家族といっても赤の他人……。その陰には切っても切れない女同士の因縁“嫁姑”関係が潜んでいる。しかし現代では、嫁をイビる姑、噛みつく嫁という関係性は希薄になってきているという。

 読者に緊急アンケートを行ったところ、下のグラフのように「どちらかといえば嫌い」「嫌い」という人たちは嫁姑ともに20%前後。多くの嫁姑は憎み合うことをやめたのだろうか。

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 ノンフィクションライターの石川結貴さんは、現代の嫁姑関係をこう分析する。

「昔に比べて2人の関係性が変わってきているのは明白。“私たち、仲が悪いです!”という状況が見て取れるような、あからさまに確執がある嫁姑は少なくなってきています。

 女性の社会進出が進んだことで、お姑さんに育児や家事をお願いすることが、今や当たり前になりつつあるため、嫁も姑もお互いを上手に利用するようになってきています」

 夫婦仲相談所所長の二松まゆみさんも口をそろえる。

「現代はお姑さんも若い感覚の方が多いです。というのも、高齢化が進み、お姑さんのさらにお姑さんもお元気だから。自分がその家を守るという感覚が薄いのかもしれませんね。

 これはお嫁さんにも言えること。漢字のなりたちのごとく、家に入る“嫁”という感覚は薄くなってきています。夫の実家のことを、“義理の実家”という言い回しで語ったりしますから。この言葉に、夫の家に従属するという概念が薄れ、自分はその家の一員というわけではないという意思が見えています」

 前出の石川さんは、転職しやすくなったことも嫁姑関係に変化をもたらしたのではないかと語る。

「’90年代前半は、新卒で入社した会社に骨を埋めることをよしとするような風潮がありました。’00年代初頭からは転職サイトができたり、パートタイマーとして働く機会も増えた。このころから、仕事だけでなく、家庭のことにおいても女性たちは“イヤなら我慢しない”という傾向に変わったように感じます」

 女性が社会に進出したことで、嫁姑の因縁も徐々にやわらいできているのだ。

「お互いに仕事を持っていることも多いため、もはやケンカをする場面も少なくなっています」(石川さん)

 家族構成の変化も大きい。内閣府が発表した平成26年版高齢社会白書によると、65歳以上の人がいる世帯の構成割合は、’80年には三世代世帯が全体の50.1%、夫婦のみの世帯が16.2%なのに対し、’12年には三世代同居が15.3%、夫婦のみの世帯が30.3%と、様変わりしている。

「お嫁さんとお姑さんが同じ屋根の下にいなければ、同居している方よりも衝突する可能性は少なくなるでしょうね」(前出・二松さん)

■実はこっそりどこかで繰り広げられている?

 しかし、仲よくしようとするために不満を堪えてしまうことも。

「生きた時代も生活習慣も異なる2人ですから、かみ合わないことはあります。掃除の仕方、料理の味つけ、冠婚葬祭でのマナー、孫の教育方針などで対立することが多いようですね。それでもお互いが“仲よくしなければ”と考えるために我慢してしまう。特にお姑さんは、昔イビられた過去があるので耐えているのかもしれませんね。嫁に対して、腹にイチモツを抱えたまま接しているうちに、ある日突然、爆発することも少なくありません」(石川さん)

 爆発の仕方も、決して怒鳴るわけではなく、無視をしたり冷たくしたりと、一見してわかりにくい程度のものに変わってきているというのだ。

「顔で笑って、心は鬼に……ということは多いです。面と向かって言うのがはばかられる人たちが、カタチを変えてお互いに牙をむいていることには違いありません」(二松さん)

 見た目には減ってきた嫁姑バトルも、実はこっそりどこかで繰り広げられているのかも。

「昔に比べて仲よくなりすぎてしまったことで、コミュニケーションにズレが生じてしまったのです。TPOは絶えず変化し、ここ10~15年の間でも大きく変わってきている。気を遣ったつもりが逆効果なんていうこともある。持っている常識のものさしが違うので、お互いに何が正解かがわかっていないはず。怒らず、やさしく指摘してあげてください」(石川さん)

*「姑と舅の関係が良好なら、負の感情の矛先は嫁に向かない」と二松さん(写真はイメージです)
*「姑と舅の関係が良好なら、負の感情の矛先は嫁に向かない」と二松さん(写真はイメージです)

(取材・文/小島裕子、本誌「嫁姑」取材班)