同性パートナーシップを認める証明書を発行することになった渋谷区が注目されている。気になる渋谷区条例の主な要点は下のとおり。

■渋谷区条例の主な要点

【できること】

●同性パートナーシップ証明の発行

(ただし公正証書の作成、任意後見契約が必要)

●渋谷区営住宅への同性同士の申し込み

●渋谷区民、事業者に対し、同性同士の関係を尊重するよう求めること

●企業での採用や待遇、昇進、賃金等における男女平等、性的少数者への差別是正の推進

●渋谷区長による差別是正の勧告指導、従わない者への氏名公表

【できないこと】

●婚姻の証明、相続、配偶者控除を受けること

●同性同士が子どもの親となる資格(共同親権)

●外国人パートナーへの在留資格(配偶者ビザ)

LGBT

 戸籍上の夫婦と認められるわけではなく、結婚に付随するさまざまな権利─相続や配偶者控除等を受けられるわけでもない。

 そもそも今回の条例は、性を理由としたあらゆる差別を許さず、多様性を尊重する社会を推進していくことが趣旨。そのための施作の1つに、同性パートナーシップ証明がある。

「パートナーが入院した際、パートナーの家族や病院に面会を断られたり、家を借りるときに賃貸契約を断られたりするという問題は、同性カップルの多くが経験しています。そうした場合に、公的機関が出した証明書を出すことで断りにくくなるかもしれません。ただ、どこまで強制力が働き、どのように企業や病院に影響を与えるかは未知数です」

 メリットの一方、負担や義務も課される。証明書の発行には公正証書の作成が必要。数万円から10万円以上の費用がかかる。加えて、任意後見契約の締結も義務付けられている。

「任意後見契約は本来、認知症などで判断能力が落ちたときに、誰が財産を管理してくれるのかという話。証明書を発行するために任意後見契約を結んだことで将来、判断能力が落ちたときに、財産管理の目的で第三者と契約を結びたくても、できない恐れがあります。これと公正証書の両方を求める要件は厳しすぎます」

 今回の渋谷区条例に対し、セクシュアルマイノリティーの反応はさまざまだ。

「条例ができたと知って、渋谷区に引っ越したくなりました。家賃が高くて住めないけど」(絵梨さん)

「老後を考えると、パートナーシップより個人が保障される制度のほうが自分には大事かも」(幸典さん)

 条例の中身や、区の姿勢を問題視する声もある。

「子育てしているレズビアンカップルは多いのに、同性パートナーと子どもの保障について、いっさい書かれていない」(薫さん)

「“公序良俗に反しない限り”パートナーシップ証明できると書いてあったり、区長の承認が必要だったりするのは疑問。何より、年末に(渋谷にある)宮下公園からホームレスを強制的に締め出した渋谷区が言う多様性って何? いま、よかったねと踊って、後悔しないか心配」(麻美さん)