Mrs.GREENAPPLE

「憧れは いつだって 私がシンデレラ」

 フランスの詩人シャルル・ペローや、ドイツの童話作家グリム兄弟によって語り継がれてきた世界的な名作『シンデレラ』。こと日本においては、ディズニープリンセスのひとりとして親しみを抱く人も多いだろう。

ミセス『シンデレラ』の設定が物議

 10月23日、人気ロックバンド『Mrs. GREEN APPLE(以下、ミセス)』が同タイトルの楽曲MVを公開。幼い頃、シンデレラに憧れを抱いていた少女が大人になり、理想とかけ離れた現実の狭間で葛藤する姿が描かれていた。

 映像は少女期・高校生・大人の3つの時間軸で構成されているが、もっとも多くの尺を割いているのが大人のパートだ。キャバクラ嬢として働き、“同伴”と思しき場面やスーパーで割引の惣菜を買う姿が映し出されているが、この設定が物議を醸している。

「“なぜ主人公がキャバ嬢なのか”という声が上がっているのです。本作は夢と現実のギャップを描き、他人への妬みや嫉妬に囚われていた主人公が、最後は“今の自分を愛する”という自己肯定に着地するストーリーだとみられています。実際にそのような受け取り方をしている視聴者が多い印象です。

 ただ、こうしたストーリー仕立てならば、わざわざ“夜職”を選ぶ必要はあったのでしょうか。“パパ活”を想起させるようなシーンもありますし、社会の荒波にもまれ、思うようにいかない日々を描きたかったのであれば、あえて“夜職”を選んだ意図が伝わりづらいのです」(音楽ライター、以下同)

物議を醸して『Mrs.GREENAPPLE』の楽曲『シンデレラ』(公式Xより)

 波紋を広げているのは職業設定だけではない。MVにはディズニーさながらの画風で作られたアニメーション映像も挿入されており、この演出に対して、ネット上では、

《ディズニーに楽曲提供してるグループがディズニー作品の王道のシンデレラって名前の曲作るかつ夜職をモチーフにしたMVは無くない?》
《なんで夜職の人題材にしたの…》
《これがディズニーとコラボした奴らの考えるシンデレラなのかぁ…》

 と、疑問の声が噴出。

 中には、

《ちょっと子供には見せられないmvだった。 ミセスもそっち路線行っちゃうのね》

 という意見も見られた。

「“著作権問題に発展するのではないか”という見方があるほど、明らかにディズニーを意識したアニメーションになっています。ミセスは日本人アーティストとして初めて楽曲提供を行うなど、ディズニーとの縁が深いバンドです。そうした背景がある中で、なぜシンデレラ風のアニメと夜職という要素を掛け合わせたのか、首をかしげる視聴者が続出しています。

 ミセスファンには若年層も多く、小中学生の子どもたちもいることでしょう。MVの少女と同様にディズニープリンセスを夢見る子どもたちもいるのではないでしょうか。MVの設定上、“子どもに見せたくない”という意見が挙がるのも無理はないはずです」

「倫理観やばいな」思い返される過去の炎上劇

 今回の騒動を受けて、視聴者の間では、

《コロンブスの時も思ったけど本当に倫理観やばいな これまた止める人いなかったの??》
《コロンブスの時といい、なんでこんな倫理観のグループが人気なん》

 と、記憶に新しい“あの騒動”を想起する声も少なくない。

ディズニーランドの『ベイマックスのハッピーライド』でオリジナル楽曲が流れるMrs.GREENAPPLE(ディズニー公式サイトより)

「2024年6月に公開された楽曲『コロンブス』のMVを巡る炎上劇のことでしょう。同MVでは歴史上の偉人に扮したメンバーが、孤島で類人猿と遭遇し、ピアノや乗馬を教えるという演出がなされていました。これが“植民地主義や人種差別を助長している”と猛烈な批判を浴び、公開からわずか1日足らずで動画が非公開に追い込まれたのです。

 今回の『シンデレラ』は人権問題に直結するものではありませんが、“自分たちの表現がどのような層に届き、どう受け取られるか”という想像力の面で、再び疑問が投げかけられている状況です」(前出・音楽ライター)

 批判が上がる一方で、一定の評価も得られており、賛否が二極化している『シンデレラ』MV。受け手次第で意見はさまざまだが、社会的な影響力を持つ国民的バンドだからこそ、その表現に対する世間の目は一層シビアになっているのかもしれない。