「親の遺品」を片付け終わったあとも、「親の家」が空き家になる場合は対策が必要だ。『週刊住宅情報』副編集長などを歴任し、独立後は住宅ジャーナリストとして活躍する山本久美子さんは指摘する。

「固定資産税が軽減される特例を受けるために、あえて空き家を残す事例も見られますが、高く売れる時期を見計らことができるくらいで、空き家にし続けてよいことはありません」

 思い出のある実家は処分しづらいが、「そのうちいつか…」と思っているうちに「空き家」はどんどん老朽化。価値は下がり、ご近所の迷惑物件に成り下がる……。しかも、放っておくと防犯面でもマイナスが多いのだ。

「日本住宅総合センターでは、空き家の倒壊が原因で隣家が全壊し、住んでいた家族が死亡する事態になった場合の損害賠償金額を2億円と試算しています」(山本さん、以下同)

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イラスト/上田惣子

空き家はトラブルの元!

 山本さんが指摘する空き家のデメリットをまとめてみるとーー。

●防犯上の危険

放火、侵入などの心配が。ゴミの不法投棄によって衛生的な問題を抱えることも。

●維持管理費がかかる

窓を閉め切ったままにしておくと、湿気で建物が傷みやすくなるため、定期的な管理が必要。遠方の場合、親族や管理会社に管理を依頼する必要があり、費用が生じる場合も。住んでいなくても固定資産税などの税負担は継続。

●住宅の資産価値が下がる

時がたつほどに老朽化が進み、価値は下落。

 さらに放置すれば…

●ご近所トラブルの原因に

家が傷み、瓦や外壁が落下して人にケガを負わせたり、庭の木々の枝が隣家の敷地内まで伸びてしまうなど、近隣から苦情が来ることも。美観を損ない、街の資産価値を下げる場合も。

●防災上の危険

巨大地震の際に倒壊。緊急車両の通行の妨げに。

思いがけない相続税の支払いに悩む可能性も!

 さらに「空き家」を放っておけない事情が今年から加わった。今年1月1日より相続税が改正され、基礎控除(非課税枠)が1割に縮小されたのだ。

 今まで相続税と無縁だった人が課税対象になり、その割合は全国では6%程度まで上昇するといわれている。一方、非課税で生前贈与できる一括贈与制度が拡充。住宅取得、教育、結婚・子育ての資金(4月から)を対象に、期限つきで非課税枠が適用される。思いがけない相続税の支払いに悩まぬよう、賢く対処すべきなのだ。

 空き家問題は、もう他人事ではないのである。