大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)の長宗我部元親を演じる[Alexandros]の磯部寛之につづき、今期ドラマ『LOST10』(TBS系)では、小児科医役を演じるKing Gnuの井口理の好演が話題。このように実はロック界には俳優としても活躍する実力者が少なくない。
そこで週刊女性は、30~60代の男女500人に「『演技派』だと思うロックミュージシャン」を調査。トップ5の魅力を、ドラマ通のコラムニスト・小林久乃さんに聞いた。
芝居への真剣な向き合い
5位は、ARBのボーカルだった石橋凌。映画『キッズ・リターン』のヤクザの組長役など鋭い眼光と重厚な存在感が記憶に残る。
「渋い演技と声が秀逸、しびれます」(兵庫県・68歳・男性)、「映画『ア・ホーマンス』での演技が好き」(福岡県・59歳・男性)と、声や佇まいだけでなく、過去の出演作を挙げる人も。小林さんが注目するのは、組長役とはまた違う格式を感じさせる魅力だ。
「お金持ちや社長の役が似合うんですよね。『やんごとなき一族』(フジテレビ系)では、名家のトップである父親役。ミュージシャン出身で、あそこまで高貴なイメージをつくれるのは見事ですね。昔から、ひとつ上の立場にいるような雰囲気があります」(小林さん、以下同)
同作で演じたのは、一族を支配する当主・深山圭一。息子の結婚にも口を出す威圧感と、名家の主らしい風格。その両方を感じさせるのが石橋だ。
4位はGACKT
4位は、MALICE MIZERなどで活動してきたGACKT。
「映画『翔んで埼玉』の印象が強い」(岩手県・52歳・男性)、「演じている姿を見て本気でやっているのがわかる」(北海道・43歳・女性)と票を集めた。『翔んで埼玉』で演じるのは美貌の高校生・麻実麗。漫画から抜け出したような姿と、荒唐無稽な世界での大まじめな演技が笑いを誘う。
「GACKTさんなら、やっぱり『翔んで埼玉』を見てほしいですね。ぶっ飛んだことも、きっと真剣にやっているんだと思います」
そんな表現を支えるのが、徹底したストイックさだと小林さんは話す。
「強い印象を残す演技をするにはストイックさが必要です。GACKTさんは1日1食を続けていて自分のスタイルを崩さないし、音楽と俳優業の両方で成功している。さらに今も進化しているのがすごいですね」
独特の美意識を貫きながら、観客を笑わせることにも全力。非日常的な存在感も、役柄の説得力につながっているようだ。
3位は杉本哲太
「演技がうますぎて歌手だったとは知らなかった」(東京都・52歳・女性)
そんな驚きの声が寄せられた3位は、杉本哲太。紅麗威甦(グリース)でデビューしたバンドマンだが、今では俳優としての顔がすっかりおなじみだ。
「いい人から情けない人、犯人までやれるのがすごい」(京都府・49歳・女性)という回答にもあるように、持ち味は役柄の幅広さ。朝ドラ『あまちゃん』(NHK)の駅長・大吉を思い出す人も多いだろう。
一方、小林さんは『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系)の、集団の中で勝手な行動をする乗客役を挙げる。
「嫌な役もやるし、コミカルな役も父親役もヤクザ役もできる。表現力がオールマイティーなんです。『救命病棟24時』(フジテレビ系)でも、主役の脇にいるのに妙に存在感がありました」
遠藤憲一、大杉漣さんら名脇役たちが集う『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)になぞらえて、「もし今、新たにメンバーを集めるなら、杉本さんはその中心になるような人だと思います」とも。主役でなくても見終わると記憶に残っている、頼もしい名脇役だ。
2位は陣内孝則
2位は、ザ・ロッカーズのボーカルとしてデビューした陣内孝則。
「どちらかというと俳優のイメージのほうが強い」(大阪府・55歳・男性)、「見ていたドラマや映画のどれでも役をこなしていると思っていた」(大阪府・53歳・女性)という声のほか、大河ドラマ『軍師官兵衛』(NHK)の宇喜多直家役を推す人も。トレンディードラマから時代劇まで、強い個性で作品を彩ってきた。
「音楽の感性を持ったまま、コミカルな方向にも進んだ人ですね。演技だけでなく、司会もできる。俳優はバラエティーに出ない、というような空気を変えてくれた存在だと思います」
お茶の間を楽しませる柔軟さは、素顔にも通じるという。
「ご自身のキャリアまでギャグにしてしまえるし、徹底的に腰が低い。そういうことができる人は、なかなかいません」
小林さんの記憶に強く残るのは『ストーカー・誘う女』(TBS系)。ストーカーに追い詰められる会社員を演じた作品で、強烈な演技に、つい何度も見返したという。「疲れて気持ちを切り替えたいときにどうぞ」と、忘れがたい一作に挙げた。
堂々の1位は吉川晃司
堂々の1位は、布袋寅泰とのユニットCOMPLEXでも活躍した吉川晃司。
「クールな佇まいで存在感がある」(岩手県・69歳・男性)、「白髪を生かした渋い演技が似合う。『下町ロケット』(TBS系)の役がカッコよかった」(東京都・41歳・男性)と支持された。
大河ドラマ『天地人』の織田信長役、『八重の桜』(共にNHK)の西郷隆盛役を挙げる回答もあり、その迫力は時代劇でも光る。
「吉川さんは、生活感がまったくないんですよね。それがミステリアスな役柄にも通じているのだと思います。白髪も生かしながら、若いころからの硬派なイメージを崩さずに、ここまできたのが素晴らしい」
小林さんのおすすめは、朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK)の大河内教官。厳しく学生を指導する“
鬼教官”役も、吉川ならではのハマり役だった。
「あのスタイルを維持するために、どれだけ努力しているのか。そこも興味深いですね」
ステージでもドラマでも、硬派な魅力を貫く。その揺るぎない姿が、最多得票につながったようだ。
長く第一線で活躍する5人。その魅力の共通点を、小林さんはこう語る。
「音楽にも演技にも必要なのは、感性と表現力。自分をどう見せるかをわかっていることも、皆さんに共通する強みだと思います」
歌手だったとは知らなかった人も、昔からのファンも、その演技にロックミュージシャンの片鱗を探してみては。
<取材・文/西野風代>
