いろいろなダイエット法を試しても、気づけばまた元の体重に……。50代を過ぎると、体重を落としづらくなった、とため息をつく女性は多い。その理由は、決して「意志が弱いからではない」と断言するのは、美容・健康専門の医師・木島豪先生。
「女性は50代を超えると、更年期や閉経による女性ホルモンの変化で体脂肪、特に内臓脂肪がつきやすくなります。また、閉経後は身体活動量が大きく低下するというデータもあります。筋肉量や基礎代謝も落ちやすくなるので、若いころと同じ食事制限や運動をしても、体重を維持するのが難しくなるのです」(木島先生、以下同)
「やせる」より「やせた状態を保つ」
さらに現代には、もう一つ、やせにくさを生む原因がある。私たちを取り巻く「太りやすい環境」だ。
「コンビニに入れば、目につく場所においしそうなスイーツが並んでいます。仕事や家事で疲れたら、甘いものに手が伸びるのも無理はありません。朝に『今日からダイエットするぞ!』と決意しても、一日を通して脳を活動させていると、夜には脳は疲弊しきっています。脳が疲れているときに甘いものを欲してしまうのは、人として自然なこと。この誘惑に勝つのは、並大抵の意志の強さでは無理でしょう」
だから50代以降は、意志力に頼らないダイエットが重要、と木島先生は語る。
そもそもダイエットの目的は「体重を減らすこと」ではない。
「頑張って体重が減ったら『ダイエット成功』と思いがちですが、実はそれが根本的な間違い。ダイエットは、一時的にやせることではなく、やせた状態を保つことなんです」
英語のdietは、もともと「食事」という意味。体重を減らすことではなく、食事をコントロールして健康を保つことが、本来のダイエットの考え方なのだ。
だからこそ、短期間で一気に体重を落とす方法は避けたい。極端に食事を減らすと、身体はエネルギー消費を抑えようとする「代謝適応」を起こす。ある研究結果では、極端なダイエット後は代謝の低下が長く続き、6年以上、基礎代謝が約500kcalも低いままだったという。
「短期間で体重を落としては、元の生活に戻る。その繰り返しが一番よくありません。摂取エネルギーより消費エネルギーを増やしながら、週0.5~1kgを目安に体重を落としていく。そして、その状態を維持することを目指してほしいですね。加糖飲料1本を水にかえるところから始めればOKです」
ダイエット成功者に共通する「5つの習慣」
では、実際にダイエットに成功した人=やせた状態を維持できている人は、どんな共通点があるのか。
「成功者には、(1)毎日、体重計に乗る(2)朝食をとる(3)タンパク質をとる(4)十分な睡眠をとる(5)適度な運動をする、という5つの共通の習慣があります。毎回『やらなきゃ』と、意志力を使わなくても自然にできるようになるために、結局、習慣にしてしまうのが一番なのです」
習慣化できるまでの期間は個人差があるが、平均して約66日という研究結果もある。
「最初から5つ全部を、頑張って習慣にする必要はありません。まず1つでいいのです。それが自然にできるようになったら、次の1つを加えていきましょう。毎日100点を目指す必要はなく、80点でいいんです」
一度、習慣化してしまえば、たまに飲み会や会食で食べすぎてしまってもOK。
「昨日食べすぎたから、今日は何も食べない、運動して全部を取り返そうなどと考える必要はありません。食べすぎた翌日でも、習慣化した普通の生活に戻すだけでかまいません」
また、どうしても食欲が抑えきれないときの、とっておきの方法があるという。
「パズルゲームのテトリスをやってみることです。空腹を感じているとき、頭の中は食べ物の映像ばかり流れているでしょう。でもテトリスをすると、ブロックをどこに落とすか考えなければいけない。すると、脳の中の食べ物の割合が小さくなってくるのです」
スマホにゲームを入れておき、「食べたくなったらテトリスをする」と決めておこう。この、「こうなったらこうする」とあらかじめ決めておく「if-thenプランニング」は、ダイエットに非常に有効だ。
「例えば、『甘いものが食べたくなったら、温かい飲み物とヨーグルトを食べる』と決めておく。意志力で我慢するのではなく、食べたくなったときの行動を先に決めておくんです」
人間は食欲には勝てない、と言い切る木島先生。“食べたい”という衝動が起こったら、別の行動へ逃がす。そのための方法を事前に用意しておくわけだ。5つの習慣に加えて、食べたくなったら何をするか決めておくことが、ダイエットを成功させるための秘訣のようだ。
意志力に頼らずできることを少しずつ増やしていけば、ダイエットは特別な努力ではなく、毎日の生活そのものになっていく。やせた状態を無理なく保つには、「習慣」を味方につけることが、何よりの近道なのだ。
リバウンドにつながる「危ない」ダイエット
短期の極端なダイエット
極端な食事制限で、短期間に体重を落とすのはNG。身体が飢餓状態になると代謝適応が起こり、エネルギー消費を抑えようとする。その状態で元の食生活に戻り、以前と同じ量を食べると、かえって脂肪を蓄えやすくなってしまう。週0.5~1kg程度を目安に少しずつ体重を落として、維持することが大事。
間違ったファスティング
食べなければ体重は減るが、間違ったファスティング(断食)を行うと、脂肪だけでなく筋肉も減ってしまう可能性がある。筋肉が減れば脂肪を燃やす力も落ち、食事を再開すると余ったエネルギーを脂肪として蓄えやすくなる。筋肉量を維持しながら、体脂肪を減らそう。
ダイエットを成功に導く5つの習慣
(1)毎日、体重計に乗る
体重を毎日測る目的は、今の自分の身体の状態を知ること。増減の傾向がわかれば、食事や生活を振り返るきっかけになる。まず朝の決まった時間に体重計に乗ることを、毎日のルーティンにしてみよう。
(2)朝食をとる
「朝は食べないほうがやせる」は誤解。一日の総摂取カロリーが同じでも、朝多め、夜少なめに食べた人よりも、朝少なめ、夜多めの人のほうが太りやすいという調査結果もある。特に、タンパク質多めの朝食が大事。
(3)タンパク質をとる
筋肉の維持には、タンパク質は重要。体重1kgあたり約1.0~1.3gが、一日の摂取量の目安。鶏むね肉、魚、卵、大豆などをメインに、バランスのとれた食卓を心がけて。ご飯やラーメンなど、糖質だけの食事はNG。
(4)十分な睡眠をとる
睡眠不足になると、食欲を抑えるホルモンのレプチンが出にくくなり、食欲を高めるグレリンが増えるため、食欲がアップ。睡眠を1時間(平均1.2時間)ほど延ばしただけで、一日の総摂取カロリーが平均で約270kcalも自然に減少するという研究結果も。
(5)適度な運動をする
ウォーキングなど毎日の有酸素運動に加えて、週2~3回は筋肉トレーニングも取り入れたい。おすすめはスクワットなど、器具を使わない自重運動。筋肉がつくと、エネルギーの消費量が増えて、体重も落ちやすくなる。
取材・文/池田純子
