親離れ、子離れ─。いつの時代も議論されるこの問題だが、最近の親子の関係性は、より緊密なものになっているように感じる。親のあり方、子のあり方。はたして、どちらがどう変わってきたのか? いったいなぜ変わってきたのか? 現代のリアルな親子関係を緊急レポート! 次は「小中学生」編。

好奇心を揺さぶるたくさんのものが消えていく

 すでに親たちの介入は、子どもがより小さなときから始まっている。

 大学4年の娘がいる主婦・山本美和子さん(仮名=49)によれば、

「娘が卒業した中学校では、修学旅行の親同伴が当たり前になっているそうです。同行を希望する親たちは、バスや宿泊する部屋は違うものの、出かける観光地やホテルは子どもたちとすべていっしょ。修学旅行ならではの、親元を離れてちょっぴりハメをはずす……なんて楽しみはなさそうです。しかも、“どうしてうちはママが来れないの? 友達のところはみんな来るのに”なんて、文句を言われてしまうんだとか」

なじみのある遊具は消えつつある。滑り台も危険とされ1メートルほどの長さしかない公園も
なじみのある遊具は消えつつある。滑り台も危険とされ1メートルほどの長さしかない公園も

 今の小中学生には、たくさんの規制がかけられている。しかし、安全を優先するあまり世界が狭まっている危険性について、子どもたちはもちろん、親のほうさえ気づいていないのかもしれない。

 例えば、子どもが遊ぶ場所である公園。もともと設置されている遊具が、危ないからという理由で、どんどん使えなくなってきている。高校3年生の娘、小学3年生の息子、年長の娘を持つ島田佳苗さん(仮名=48)はこう語る。

「私も旦那も地元にずっと住んでいて、同じ小学校に通っていました。今は息子がその小学校に通っています。私たちが学校に通っていたころからある、町が運営している公園があって、そこが小学生の遊び場でした。私たちのころから使われている大きなブランコや、ジャングルジムも、昔のままでしたね。

 でも、ちょうど娘が小学校にあがったくらいに、公園の遊具が転倒し、子どもがケガをするというニュースが続いて。“危険なのでは”という声があがり、いくつかの遊具が使用禁止になりました。今は、シーソーと、ひとり乗り用のブランコくらい。あとはお年寄り向けの運動できる遊具みたいなものがいくつかあります。確かに古いものですし、ケガをされるのは困るので反対はしません。でも、子どもたちが遊べなくてちょっとかわいそうかも」

 親の声の大きさによって、子どもたちの前から消えてしまったものは、ひとつだけではない。

昆虫ノートは保護者からの「気持ち悪い」という声で消されてしまった
昆虫ノートは保護者からの「気持ち悪い」という声で消されてしまった

 ノートの老舗・ショウワノート株式会社が販売している『ジャポニカ学習帳シリーズ』。ノートの王道だが、表紙に昆虫の写真を用いたものが、’12年を境に廃番になっていたのだ。

「アフリカ編、ヨーロッパ編など、その土地にいる動植物や昆虫をテーマにしたシリーズです。そのなかの昆虫のものについて、10年ほど前から“気持ち悪い”や“怖い”というようなお声が寄せられるようになりました。徐々に冊数を減らし、現在は生産しておりません。今後については未定。しかし、こういった声がある以上、個人的には難しいのではないかと思います」(ショウワノート広報部)

 子どもたちが大人になるまでに好奇心を揺さぶるたくさんのものが、彼らの“世界”から消えてしまうかもしれない。