「燃えたよ…まっ白に…燃え尽きた…」
孤独な不良少年・矢吹丈がボクシングの世界に飛び込み、ライバルたちとの死闘を繰り広げる名作漫画『あしたのジョー』。冒頭の丈のセリフは日本中で広く知られ、同作をきっかけにボクシングを始めたという人も少なくないだろう。
『あしたのジョー』漫画家・ちばてつやさんの訃報
日本の漫画界・ボクシング界にも多大な貢献をした伝説漫画『あしたのジョー』の作者・ちばてつやさんが、10月22日に亡くなっていたことがわかった。27日、自身の半生を描いた『ひねもすのたり日記』を連載していた『ビッグコミック』の公式サイトでちばさんの訃報が伝えられた。そこでは妻の幸子さんのコメントが寄せられており、
《87年の生涯を現役として、画業70年の長期に渡り、数多くの読者の皆様にご支持頂けましたことは、漫画家として本当に幸せな人生でした》
と、ちばさんに代わり、関係者や読者らに感謝の言葉を伝えていた。
「葬儀は家族葬ですでに執り行われており、ご弔問・ご供花等は辞退されたといいます。小学館のコミック局は哀悼の意を表しつつ、『お別れの会』について、《現在開催に向けて検討しております。詳細が決まり次第、あらためてお知らせいたします》とのこと。
70年にわたり、第一線で活躍してきたちばさんのファンは数えきれません。大先生でありながら、その親しみやすい性格や“深い人間愛”が感じられ、ちばさんを慕う同業者も多かったです。戦後から今日に至るまでの漫画界への貢献は未来永劫語り継がれることでしょう」(漫画ライター、以下同)
2024年には漫画家として初めて“文化勲章”を受章したちばさん。受章にあたっては、「漫画が文化の一つに加えられたことを、手塚さんも喜んでいると思う」と話していた。
「今となっては、日本を代表し、世界からも認められている“文化”の漫画ですが、手塚治虫さんが描かれた『新宝島』などの創成期(1940年代後半~1950年代)ごろは“悪書”として燃やされていたといいます。
虐げられ、苦悩を重ね、それでも諦めなかった偉人たちがあって、いまの漫画文化が成り立っているわけです。手塚さんはちばさんの10歳年上にあたります。文化勲章を受章してもなお、先輩方への敬意を忘れないちばさんの姿勢には感服しましたね」
映画『あしたのジョー』への想い
漫画界の礎を築いたちばさん。2011年には代表作『あしたのジョー』の映画化が実現。主演の矢吹丈役を山下智久が、ライバルの力石徹役は伊勢谷友介が演じた。ちばさんは本作について、「心配で眠れなかった」と複雑な思いを抱いていたという。
「舞台のセットには満足していた様子だったそうですが、完成品を見るまでは安心できなかったといいます。これまで数々の実写化映画がコケていますし、漫画の世界観を現実世界に落とし込めるのか、不安があったのでしょう。
しかし、いざ完成品を見ると、“山下さんと伊勢谷さんはジョーと力石そのものでした。二人が殴りあうシーンはすごい迫力でした”と絶賛し、“私の原作を超えていました”とまで評したのです。それでだけでなく、映画に触発され、約40年ぶりに同作の名シーンを描き起こしたといいます。俳優やスタッフ陣にリスペクトを送りつつ、向上心まで忘れない。伝説の漫画家である理由が垣間見えたと思います」
その功績や貢献度にあぐらをかくことなく、2020年に社会現象を巻き起こした漫画『鬼滅の刃』もチェックし、現代漫画からも学ぶ姿勢を見せていたというちばさん。
今回の訃報についてネット上では、
《お悔やみ申し上げます… 素晴らしい作品を世に出してくださりありがとうございました》
《涙、涙、涙 漫画家の先生がお亡くなりなって 泣いたのは初めてだ》
《15年前の高校時代に見たあしたのジョーで自分の人生を変えるきっかけになった、御冥福をお祈りします》
と、悲しみや感謝の言葉が溢れていた。
日本のカルチャーを生み出したレジェンドの旅立ち。生涯をかけてペンを握り「まっ白に燃え尽きるまで」走り続けたその偉業は、これからも色褪せることはないだろう。
