「そりゃあ、びっくりしたとよ。出産直後の男児の遺体が水門のゴミ捨て場にあるなんて、前代未聞やけんね」
田園地帯に住む60代男性は声をうわずらせた。事の始まりは、昨年の6月27日午前10時30分ごろだった。福岡県大川市の水門で、腐乱した男児の変死体が見つかったのだ。
子どもを用水路に
水門は四方八方に広がる用水路から九州一の大河・筑後川に注ぎ込む直前にあり、ごみが川に流れ込まないように除塵機という機械ですくい取り、隣接するゴミ捨て場に溜めておく仕組みになっていた。
「ゴミが大量になると清掃車が収集に来るんだけど、そのときに清掃員が遺体を発見して、地元の福岡県警筑後署に110番通報したみたい。その後、警察は周辺から目撃情報を募り、防犯カメラも調べたりしていたので、周辺住民はこの事件を知ったわけよ」(前出・60代男性)
以降の捜査はいっこうに進展を見せなかったが、1年3か月が過ぎた今年10月5日、事態は急展開を見せる。
福岡県警捜査一課と同県警筑後署の合同捜査本部は、大川市の市営団地に住む派遣型風俗店従業員の梅崎美明(みあ)容疑者(29)を、昨年見つかった男児に対する殺人と死体遺棄の疑いで3回目の逮捕をしたと発表した。前2回の逮捕はあえて公表していなかったため、これも同時に発表したのだった。
逮捕のきっかけになったのは、今から3か月あまり前の今年7月25日夜のこと。容疑者と同じ団地に住む70代の男性は、そのときのことをこう振り返る。
「夜8時ごろ、容疑者が急に具合が悪くなったようで、救急車で筑後川を渡った先の佐賀市内の病院に運ばれとった。そのあとも、深夜だというのにパトカーが3台も来たし、明け方には鑑識らしき人もおったし、団地ではちょっとした騒ぎになったんですよ」
騒然となった理由は、搬送先の病院が「患者の体内から胎盤は見つかったが、子どもがいない」と110番通報したからだった。警察が病院へ同伴していた容疑者の母親とともに大川市の自宅の部屋へ入ると、押し入れの中から男児の遺体を発見。50代後半とみられる母親は、妊娠も出産もまったく知らなかったという。
「容疑者自身も当初は“産んでいない”と言い張っていましたが、9日後の8月4日、押し入れの中に第二子の死体を遺棄した疑いで逮捕されました。
その後は“産んだけど、貧血で朦朧としていたからわからなかった”とも語っていたそうですが、警察に証拠を突きつけられると、次第に死体を上衣で包んで押し入れに遺棄したことを認めるようになったといいます」(地元紙記者)
容疑者が語った驚きの動機
8月25日には、第二子の殺人の疑いで再逮捕される。これも当初は、「殺してはいない。死んでいた」などと供述していたが、最終的には顔を見るのが怖かったので頸部を太ももで挟んで絞めつけ、窒息死させたことを認めた。
動機については、「子どもが生まれたことを知らされるのを恐れた。母親に見つかりたくなかった。育てるつもりはなかった」と驚きの供述を……。
「こうして今年の事件のおおよその見通しがついたところで、昨年6月に水門に遺棄されていた乳児との関連を調べるため、警察が第一子と容疑者をDNA鑑定したところ、これも彼女が産んだ男児だと判明。3回目の逮捕へとつながったのです」(前出・地元紙記者)
昨年、水門で変死体が見つかったという話を聞きつけた容疑者の母親は、娘の妊娠には気づいていなかったものの、彼女のベッドに血痕があることを発見し、「あれはあんたがやったんじゃないの?」と問いただしたことがあった。そのとき、容疑者は「違う」と否定したそうだが、それも結果的には嘘だったということになる。
「このときの殺人も第二子と同じ方法でしたが、死体遺棄はいったん毛布にくるんだままキャリーケースに入れ、押し入れに一週間ほど入れておいた。
その後は自宅から300メートルほど離れた用水路までビニール袋に入れて運び、水の中へ投げ込んだ。遺体はそこから1キロほど流されて、水門に辿り着いた際にはビニール袋はなく、生身の遺体だけになっていたのです」(捜査関係者)
容疑者は押し入れに遺棄した第二子についても、「いずれは用水路に捨てるつもりだった」と告白しているという。子どもの命を何だと思っているのか、あまりに無責任な発言に憤りを覚える人も少なくないはずだ――。
