トラックマン”といった計測機器のほか、選手の能力データを数値化、分析して指導に生かすために最新機器を取り入れたのも工藤さん。
またシーズンオフには頻繁に渡米し、メジャーのコーチング技術や選出システムなども積極的に学んでいます。現在はデータ野球に加えて流行りのAIにも熱心で、おそらく監督就任の“新たな条件”として新技術の採用も提示した可能性はあります。果たして、中日球団が要望を聞き入れて、”補強費用”を捻出することができるか(苦笑)」
負けが込んでも球場に足を運び続けてくれたファンのためにも、今こそ球団はチームにお金を還元する時だろう。
