「問題が発覚して以降、なかなか大臣を辞めなかったから“困った人だね〜”と話していたんです。この選挙区は渡辺美智雄元大蔵大臣から息子の喜美さんに地盤を引き継いだ“渡辺王国”なんです。
喜美さんらがみんなの党を立ち上げて勢力図が変わってきた2012年の選挙で、自民党の落下傘候補として喜美さんに敗れながら比例復活したのが簗さんでした。結局、栃木県に貢献するどころか悪いイメージを振りまいてしまった。怒るというよりも、いい恥さらしだとあきれています」(那須塩原市の70代無職男性)
9月の高市改造内閣で農林水産相として初入閣した自民党の簗和生衆院議員(47=比例北関東ブロック選出、栃木3区では落選)は10月14日、大臣職の辞表を提出して受理された。高市早苗首相(65)は「私の大事なヤナちゃん」などと親密ぶりをアピールしていたが、これ以上かばいきれなくなり、事実上、更迭したかたちだ。
問題噴出の発端は、栃木県大田原市の自民党支部の懇親会での発言が報じられたこと。選挙戦で首長が自分を支持しなかった那須烏山市と那珂川町について「道路予算を大幅にカットした」と仕返ししてみせたかのような言い方をして非難を浴びた。
さらに過去の選挙で、応援に来てくれた支持者を出陣式会場までシャトルバスで無料送迎したことや、電話で投票を呼びかけた事務員に報酬を支払っていた疑惑も浮上し、それぞれ公職選挙法に違反する可能性がある。
十数年前の簗さんは腰が低かった
簗氏は言い逃れしたのちに発言を撤回して謝罪。影響力があるように見せたかっただけかもしれないが、名指しされた2市町は国土交通省からの交付金が大幅にカットされており、納得できる説明はない。
冒頭の男性が暮らす那須塩原市の市長は簗氏を応援し、道路予算は増えている。
「十数年前、地元の祭りで初めて簗さんを見かけたときはピシッとした服装で腰が低かったんですよ。出店の飲食物を買っておいしそうに食べたり、自分を大きく見せようとはしていませんでした。対立候補は若いし、世代交代になるかもしれないから焦ってあんな発言をしたのでしょう」(那須塩原市の50代男性会社員)
厳しい見方も少なくない。
「簗さんは大きな道路の交差点や駅頭などによく立っていました。特に演説はせず、有権者に手を振ったり、頭を下げるだけです。選挙期間に入ると『やな』と書いたノボリを持ちます。
裏金問題が表沙汰になってからは“また手を振ってるよ”と冷笑されるようになりました。多くの人が無視する中、“おー、裏金議員!”と声をかける人もいますしね。有権者にきちんと謝らず、言い訳がましかったせいでしょう。
それと、すごくケチです。地元の県議会議員や市町議らと酒席を囲むと、飲んでも食べてもお金を出さない。相撲取りじゃないのに“ごっつぁん体質”なんです」(那須塩原市の60代自営業男性)
簗氏は東京都八王子市の出身。東京大学大学院経済学研究科を修了後、議員秘書などを経て2012年に初当選した。当選6回で旧安倍派に所属し、派閥の裏金問題では政治資金収支報告書への不記載が5年で計1746万円あり、2024年に党役職停止6か月の処分を受けた。
選挙権を持たない中高生とも握手
簗氏が地元事務所を置く大田原市の市長は、無所属新人の対立候補を応援し、道路予算が減らされている。
「最初はマメで熱心で人の話をしっかり聞いていました。夏の暑い日でもイメージカラーの赤いネクタイを締めてスーツ姿で地元を回り、腰を90度曲げて握手を求めるんです。あの人の手って柔らかいんですよ。
事務所に来てくれた人の自宅をひとりで個別に回っていました。“全部回っているんですか”と尋ねたら、“地元出身ではないので”と答えていました」(大田原市の40代自営業男性)
同市の体育関係者によると、「投票できない中高生の球技大会にまで顔を出し、選手一人ひとりと握手して一緒に集合写真におさまっていた」という。地元にしがらみがないぶん、クリーンな政治を期待する人は少なくなかったらしい。
ところが、小選挙区で勝ち始めると、世話になった陣営幹部や有力支援者を切り捨てるようになった。耳の痛いことを言われると敵視し、目を合わせなくなるという。「簗のことを頼むよ」と、周囲に頭を下げてくれていた人でも容赦なかった。
「毎年元旦には赤いダウンジャケットを着て、那須塩原市内の神社の手水の近くで初詣に来る人に挨拶するのが恒例です。以前は周囲に人が集まってきたんですが、裏金問題の発覚後はひとりでプラプラしている姿が目立つようになりました。
秘書に厳しく、1から100まで全部報告しないといけない。気を利かせて動くと“なんで私に言わないんだ。勝手なことをするな”と怒られるそうです。だから秘書がすぐ辞めてしまうんです」(前出の40代自営業男性)
支援者は「秘書の携帯番号を登録しても、しょっちゅうかわるから意味ない」とボヤいているという。
もう簗さんに投票する人はいない
簗氏から名指しで「予算カット」と言われた那珂川町の有権者は怒っていた。
「この町でも簗さんに投票した人はいるのに、予算を減らしたなどと言ってはダメだよね。実際に減っているわけだしね」(那珂川町の60代自営業男性)
以前は数十軒の集落の子ども会の夏祭りや小学校の運動会にも顔を出した。
「顔も見たくない。選挙向けに各所に掲げている看板を早く撤去してほしいです。選挙区では負けて比例選出なのによく言うよ、という印象。裏金問題だけでアウトだし、大臣になったのがおかしいんですよ。
辞めるときも小さな声で同じことを何度も言って、情けなかった。この町では、もう簗さんに投票する人はいないと思います。詫びてほしいとは思いません。税金はあなたのお金じゃありませんよ、とだけ言いたいです」(那珂川町の50代会社員女性)
簗氏はホームページで、座右の銘を《初心忘るべからず》と書いている。噛みしめてほしい。
