注目を集めた『侍タイムスリッパー』や大河ドラマで見せる凛々しい武士姿に、思わず目を奪われた人も多いのでは。時代劇だけでなくドラマでも今大注目の俳優・山口馬木也。そんな山口が今挑んでいるのが、22年越しの憧れだった劇団☆新感線の舞台『髑髏城の七人』。53歳からのトレーニング奮闘記から、彩り豊かな料理「馬木也めし」、そして時代劇へのピュアな情熱まで。知れば知るほど惹かれる素顔をたっぷりお届け!
「メンタル弱いんです(笑)」
注目を集めた『侍タイムスリッパー』や大河ドラマで見せる凛々しい武士姿に、思わず目を奪われた人も多いのでは。時代劇だけでなくドラマでも今大注目の俳優・山口馬木也。
そんな山口が今挑んでいるのが、22年越しの憧れだった劇団☆新感線の舞台『髑髏城の七人』。53歳からのトレーニング奮闘記から、彩り豊かな料理「馬木也めし」、そして時代劇へのピュアな情熱まで。知れば知るほど惹かれる素顔をたっぷりお届け!
「一寸先は闇ですから。メンタル弱いんです(笑)」
'24年に公開され日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した主演映画『侍タイムスリッパー』で注目を集め、今夏は大河ドラマ『豊臣兄弟!』で演じた柴田勝家の壮絶な最期が話題をさらった山口馬木也。
放送中のドラマ『南田南弁護士は天才肌』(カンテレ・フジテレビ系)での優しい上司・宮地賢吾役も好評で、「これでまた人気に拍車がかかるのでは?」と投げかけると、冒頭の言葉が返ってきた。
「自分の評判などを見るのが苦手で。悪い意見で傷つくわけではないんですけど、“人気が高まって”みたいな声を聞くと、溺れそうな気がしちゃうんです。ありがたいなとは思いつつ(笑)」
岡山県の出身で、京都の美大で洋画を専攻。卒業後に上京し、'98年に映画デビュー。その後、ドラマや映画、舞台で数々の作品に出演し、特に『水戸黄門』や『剣客商売』、現在までに5作出演している大河ドラマなど、今や時代劇には欠かせない存在だ。
エゴサをしないので、注目されている実感も特になし。だとすると、街で声をかけられるのも苦手かと思いきや、
「それはうれしいですよ、単純に。“あれ?”と言われたら“そうですよ”“握手いいですか?”“全然大丈夫です”みたいなね。先日は、“勝家ですよね?”と聞かれたので、“もう死んだんですよ~”と返しました(笑)」
と、意外におちゃめな答えが。
侍役が多いので、寡黙でストイックなイメージがあるが、本人は「真逆です」と苦笑。
「武士みたいな生き方をしてるんじゃないかと勘違いされるんですけど、結構ふわふわしてます(笑)。すっごいしゃべりますし。難しい話は無理だけど、くだらない話は大好き」
“ジジイもいるぜ”という気持ちで(笑)
そんな彼が今、全身全霊を傾けているのが、11月14日から上演される劇団☆新感線の舞台『髑髏城の七人 LAST STAND』。再演をほとんど行うことのない劇団☆新感線が、'90年の初演以来7年ごとに繰り返し再演を重ねてきた大人気作品だ。
織田信長亡き後の関東を舞台に、天下転覆を図る関東髑髏党の党首・天魔王(早乙女友貴)と、阻止しようと対決する捨之介(早乙女太一)。アクションありロマンあり笑いありの、誰もが楽しめる壮大なチャンバラアクション時代劇。22年前、古田新太が主演時に観劇した山口は、「いつか自分も」と渇望していた。
「自分の細胞のすべてが面白いと言っているような感覚というか。舞台を見て声を出して笑ったのは、このときが初めてでした。小さいころ木下大サーカスを見たとき以来の衝撃。“どこかでご縁がないものか”とずっと恋焦がれていたんです」
劇団☆新感線への参加は'18年の『メタルマクベス』disc1以来2作目。実は今作への出演が決まる前、山口が稽古をしていたスタジオの別部屋で同劇団も偶然、稽古をしていて、カップ麺を差し入れしたという。
「なので、出演が決まったときは“やった! 差し入れしておいてよかった~!”と思いました(笑)」
山口が演じる狸穴二郎衛門は、主人公・捨之介(早乙女太一)に助太刀をする牢人。役作りについて尋ねると、「役の構築はせず、演出のいのうえ(ひでのり)さんの型に自分をはめていく」と。
「公演名に“いのうえ歌舞伎”とあるくらい、いのうえさんには型がある。その型にどう自分をはめ込めるか、いかに浄瑠璃の人形のように操られるかに、チャレンジしたいなと思っています」
また、再演のたびに演じ手に合わせて脚本を少しずつ変える中島かずき氏から、「これは僕に当てたものだな、というラブレターをいただいた」と思ったそう。
「これまでの狸穴二郎衛門は戦う役ではなかったんですが、今回は“ここで立ち回り”と書いてあったんです。22年前は自分には無理かもと思った立ち回りですが、覚悟は決まってます!」
稽古初日には「やっぱり新感線はしんどいな」と感じたが、それ以上に「戻ってこられて本当にうれしかった」と振り返る。稽古2か月、本番は4か月にわたる長丁場に備え、半年前からパーソナルジムに初めて通い始めた。
「トレーナーが優秀なんです。僕のアクションを見て、この筋肉を連動させれば美しく見えるとか、身体を痛めないように、詳しく指導してくれて」
20年以上やってきている立ち回り。現在53歳だが、このパーソナルトレーニングを受ける前は、若いころにできていたイメージのまま動くものの、身体がついていかず、半分諦めていた。
「これからは年相応にシフトチェンジしないといけないのかと思っていたけれど、筋肉の連動性さえ上がれば、何歳になってもいけるかなという気持ちになれました」
以前は腰痛持ちでマッサージにもよく通っていたが、今はまったくナシ。“身体が資本”という言葉に深く納得する毎日だ。
「若い共演者のエネルギーに負けないように、“ジジイもいるぜ”という気持ちで(笑)。元気に動けるところを見てほしいなと思ってます」
ちなみに食事については「気にしないのが体調管理だと思っているので、好きなものを好きなときに食べます」と潔し!
「洋服や料理が好きだし、美大出身というのもあって、どっちかというと、そっちかぶれの人間なんですよ」
「演じてみたい人物はたくさんいます」
SNSには自作料理「馬木也めし」の写真をアップすることもある山口。最近ハマっているのは、ドラゴンフルーツを使ったドレッシングのサラダ。
「ドラゴンフルーツの赤肉種のものにサワークリームとレモン、塩、蜂蜜を加えて、つぶして混ぜるんです。するとショッキングピンクのような色になって、緑の葉物野菜にかけると、補色ですごく映える。そこに西洋ワサビやチーズをふりかけたり、バルサミコ酢を加えたりしてもいいし。酸味と甘味と塩味が合わさって意外と合いますよ」
YouTubeなどを見て作ることもあるが、このレシピは「“あ、これいいかも”と思って作った」というオリジナル。色に対する感性も、さすがアートのセンスが光っている。
実家は代々ひな人形を作る職人。それもあってか、「何か作っている時間が好き」だという。
「絵も、ちまちま描いているのが好きで、作品意識がないんです。だからアーティスト志向じゃないんだなと思って。ひたすら集中して作業すること、没頭して時間を忘れる感覚がたまらなく心地いいというか」
映像と舞台、両方で活躍し作品を作り上げている山口だが、舞台ならではの魅力はどんなところに感じているのだろう。
「やっぱり生なので、お客様に作ってもらう部分が大きいですね。客席から言葉にならない何かが刺さってくるのは本当に不思議。それを感じ取ると、役者はもっと共有できると思って、そこにどんどん入っていくというか。映像でもスタッフさん方の反応で似た現象は起きますが、お客様がリアルに教えてくれるのは舞台ならでは」
今作はタイトルに“LAST STAND”ともあるように、劇団☆新感線で上演するのはこれが最後となる。「滑り込みセーフでした」と語る山口、オファーを受けた段階ではまだこのことを知らなかったという。
「僕のビジュアル撮影に中島先生が来てくださって、そこで教えていただいたんです。“間に合ったね”“はい、よかったです”とお話ししつつ、“もうちょっとやってくださいよ~”とお願いしたんですけどね。だって、僕のように出たいと恋焦がれている俳優は大勢いますし、今回の公演できっとまた増えるはずだから。実は続くんじゃないかって、淡い期待をしちゃうんですけど」
柴田勝家や『侍タイムスリッパー』の会津藩士など、これまで演じてきた武士は数知れず。思い入れのある武将や時代を尋ねると、「実はそこまで歴史に詳しくなくて」と意外な返答が。
「学生のころ日本史の授業が好きだったとかも、全然なくて。時代劇は大好きなんですけどね。でも演じてみたい人物はたくさんいます。というか、有名どころは全員演じたいくらい(笑)」
2作続けての戦国時代ものに「巡り合わせを感じる」と思いをはせ、「武将顔とよく言われるので、今日はヘアメイクさんにアンニュイな髪形をリクエストした」と照れ笑い。渋いイケオジぶりとチャーミングな素顔のギャップも、たまらなく魅力的だ。そんな彼が夢見る時代劇の未来とは?
「僕らの世代って、時代劇が衰退していった時期で、時代劇=古いというイメージがどうしても残っているんですね。でも、実はそんなに難しいものではないし、自分のルーツとかいろいろなことを感じてもらえると思うので、若い世代の人たちに従来のイメージをどんどん変えてほしいなと。いいところは残して、新しいものも取り入れてね。時代劇は世界に行けるはずだし、そこに僕もいたいなと思っています」
世界中から愛される時代劇、そこで見事な殺陣を披露する山口……そんな姿を見られる日が楽しみだ!
“殺陣トーク”が弾んだ発表会の様子をお届け!
伝説の舞台のラスト公演『髑髏城の七人 LAST STAND』の製作発表会見が9月17日に開催された。主人公・捨之介役の早乙女太一と敵役・天魔王を演じる早乙女友貴は、兄弟ならではの丁々発止トーク。
友貴が「殺陣は当てに行くくらいの気持ちで」と言うと「おまえは鎧があるからいいかもしれないけど」と太一がツッコむ場面も。そんな2人の殺陣を稽古場で見るのが楽しみと語ったのは山口。
また「役者を目指すきっかけになった作品といっても過言ではない」と言う塩野瑛久など、初出演組は髑髏城への愛を目いっぱい披露。終始、笑いと気合があふれる会見となった。
2026年劇団☆新感線46周年興行・冬公演
いのうえ歌舞伎『髑髏城の七人 LAST STAND』
2026年11月14日(土)東京・新橋演舞場の初日公演を皮切りに、長野、金沢、大阪で公演予定。1990年『髑髏城の七人』初演から36年、過去11バージョンを上演してきた本作は劇団☆新感線としては最後の上演。これまで培ってきた集大成と、若いキャストによる新しい『髑髏城の七人』に期待。
取材・文/今井ひとみ
やまぐち・まきや 1973年岡山県出身。学生時代は洋画を学び、卒業後に役者を目指す。1998年日中合作映画『戦場に咲く花』(監督・蒋欽民)でデビューし、2000年『三人姉妹』(演出・蜷川幸雄)で初舞台、同年の映画『雨あがる』から時代劇を学ぶように。2024年には 自主制作映画 『侍タイムスリッパー』で初主演を務め、同作品は日本アカデミー賞受賞の大ヒット。舞台、映像、大河ドラマへの出演と活躍の幅を広げている。
