5月にSIMロック解除が義務化されて、通信料金が安くなると話題になった格安スマホ。興味はあるけれど、初心者にはよくわからない! というのが正直なところ。そこで、格安スマホの基礎知識をQ&A形式でわかりやすく紹介します。

「大手のスマホの通信費に比べて、月々の通信費が3分の1以下になることも。データ通信だけなら1000円以下になる通信プランもあります。とはいえ、手続きが難しそうなどといったイメージから、まだ普及しているとは言えない状態です」

 そう話すのは、自身も格安スマホを6回線使いこなしている庄司恒雄さん。でも、そんなに安くて本当に大手のスマホと同じように使えるのでしょうか?

「実際使ってみると、今までのスマホと変わらずに使えるという声がほとんど。わからないことがあったら、格安スマホを販売している量販店などに出向いてどんどん質問してみてください。ただし、安いものを買うためにチラシや口コミを調べてから買い物をするのと同じように、事前に下調べをしておくことが大切です」

〜答えてくれたのは庄司恒雄さん〜

PDA(個人用携帯情報端末)の黎明期に、「PDA-JAPAN」というサイトを立ち上げ、日本のPDA普及に努める。現在はLINEにて企画・執筆なども担当。All About携帯電話・スマートフォンガイド。

■素朴なギモン編

Q. そもそも格安スマホって何?

A. 本体価格が安いスマホと通信料が安いSIMの両方をさす

「現在、“格安スマホ”とは、本体価格の安いスマートフォンと、通信料が安い格安SIMカードをセット販売しているものや、スマホ単体、SIMカード単体のどちらに対しても使われているようです。月々の通信料が安くなるのは、格安SIMを使った場合になります」

(注)通常、大手のキャリアでは、スマートフォンを自社のSIMカードを挿入した状態で販売しているケースが多い。現在、格安SIMの会社でも同様に、格安スマホと格安SIMをセットで販売し、スマホ代を分割で払えるプランも増えている。

Q. 格安SIMって何?

A. 通信回線を借りてサービスを提供しているもの

「NTTドコモやau、ソフトバンクなどいわゆる大手の通信会社(キャリア)は自社で基地局やアンテナを整備し、独自のモバイルネットワークを持っています。一方、その大手が作った通信回線を借りてサービスを提供し、データ通信できるのが格安SIM。データ通信料が安いのが最大の特徴です。格安通信に必要な『SIMカード』を買い、スマホに挿入して使います」

Q. 専用のスマホが必要なの?

A. SIMフリーのスマホがあれば使える

「今年の5月から、通信会社を制限するSIMロックを解除する法律ができました。まだ、すぐにすべての機種がSIMフリーになっているわけではありませんが、手持ちのスマホがSIMフリーであれば、そのまま使用できます」

Q. 何で安いの?

A. 小口の通信プランを持ち人件費も少ないため

「格安スマホの通信事業者が提供するサービス(以下、格安SIM)では、大手が提供しているような通話し放題などの大容量のプランがないかわりに、利用者が実際に必要な通信量に合わせて、料金を低くした小口の通信プランを提供しています。また多くは実店舗を持たず、契約やサポートもオンラインや量販店ですませているため、人件費が抑えられていることも安い理由のひとつでしょう」

Q. 安いのに、なんで普及しないの?

A. 手続きが難しそうなどのイメージがあるため

「格安スマホが知られるようになってからまだ日が浅く、使い方や手続きの方法が周知されていないため、“面倒くさそう”“ハードルが高い”と思われがち。また対面販売が少なく、ネット上で自分で手続きする必要があるのも、格安スマホの購入を躊躇させている原因です」

Q. メリットとデメリットは?

A. 料金は安いが、対面販売窓口が少ない

「メリットはなんといっても料金の安さですが、それ以外にも、店頭などでSIMカードを購入し、サイト上で申し込んで必要事項を記入すれば10分程度ですぐ使えること、最低使用期限がなかったり、あっても1年など短めが多いことでしょう。逆にデメリットは、かけ放題などのプランがないため、通話をしただけ料金がかかること、対面販売やサービスが少ないことですね」

【メリット】

●データ通信料が安い

●最低契約期間が短い

●SIMカードが手元にあればすぐ開通できる

●使い切れなかった通信量が繰り越せる場合が多い

【デメリット】

●音声通話が割高になる

●店舗がないか少なく、直接相談しにくい

●キャリアメールが使えない

●ショートメッセージサービスなどは、別料金の場合もある

Q. どんな人に向いてるの?

A. インターネットをメーンに使っている人向き

「先述したように格安SIMは通話をしただけ料金がかかるので、スマホでは通話をほとんどせず、ネットをメーンに使っている人向き。通話をしても1日1分以内で終わるような人なら、格安SIMのほうが得でしょう」

【向いている人】

●電話はほとんどかけないか、アプリの無料通話を利用する人

●インターネットをよく利用する人

●ネットショッピングができるくらいのスキルがある人

●スマホのほか、タブレットなど複数の機器を使用する人

【向いてない人】

●電話をすることが多い人(アプリでの電話を除く)

●高低差のある土地など、電波が不安定な場所に住んでいる人

●仕事で電話をかけることがある人

Q. 普通の通話以外の手段は?

A. インターネット回線の無料通話を利用すると便利

「格安SIMでは通話すればそれだけ料金が高くなります。ただ、今はLINEやスカイプ、フェイスブックを使えば、無料通話もできます。また楽天電話には、3分間までは国内通話が何度でも無料というプランも。これらを使えば、さほど不便を感じないかもしれませんね」

Q. 通信速度は?

A. 普通にインターネットを使う分には大丈夫

「通信速度は水道ホースに水が流れるのと同じで、1か所に多く集まると速度が遅くなります。利用者の多い大手が通信速度にこだわる理由はまさにここです。一方の格安SIMは、大手に比べて速度は遅いですが、普通にインターネットを使う分にはストレスを感じない程度の速さは十分にあります」

Q. 通信量って、どれくらいが普通?

A. 通常の使用なら、通信量は2GBあれば十分

「データ通信量を意識して使っている人は少ないでしょう。実は1か月間にインターネットを見たり、ツイッターやLINE、フェイスブックを使う程度なら1GB程度。毎日動画(高画質を除く)を30分見たとしても1か月2GBあれば十分なのです。通信量を抑えた格安SIMなら、低料金のプランがたくさんありますよ」

Q. 田舎でも通信できる?

A. 山岳地域などでは難しい

「例えば、高低差の激しい山岳地域では、データ通信やインターネット通話は安定しにくい場合も。また、地方都市などでは仕事が通話で成り立っているところも少なくありません。仕事で通話をする人は、大手キャリアのスマホがおすすめです。今のところ格安SIMは、大都市圏の都市部の人向きといえるかもしれません」

Q. 携帯番号とかメアドは変えたくないんだけど…

A. 携帯の電話番号やGメールアドレスはそのまま使える

「ナンバーポータビリティーの手続きをすれば、今まで使用していた携帯電話の番号がそのまま使用できます(費用は3000円程度)。また、Gメールなどのメールアドレスはそのまま使えますが、キャリアメール(@softbank.ne.jpや@docomo.ne.jpなど)は使えなくなります」

※次回は実際の手続き編