10月22日のプロ野球「ドラフト会議」で、すでにメジャーリーグへの進路希望を表明していた横浜高校・織田翔希投手が“強行指名”された。
事前には、かつて大谷翔平投手を強行指名した北海道日本ハムファイターズ、昨年にスタンフォード大学の佐々木麟太郎選手を指名した福岡ソフトバンクホークスの動向も注目されたが、蓋を開けてみれば読売ジャイアンツの“一本釣り”だった。
1985年には早稲田大学進学を希望していた桑田真澄(PL学園高)を単独指名し、高校No.1投手の入団にこぎつけた巨人。あれから41年、再び高校No.1投手に白羽の矢を立てたわけだが、織田投手を説得できる勝算はあるのだろうか。
横浜高校でチームメイトと共にドラフトを見守ったエースは、巨人からの指名も「非常に光栄な指名をいただきましたが、アメリカに挑戦する気持ちは全くブレません」とメジャー挑戦の意思は変わらず。
片や「日本のプロ野球ファンの方々にお見せしたい」と、強行指名に至った理由を明かした巨人・水野雄仁編成本部長は「我々はもう誠意を尽くして行くだけ」と、交渉期限の2027年3月末まで辛抱強く交渉に臨むようだ。
若干18歳の決断を揺るがすような指名劇にネットでは賛否が起きているが、球界OBの見方はどうだろうか。ドラフト会議終了後に放送されたCSスカイA『プロ野球ドラフト後夜祭26』に出演した、谷繁元信氏と里崎智也氏ら球界を代表する捕手2人は、
僕はジャイアンツに入ってほしい
谷繁「大谷翔平も“日本の球団には行かない”って言って、結局日本ハムが指名して。で、(日ハムが)口説いて、ああやってアメリカでやってくれているわけじゃないですか。だから今のルールで言うと、もうあれが一番ベストな形なんだと思う」
里崎「(まず日本で)頑張って、アメリカに行くっていう道筋の成功例をもっとつけてもらいたい。こうなったら、日本の野球界で頑張ってもらいたいなっていう気持ちはあります」
かつて“高卒即メジャー”を希望した大谷が、交渉の末に日ハム経由で渡米し、メジャーリーグで4度のMVPに選出されるスーパースターになった「道筋」を示し、織田投手にも巨人、プロ野球入りが「ベスト」としてみせた。
当初の希望通り、織田投手が高卒でメジャー挑戦するとなれば、来年1月にはMLB球団との交渉、契約が解禁となるが、25歳未満の海外選手にはマイナー契約が用意される。昨年2月に、桐朋高校からオークランド・アスレチックスに入団した森井翔太郎投手も、渡米後はマイナー選手として2シーズンをプレーした。
2年目のシーズンを迎えた今年、森井投手は“二刀流”としてマイナー最下部の「1A」に出場して、投手で10試合に登板して0勝4敗、防御率15・26。打者として63試合に出場して打率.227、4本塁打、24打点の成績で終わった。
一般的にプロ野球の2軍〜3軍レベルと想定される1Aでのプレーだが、まだまだ成長段階にある19歳の選手。メジャーでの育成で開花する可能性も十二分ながら、同じく“才能の塊”である新人選手が、1チームにつき毎年100人以上も入団してくるMLBだ。当然ながら、結果が伴わないようなら見限られるのもまた早い。
そして現時点で日本、アジア圏内で、高卒即メジャーで一線級の活躍を見せたのは、韓国ロッテ・ジャイアンツに1位指名されながらも拒否し、2000年にシアトル・マリナーズと打者としてマイナー契約を交わしたチュ・シンス(2020年までMLBでプレー、2024年に韓国リーグで引退)のみの現実もある。
NPBを通った方がメリットが多い
もちろん日本でも森井投手、そして織田投手が“パイオニア”になる未来もあるが、「高卒即メジャー」でメジャー昇格を目指すには、マイナーの環境にも耐えうる強靭な身体と「絶対に夢を叶えたい」とのタフな精神力が求められるわけだ。
一方で金銭面でのスケールは桁違いだ。プロ野球では新人選手の契約金は「1億円+出来高5千万円」を上限として定めているが、メジャーでは有望選手の場合、それこそ森井投手は契約金150万ドル(当時のレートで約2億3300万円)を手にしている。
またメジャー昇格時点で25歳未満であれば、MLB最低保障年俸74万ドル(約1億1000万円)に据え置かれるが、それ以降は活躍次第で数億円、数十億円と天井知らずで跳ね上がる世界。織田投手は決して“カネ”を重視しているわけではないだろうが、プロ野球とは比較にならないほどの“ビッグマネー”を稼げる夢があるのもメジャーだ。
10月15日の会見では、メジャー挑戦を表明しつつも「小さい頃はNPBにもすごく夢を持っていましたし、NPBを通った方がメリットの方が多いことがあるかもしれません」と、プロ野球を経てのメジャー行きに“メリット”があるとも話していた織田投手。
そして巨人入団を経て、ニューヨーク・ヤンキースの一員としてワールドシリーズMVPにも輝いた、メジャーリーグを知る松井秀喜氏の新監督就任が決定した巨人軍。おそらく織田投手の説得が、同氏の最初の大仕事にもなるかもしれないが、果たして18歳の「夢」はどこに行き着くのか。
