石原さとみと今田美桜

 秋クールの水曜10時枠は、フジテレビ系が石原さとみ(39)の『ポリティカルパン』、日本テレビ系が今田美桜(29)の『メリーベリーラブ』と、新旧連ドラ女王の直接対決となった。

 10月7日放送の第1話は『ポリティカル』が平均世帯視聴率5.6%で『メリーベリー』の3.9%をリードした形だ(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。

ドラマ同士がぶつかると視聴率は割れやすい

今田美桜

 今田は、夏クールでも火曜9時枠で小池栄子と直接対決をしていて、この時は今田の『クロスロード』(テレビ朝日系)が全話平均6.3%で、小池の『さよならノワール』(フジテレビ系)の全話平均2.9%に勝利している。

 一般的な傾向として、ドラマ同士がぶつかると視聴率は割れやすい。『さよならノワール』も、小池と北香那のいびつなコンビが面白く、先に『クロスロード』が最終回を迎えた後は3.7%まで数字を伸ばしたので、2作がぶつかっていなければ、もっと見られただろうと惜しまれる。

 もちろんテレビ局もそれは意識しているはずで、今田が2クール続けて直接対決をあてがわれたのは、『あんぱん』が好評で、CM出演数も圧倒的な今田がテレビ局に頼りにされているということでもあろう。

 その勢いのある今田をリードした石原はさすがといえそうだが、もちろん視聴率争いはそう単純ではない。

 人のテレビ視聴には習慣性があって、作品が変わっても日曜劇場を見続けてしまうように、同じ枠を見続ける習慣性は案外根強い。

 火曜9時はテレ朝が松岡昌宏の『家政婦のミタゾノ』や大泉洋の『ちょっとだけエスパー』などのヒット作を生み、ドラマ枠を定着させてきたのに対し、後発のフジはまだ際立ったヒット作を生みだせていないことも不利だった一因だろう(だが10月からテレ朝はドラマをやめて『火曜の良純孝太郎』に移行したので、『kiDnap GAME』を放送しているフジは今がチャンスといえる)。

目立ったヒットはないのが現状

 水曜10時に関しては、日テレは1990年代から長く続く人気のドラマ枠で、2022年4月に参入したフジは後塵を拝することが続いた。ところが日テレが2024年度に1年間ドラマを離脱。その間にフジが山下智久の『ブルーモーメント』や小池栄子の『新宿野戦病院』などで視聴率を上げていた。

 しかし2025年4月期に日テレがドラマに戻してからフジはまた視聴率を食われ、日テレもせっかくつかんでいた枠の視聴習慣を手放してしまい、どちらの局も目立ったヒットはないのが現状だ。

 そんな中で始まった石原と今田の対決だが、やはり石原は約20年、連ドラの第一線で活躍してきて、『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』や『アンナチュラル』などのヒット作を生み出してきた実績がある。結婚や出産をしても人気は衰えず、石原が出るなら見たいというファンも多く、1話の時点では一枚上手だったのかなという気がしている。

 だが、視聴率の良し悪しを語る時、つい主演俳優を原因にしがちで、この記事でもここまで便宜的にそうしているが、実際には企画や脚本の面白さによるところが大きい。

『ポリティカル』は、日本によく似た国・ニッポニアを舞台に、石原が不透明な政治の金をねらう怪盗を演じる痛快劇。政治が絡んだ時点で敬遠してしまう人もいそうだが、ヒットメーカーの脚本家・野木亜紀子が、NHK記者出身の北野拓プロデューサーと組んで、社会風刺を盛り込んだ大人のドラマとなっている。

 気だるい大人の女性を演じる石原がはまっていて、渡部篤郎や高橋一生、河合優実ら柱となる少人数で濃厚な物語を繰り広げている。石原の企みが成功するのかが気になり、先を見たくなる。

『メリーベリー』は農業をモチーフにしたロマンチックコメディ。韓国語の字幕を追わなければならないのが若干しんどいが、今田とチ・チャンウクのやり取りを笑いながら楽しめる。今後は韓国で人気のチャンウクがどれだけ日本人女性のハートをつかめるかにかかっている気がする。

 3か月が終わってみた時、直接対決の行方はどうなっているのか?

 いずれもドラマとしての期待値は高いので、直接対決の相乗効果で両作が盛り上がっていくことを期待したい。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。「3年B組金八先生卒業アルバム」「オフィシャルガイドブック相棒」「ヤンキー母校に帰るノベライズ」「IQサプリシリーズ」など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に「風景印ミュージアム」など。歴史散歩の会も主宰している。