RADWIMPSの野田洋次郎

 ロックバンド『RADWIMPS』が10月28日に配信リリースした新曲『娑婆堕罵 -Shabadaba-』が、政治や社会を風刺する歌詞で注目を集めている。

 権力や世襲政治などを連想させる鋭い言葉に、SNSでは「アーティストらしい抗議」「棘があっていい」と反響。さらに、楽曲のメッセージを打ち出す広告の掲出場所にも驚きの声が上がっていて……。

政治の中心地に挑発的な広告

 今回、広告が掲出されたのは、東京メトロの国会議事堂前駅、霞ケ関駅、永田町駅の3か所。いずれも政治の中枢に位置する駅だ。

 広告は赤と黄色を基調としたインパクトのあるデザイン。複数のビジュアルが展開され、中央には《君の倫理 大丈夫そ?》という挑発的なコピーが大きく配置されている。さらに、歌詞を思わせる文章がびっしりと並んだポスターもあり、通行人の目を引く仕上がりだ。

国に対してなのか…新曲リリース直後に挑発的な文言を投稿した野田洋次郎(本人のXより)

 今回の新曲は、政治や社会への不信感をにじませた内容。国や権力を皮肉る表現に加え、世襲政治や政治とカネを連想させるようなメッセージも盛り込まれている。直接的な言葉で社会の矛盾を突きつけるような楽曲に、SNSでは

《アーティストらしい抗議》
《こういう棘のある表現があっていい》
《この場所に広告を出すことも含めて、覚悟の上での発表なんだろうな》

 といった趣旨の反応が広がっている。なかには、国会議事堂前駅など政治の中心地に掲出されたこと自体に驚き、《即刻撤去されないということが奇跡に近い》と、その大胆なプロモーションに注目する声も。

 政治批判を含む楽曲を発表するだけでなく、そのメッセージを届ける場所まで徹底しているところに、今回のRADWIMPSの攻めた姿勢がうかがえる。

「今回の曲は、単に政治家や国のあり方を批判するというよりも、権力を持つ側と、そこで暮らす人々との不均衡に目を向けている印象です。普段なら音楽の中に包み込むような怒りや違和感を、かなりストレートに表現している。

 しかも、政治の中心地に広告を掲出することで、楽曲のメッセージとプロモーションが一体になっています。ここまでやるのは、アーティストとしての表現に対する自信もあるのでしょう」(音楽ライター)

ドラマ制作陣が求めた「尖った曲」、野田洋次郎が込めた怒り

 実は今回の楽曲は、石原さとみが主演を務めるフジテレビ系水ドラマ『ポリティカルパン』の主題歌でもある。

 同作は、架空の国・ニッポニアを舞台に、石原演じる女ルパンこと如月弥生が政界に潜り込み、不透明な政治資金を奪い取ろうとする怪盗エンターテインメント。金と欲望が渦巻く政治の世界を、社会風刺とエンターテインメントを掛け合わせて描く作品だ。

RADWIMPSの政治や社会を風刺する歌詞で注目を集めている新曲『娑婆堕罵 -Shabadaba-』。あえて?国会議事堂前駅に出された広告

 脚本を手がけるのは、『アンナチュラル』や『MIU404』などで知られる野木亜紀子氏。石原と野木氏が約8年ぶりにタッグを組むことでも話題になっている。

 主題歌の制作にあたり、野木氏とプロデューサーの北野拓氏から野田洋次郎には「既存のドラマ主題歌という概念をぶっ壊すような曲、トガりまくった曲がほしい」という挑戦的なオファーがあったという。

 これを受けた野田は「メラメラと燃えながら曲作りに挑みました」と振り返り、「内に巣食う苛立ちや憤りをガソリンにして作り上げました」と制作時の心境を明かしている。

 完成した楽曲について、野木氏も「『尖った曲』というオーダーに想像の三倍尖った」とコメント。さらに、皮肉に満ちながらも愛がにじむ楽曲だと評価し、作品にぴったりの主題歌になったと喜びを示した。

「政治の不透明さや権力構造を題材にしたドラマだからこそ、主題歌にも予定調和ではない刺激が求められたのでしょう。同作は、政治という一見堅いテーマを“怪盗劇”として描くことで、視聴者が普段は距離を感じがちな問題にも目を向けられるようにしています。

 そこに、耳当たりのいいだけの楽曲ではなく、聴く人に違和感や問いを残すRADWIMPSの音楽が加わった。ドラマの世界観と主題歌が、同じ方向を向いていることが特徴的です」(ドラマライター)

 RADWIMPSといえば、2018年に発表した楽曲『HINOMARU』が、国への愛着や誇りを表現した歌詞をめぐって賛否を呼んだことも記憶に新しい。かつては愛国的な表現が議論を呼んだバンドが、今度は政治や権力への痛烈な風刺を打ち出したことも興味深い。

「政治をテーマにした音楽は、受け取り方によって賛否が分かれやすい。それでも、誰かに嫌われないことを優先して当たり障りのない表現にまとめるのではなく、あえて反発も想定したような言葉を選んでいる。

 今回の広告も含めて、作品の世界観を貫こうとする意志が感じられます。ドラマの主題歌という枠に収まりきらないメッセージ性も、今回の楽曲の大きな特徴ではないでしょうか」(前出・音楽ライター)

 政治の中枢に突きつけられた《君の倫理 大丈夫そ?》という問い。ドラマの世界だけでなく、現実の社会にも波紋を広げそうだ。