11月2日、高知県の春野総合運動公園野球場で中日ドラゴンズ秋季キャンプがスタートした。平日にも関わらず多くのファンが選手を見守ったが、最も注目を集めたのはやはり工藤公康新監督だった。
キャンプの様子は、中日ドラゴンズ公式YouTubeでもライブ配信されたのだが、特に投手陣が練習する施設内のブルペンが映し出されると1万人以上の視聴者が釘付けに。登場したのはもちろん工藤監督だ。
横一列に6人が並んでピッチングする一人一人に身振り手振り、時に自ら投球フォームを披露して指導する工藤監督。当初は緊張した面持ちだった選手らも、柔和な態度で接する監督に絆されたのか、次第に笑顔で頷き、自ら助言を求める姿も。
施設外では多くのファンも見守った新監督の熱血指導だが、独壇場のブルペンには、井上一樹監督時代より指導にあたってきた山井大介1軍投手コーチ、田島慎二2軍投手コーチ。そして新入団の吉見一起投手コーチの姿もあった。
工藤監督登場でコーチ陣が“地蔵化”
それぞれが手を前で組んで選手と一緒になってアドバイスを聞いていたり、腕を組んで他の投手に目配せをしたり、データファイルを両手に抱えて行ったり来たりと、とにかく工藤監督と選手たちを見守る投手コーチスタッフ。構うことなく積極的に“工藤流”の投球技術を授ける監督と、それに従って投げ込む投手陣だった。
するとライブ配信の動画コメント欄では、監督直々の指導に投手陣の覚醒が期待される一方で《コーチは見てるだけ》《地蔵になってるな》などと、コーチ陣が蚊帳の外に置かれている状況を不安視する声も。
それもそのはず30代、40代のコーチ陣に対して工藤監督は63歳で、福岡ソフトバンクホークスをパ・リーグ優勝3度、5度の日本一に導いた名将。しかも選手としても48歳まで現役を続け、通算224勝を挙げたレジェンド。“年功序列”の野球界で、しかも監督直々とあってはコーチが口を出せないのも致し方がない。
「ソフトバンク時代も熱血指導で知られた工藤さんです」とは、毎年のキャンプ取材を担当するスポーツライター。
「よくいえば“教え上手”、くだけて言えば“教え魔”の工藤さん。自身が学んだ、実践してきた理論から基づく指導法で、ソフトバンクでも選手育成には定評があります。ただ投球だけでなく“専門外”の打撃、守備、全体練習やトレーニング法、アップにおいても自ら指導するのが“工藤流”です」
そんな”工藤流”は中日キャンプでも早速見られている。グラウンド内を動き回っては、時に連携プレーの練習でボールが危うく自身に当たりそうになっても、退くことなく常に最前線で見届け、そして体当たり指導を繰り返していた。
指導はするが、責任を負うのも監督
「自身が一番の年上で経験もあるだけに、若いコーチ陣に走塁練習の教え方を指導する姿も見えました。本来、スポーツ指導において気をつけるべきは、コーチや指導者によって教え方、方針が異なること。選手はどちらを聞けばいいのか混乱しますからね。
ただ監督自身が明確に指導方針、目的を示すことで、コーチもそれに沿った指導をせざるを得ません。そして自身が積極的に口を出す代わりに、決して選手やコーチのせいにしない、全責任を負うのが工藤監督。それくらいの覚悟を持って、変革をチームにもたらすべく中日監督を引き受けているのだと思います」(前出・スポーツライター)
キャンプ初日ということもあるが、投手コーチ陣らも工藤流を受け入れ、見守ることに徹していたのだろう。それでも時に投手陣に声かけをしたり、吉見コーチは捕手後方に周り、自ら打席に立ったりと出来ることをしようとする姿勢も伺えた。
この「工藤流」が選手やコーチ、チーム全体に浸透したとき、中日は再び常勝軍団としてセ・リーグの主役になるのかもしれない。
