興収200億円を突破し、実写邦画の歴代記録を塗り替えた映画『国宝』。その圧倒的なヒットに、同じ年に作品を公開した業界関係者たちも「早くいなくなってくれないかな(笑)」と冗談交じりに本音を吐露する始末。なぜこれほど多くの観客を惹きつけ、映画界を驚かせたのか。異例の興行成績とヒットの背景を探る。
『国宝』の快進撃に二宮和也もうんざり
「今年、国宝がなかったらなぁ」「早くいなくなってくれないかなぁ(笑)」
そんな冗談が飛び出すほど、映画『国宝』の存在は大きかった。同じ年に作品を公開した業界人たちにとって、興行収入を伸ばし続ける同作は、意識せざるを得ない存在だったようだ。
この率直な思いを明かしたのが、嵐の二宮和也。10月27日、第39回東京国際映画祭の提携企画として開催されたケリング「ウーマン・イン・モーション」トークに登壇し、『国宝』の歴史的ヒットについて語った。
二宮は同じ年に映画を公開した関係者たちが「今年、『国宝』がなかったらな」と話していたと振り返り、「『国宝』、早くいなくなってくれないかな」というくらいの存在だったと冗談交じりに明かした。
その一方で、「あんなにも日本映画が日本映画を食っていく年というのは、あまりなかったんじゃないかな」と分析。俳優たちも同作を鑑賞し、「作品に参加したかった」と思わせるほどの映画だったと、その魅力を称えた。
では、同業者たちがそこまで意識する『国宝』とは、どれほどのヒット作だったのか。その答えは、実写邦画の歴史を塗り替えた興行成績に表れている。
22年間の記録を更新
吉沢亮が主演を務め、横浜流星、渡辺謙らが出演した本作は、2025年6月6日に公開。吉田修一氏の同名小説を原作に、歌舞伎の世界で芸を極めようとする男の50年にわたる人生を描いた作品だ。
配給元の東宝が2026年2月16日に発表したところによると、公開255日間で観客動員数1415万2409人、興行収入200億851万9000円を記録。実写邦画として初めて興収200億円を突破する快挙を成し遂げた。
「『国宝』のすごさは、200億円という数字だけではありません。実は、その道のりも異例なんです」
そう話すのは、ある映画ライター。
「2025年11月には、2003年公開の『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』が約22年間守ってきた興収173億5000万円の記録を更新。実写邦画の歴代1位に躍り出ると、そこからさらに数字を伸ばし、200億円の大台に到達しました」
アニメーション映画や洋画も含めた国内の歴代興収ランキングでも、2026年2月時点で『ハウルの動く城』の196億円を上回り、現在は8位にランクインをしている。文字通り、実写映画の枠を超えたヒットとなった。
「歌舞伎という伝統芸能を題材にした175分の大作が、これほど多くの観客を惹きつけたこと自体、注目に値します。俳優たちが体現する伝統芸能の厳しさや、そこに人生を懸ける人間のドラマが、歌舞伎に詳しくない人にも届いたのでしょう。
口コミで評判が広がり、公開から時間がたっても観客を集め続けたことが、記録的な興行成績につながったのではないでしょうか」(前出、映画ライター)
大ヒット作が生まれれば、映画館に足を運ぶ観客が増える一方、同じ時期に公開される作品にとっては、比較される対象にもなる。二宮の「早くいなくなってくれないかな」という言葉には、同業者だからこそ感じる率直な思いが滲んでいた。
スケールは大きくなり世界へ
『国宝』の快進撃は、国内の興行成績だけにとどまらない。2025年12月には、ハリウッドスターのトム・クルーズが米ロサンゼルスで特別上映会を主催。上映前のスピーチで「本当に並外れた作品」「大スクリーンで観るべき、非常に特別な映画」と称賛した。
2026年3月に発表された第98回アカデミー賞では、日本映画として初めてメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネート。受賞こそ逃したものの、歌舞伎の女形を演じるための白塗りやかつらなど、専門的な技術も国際的に評価された。
「『国宝』の強みは、歌舞伎という日本独自の題材を扱いながら、役者の人生や芸に懸ける執念といった普遍的なテーマを、映像と演技力で見せ切ったところにあると思います。
興行収入の記録更新に加え、海外の著名人からの評価やアカデミー賞ノミネートまで実現したことで、国内のブームにとどまらない作品として認識されるようになり、同業者もその存在を意識せざるを得なかったのだと思います」(前出、映画ライター)
同じ年に作品を公開した映画人たちが、思わずうんざりするほどの存在感。それは裏を返せば、『国宝』が日本映画の歴史を塗り替え、映画界に大きなインパクトを残したことの証しなのかもしれない。
