中日ドラゴンズ・工藤公康監督(2014年)

 読売ジャイアンツによる横浜高校・織田翔希投手の“強行指名”サプライズこそあったものの、12球団が順当に有望選手を指名したプロ野球「ドラフト会議2026」。

 2026年シーズンはセ・リーグ最下位に終わった中日ドラゴンズも、1位指名の渡部海捕手(青学大)こそ抽選で外したものの、外れ1位の宮原廉投手(近畿大)をはじめ、投手に野手と補強ポイントを押さえた指名と言えよう。

 渡部捕手の交渉権をめぐって、東北楽天ゴールデンイーグルス・石井一久GMとクジを分け合った、荒木雅博球団本部長補佐ら背広組が着席した中日テーブルには、当初より“先約”による欠席が伝えられていた工藤公康新監督の姿は見当たらず。

 しかしながら、そこは工藤監督。仕事を終えた後に、その足でドラフト会場となった都内ホテルに駆け付けていたようだ。その貴重なドラフトの舞台裏をYouTube『中日ドラゴンズ公式チャンネル』が公開している。

高校球児のように入室する工藤監督

 動画では渡部捕手のスカウト担当を務めた、自身も2019年に中日から3位指名された元投手の岡野雄一郎スカウト。同じく元投手で、石川昂弥らの入団に一役買った清水昭信スカウトら、現役引退後に背広組に転身した元選手の姿も。皆が緊張した面持ちでドラフトの行方を見守り、抽選結果や他球団の動向に一喜一憂する。

 宮原投手の交渉権獲得が決まった際には、相手は近畿大の関係者だろうか、清水スカウトが「縁がありまして良かったです」とホッと胸を撫で下ろして電話をする、ドラフト中継では見られない“裏側”が映し出される場面も。

 そして各球団の全指名が終わった後、中日スタッフの控え室に「失礼します!」と、野球部部室に招かれた高校球児のように頭を下げて入室する人物が。工藤監督だった。

「皆さんが1年かけて、取ってくださった選手を1人でも多く1軍のマウンドで、もしくは1軍のバンテリンドームで活躍できるように。僕も一生懸命頑張りますので」

ドラフト会議に駆けつけた工藤公康監督が書いたメッセージ(中日ドラゴンズ公式YouTubeより)

 スタッフへの挨拶を終えると、早々に指名選手の技量だけでなく、間近で接してきたスカウト陣だからこそ把握する選手の性格など、選手育成のために内面部分の“仕事”レポートを求める監督。そしてーー、

「1年間、お疲れ様でした。ちょっとホッとすると(思います)」

 あらためて頭を下げる工藤監督から労いの言葉が向けられると、ここでようやく緊張が解けたのか、安堵の表情を浮かべて笑顔を向け合うスカウト陣だった。

スカウトにとって集大成の場

 毎年のドラフトに向けて、公式戦や練習試合の視察で全国各地を駆け回り、時に何年もかけて惚れ込んだ選手の調査をすることも珍しくないスカウトの仕事。その選手と“対話”し続けた集大成が「ドラフト会議」であり、スカウトにとって1年に1度の球団の命運をも分ける「控え室」なのだろう。

 そんな仕事と苦労を理解しているからこそ出た、工藤監督からの「1年間、お疲れ様でした」の言葉。そんな新監督からの気遣いに絆された瞬間だった。

 ちなみに荒木球団本部長補佐が宮原投手を引いた「当たりくじ」に、サインとメッセージを認めた工藤監督。

【共に頂点目指して頑張ろう。】

 監督だけでなく選手、コーチ、球団スタッフ、フロント、そしてスカウトらと「共に」セ・リーグ制覇、そして日本一を目指すことを記した、入団する選手全員に送ったメッセージなのだろう。