前代未聞のサイバーテロが、ネット社会を揺るがしている。
事の発端は10月21日、GMOインターネットグループが手がけるFX自動売買向けサービス『お名前.com デスクトップクラウド』がサイバー攻撃を受けたことだった。
攻撃者がGMOの“顧客情報”を人質に声明
同社は緊急メンテナンスとしてサービスを停止し、顧客のログイン情報などが外部へ不正流出した可能性があると公表。
しかし、事態はこれで収まらなかった。
“攻撃者”を名乗る人物から、約80億円相当もの暗号資産を要求する脅迫メールが送りつけられる。
同社は即座に警察へ相談したものの、犯人側は要求額を約1億6000万円へと引き下げたうえで、10月27日から毎日正午に顧客情報を公開していくとの新たな声明を発表。
迎えた27日正午、予告どおり顧客1人分とされる個人情報がネット上に晒された。
同社は被害を受けた顧客への見舞金制度や、犯人逮捕につながる有力情報への懸賞金制度を矢継ぎ早に打ち出し、翌28日未明には犯人側の情報公開サイトが閲覧不能に。
事態は収束を見せたかに思えたが、予想だにしない別の形で炎上を巻き起こす。犯人が晒したサイトをわざわざ見に行き、被害者の個人情報にモザイク処理を施したスクリーンショットをX上にアップするユーザーが続出したのだ。
こうした動きに対し、GMO側の公式SNSアカウントは28日、流出サイトへの直リンクを貼ったり、閲覧を煽ったりしているアカウントへ向けて異例の「削除要請」を送付。
悪質なケースに対しては、発信者情報開示請求や刑事告訴を含めた法的措置を辞さないとの構えを見せた。
GMOの対応に意見真っ二つ
この運営側の対応に、ネット上は真っ二つに割れて紛糾。
《モザイクをかけて隠してるのに、それでも煽動扱いされるの?》
《調べたら誰でもわかる一次情報を共有して、個人的な感想を言ってるだけなのに》
《事実を伝えるアクション自体はおかしくないはず》
と反発する声が上がる一方で、
《そんな危険なサイトがあるってわざわざ宣伝してるのと同じ。見に行く野次馬が増えるんだから削除要請は当然》
《人の流出データを面白半分でおもちゃにする神経が信じられない》
と、投稿主たちを糾弾する声も相次ぐなど、議論は白熱の一途をたどっている。
はたして「モザイクをかけた画像」や「外部サイトのリンク」を拡散しただけでも、法的なペナルティーを受けることになってしまうのか。
アディーレ法律事務所の南澤毅吾弁護士に話を聞いた。
「他人の氏名や住所といったプライバシー情報をみだりに公にする行為は、民事上の不法行為に問われる可能性が十分にあります。元の投稿をリポスト(拡散)しただけでも、内容に賛同したと受け取られるケースがあるのです。“拡散するつもりはなかった”と言い逃れをしようとしても、過失が認められれば損害賠償責任を免れません」
もちろん転載した事実だけで、即座に刑事罰が科されるわけではなく、個別の悪質性によって判断されるという。
モザイクで個人が完全に特定できないよう配慮し、正当な報道や解説を目的とする場合は違法とまでは言えないケースもあるが、「モザイクさえかければ絶対にセーフ」という免罪符にはならない。
「削除要請」が届いた場合の正解
もし、自分のアカウント宛てに、運営企業から「削除要請」が届いたら、どう立ち回るのが正解なのか。
「まずは、要請に従って速やかに投稿を消すことが賢明でしょう。もちろん削除したからといって過去の行為がチャラになるわけではありませんが、警告を無視して放置し続ければ“うっかり拡散してしまっただけ”という釈明すら通用しなくなります」(南澤弁護士、以下同)
企業側が「悪質」と指弾したこと自体が、そのまま法的な有罪を意味するわけではない。しかし、危険なのは晒されてしまった被害者本人からの反撃だという。
「リンクの共有やリポストであっても、結果として被害拡大に加担したと判断されれば、情報を晒された当人からプライバシー侵害で損害賠償を突きつけられるリスクが現実味を帯びてきます。たとえ『被害の深刻さを世間に伝えるため』という大義名分を掲げていたとしても、結果として二次被害を広げてしまっては元も子もありません」
《知らなかった》《みんなやってるから》では済まされないネット社会の落とし穴。
よかれと思った注意喚起が、気づけば誰かの人生を傷つけ、自分自身に莫大な賠償金として跳ね返ってくるかもしれない。
もし警告が届いたなら、反論する前に、まずは冷静に自分の投稿内容を見つめ直す必要がありそうだ。
