皇室に新たな法律が適用される─。10月24日、改正皇室典範が施行されるのだ。
「内容が本格的に変更されるのは昭和22年の現行皇室典範の施行以来、初めてのことです。24日以降には、(1)女性皇族が結婚後も皇室に残ること、(2)旧宮家の男系男子を養子に迎えることが可能になります」(皇室担当記者、以下同)
“養子に男子が生まれた場合、継承権を持つ”という点まで踏み込んだ
皇族数の確保を目的に話し合われた今回の改正だが、問題点を多く残している。
「与党は、有識者会議や与野党協議で議論されなかった“養子に男子が生まれた場合、継承権を持つ”という点まで踏み込みました。この点には、“立法府の総意ではない”と反発の声が上がったのです。また、①案についても、配偶者とその子どもは皇族としないと定めており、皇族である妻と一般人である夫と子どもという、いびつな家族構成を強いることになりました」
男系男子の継承へのこだわりから生まれた歪みを含んだ今回の改正。立憲民主党で長らく皇室の問題に携わる長浜博行参議院議員に話を聞いた。
欧州のすべての君主国で女性元首の道が開かれた
なぜ、女性が天皇になれないのか。これは極めて素朴でありながら、象徴天皇制と日本国憲法の本質に関わる重大な問いです。かつて男系男子の継承を基本としていたヨーロッパの君主国は、時代の変遷とともに男女を問わない「直系長子継承」へと相次いで舵を切ってきました。先日、欧州で最後まで男子限定の継承を維持していたリヒテンシュタイン公国までもが、長子優先への制度改定を発表しました。欧州のすべての君主国で女性元首の道が開かれた中、いまだ男系男子のみに固執し続ける日本の現状は、完全に孤立した「ガラパゴス状態」にあると言わざるを得ません。
上皇陛下や天皇陛下は、ご自身のお立場に言及される際、常に「日本国憲法下における天皇」であることを深く意識されてきました。「天皇は存在しているだけでいい」というあり方から、戦後、新たな憲法下で、初めて即位された上皇陛下は被災地に自ら足を運ばれ、国民と直接触れ合う中で現代の「象徴」としてのあり方を築かれました。しかし、その実践と歩み寄りに対し、政治の側は真摯に応え、「象徴天皇制とは何か」と深く議論してきたとは言えません。
現行の皇室典範は、皇位継承を「男系男子」に限定しています。しかし、その合理的・論理的な説明はなされていません。天皇陛下のお務めは「国事行為」「公的行為」「私的行為」に分かれますが、皇族による式典へのご臨席や被災地へのお見舞いなどの公的行為において男女の別はなく、現に愛子さまなど女性皇族も果たされています。また、憲法に定められた国事行為を代行する「摂政」や「臨時代行」の就任順位には女性皇族も含まれています。公的行為を担い、国事行為の代行資格も認められていながら、なぜ即位そのものは認められないのか。
改正皇室典範は国会でいつでも再改正は可能
この歪みを正す好機だったのが、'05年の小泉純一郎内閣における有識者会議でした。同会議は「男女を問わず直系長子優先」という明確な結論を出し、法改正が実現していれば、その後に男子が誕生したとしても直系長子である愛子さまが天皇に即位されるはずでした。世に言う「愛子天皇論」の根拠はここにあります。しかし、翌年の悠仁さまのご誕生によって議論は突如として停止し、闇に葬られました。その後、'12年に私が野田佳彦内閣の官房副長官として宮内庁の要請を受け主導した「女性宮家創設」の取り組みも政権交代によって立ち消えとなり、皇位の安定的継承に向けた抜本的議論は先送りされ続けてきました。
現在、世論調査では国民の約8割が女性天皇を容認しています。しかし政治の現場では、ネットなどを通じて組織的に圧力をかける「ノイジーマイノリティー(声の大きな少数派)」の声が、非組織的で穏やかな「サイレントマジョリティー(物言わぬ多数派)」の意思をすくい上げられない機能不全に陥っています。「静謐な環境」を口実に議論をタブー視していた結果、国民的合意がないまま、与党による旧宮家の養子案などの皇室典範の改正が進められてしまいました。
しかし、皇室典範は憲法ではなく国会が制定する「法律」です。たとえ、不十分な法改正がなされたとしても、国民が政治を注視し、民主主義のプロセスを通じて意思を示し続ければ、国会でいつでも再改正は可能です。すべては国民一人ひとりの意識にかかっています。
皇室の女性に「男子を産むこと」を強いるような重圧は、現代社会において許されるものではないでしょう。皇室が真に安定し、将来にわたり国民から敬愛と祝福を受け続けるために、私たち主権者一人ひとりが、いま改めてこの問題から逃げずに正面から向き合うべき時を迎えています。
長浜博行 1958年生まれ。立憲民主党参議院議員。前参議院副議長。元環境相。元官房副長官。上皇陛下の退位・皇位継承問題などの議論に長らく携わる(衆4期、参4期)
