千葉県の市川市動植物園で暮らすニホンザルのパンチくん。母親代わりのオランウータンのぬいぐるみに寄り添う姿が人気を集めてきたが、そんなパンチくんを題材にした初の書籍が、発売前から異例の反響を呼んでいる。9月の予約開始直後からネット書店では売り切れが相次ぎ、海外からも購入を望む声があり……。
完売と在庫復活を繰り返す異常事態
11月26日に発売予定の『がんばれ パンチ 子ザルの成長物語』(Gakken)は、予約受付の段階からネット書店で品薄状態に。学研の公式ブログによると、9月17日には「想定を上回るご予約」を受け、予約者への確実な配送を優先するため、一時的にネット書店での予約受付を停止したという。
その翌18日には受付を再開したものの、24日には再び予約をストップ。予約開始からわずか1週間ほどの間に、停止と再開を繰り返す事態となった。
SNS上でも発売を心待ちにしていた人たちから、
《予約できなかった悲しい》
《予約再開待ってます!》
《17日午後5時25分時点ですでに売り切れ泣》
といった落胆や再販を待ち望む声が続出。発売決定の知らせを受けてすぐに予約しようとしたものの、手に入れられなかった人も少なくなかったようだ。その反響は国内だけにとどまらない。
《アメリカでも売ってくれるといいな》
《日本国外に住む人たちにも買えるようにしてほしい》
など、海外からも購入を希望する声が上がっているのだ。こうした反響を受け、Gakkenは10月9日、予約完売が相次いだとして発売前の初刷部数を大幅に増やすことを発表。楽天ブックスなどのネット書店でランキング1位を獲得するなど、発売を前に増刷が決まるほどの人気ぶりとなっている。
今回発売される書籍は、市川市動植物園の全面協力のもと、パンチくんのこれまでの歩みを一冊にまとめたもの。単なる写真集ではなく、写真、飼育員が語る成長物語、ニホンザルの生態図鑑という3つの内容で構成されている。
注目は、飼育員が撮影した1万枚以上の写真から厳選されたパンチくんの姿だ。母親代わりのオランウータンのぬいぐるみ「オランママ」にしがみつく様子はもちろん、サル山の群れに入った後、ほかのサルたちと遊ぶ姿なども収録。飼育員だからこそ撮影できた貴重な写真が並ぶ。
「公開された誌面の一部には、ぬいぐるみのそばにちょこんと座るパンチくんや、ふわふわの毛に顔をうずめて、ぎゅっと抱きつくような姿も。小さな体で大きなぬいぐるみに寄り添う様子は、思わず頬が緩んでしまうかわいらしさ満載です。
また、飼育員が語る成長物語は、画家・イラストレーターのおちょぴさんによる絵を交えた絵本調で紹介。生まれてからサル山で群れの一員として過ごすようになるまでの歩みを、やわらかなタッチで振り返ることができ、写真だけでは伝わりにくい日々の歩みも、温かみのある形で楽しめるのではないでしょうか」(動物ジャーナリスト)
人気の背景にあるパンチくんの成長物語
動物学者の今泉忠明氏が監修する生態図鑑も収録。誌面では「ニホンザルのからだ」と題し、目や耳、口、頬袋といった体の特徴を解説している。野生での暮らしや食べ物についても触れられており、サルの生態を身近に感じられる内容だ。
成長過程を紹介するページでは、生まれたばかりの体重約500グラムから、生後1か月で約800グラム、生後半年には約1.7キロになるまでの変化も写真とともに掲載。赤い顔をした赤ちゃんザルが、少しずつ動き回り、仲間と遊ぶようになるまでの成長がわかる。
サル山の一日の過ごし方や、群れの中で守られているルールなども紹介されるため、パンチくんのファンだけでなく、ニホンザルについて学びたい人にも興味深い一冊となりそうだ。
「パンチくんの人気は、単にぬいぐるみを抱きしめる姿がかわいいというだけではないです。人工哺育で育ち、母親代わりのぬいぐるみを心のよりどころにしながら、少しずつサル山の仲間との関係を築いていく。その過程を多くの人が見守ってきたからこそ、成長の記録を手元に残したいという気持ちにつながっているのでしょう。
動物の写真には、その瞬間のかわいらしさだけでなく、成長の過程や命の営みを伝える力があります。今回の本も、パンチくんを応援してきた人にとって、これまでの歩みを振り返る大切な一冊になるのではないでしょうか」(前出・動物ジャーナリスト)
パンチくんの姿を写真で楽しむだけでなく、ニホンザルという動物についても理解を深められる今回の書籍。予約段階から品薄となり、発売前の増刷まで決まった背景には、パンチくんの成長をこれからも見届けたいという多くの人の思いがありそうだ。
