11月にかけて国民ひとりひとりに“マイナンバー”の記載された通知が届けられる。制度開始時に国民が直接感じられるメリットは少ない。ただし、民間分野での利用が広く認められると実感はさらに高まっていくと、共通番号制度に詳しい富士通総研の榎並利博さんは語る。

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「電気会社やガス会社などの民間企業でも個人番号が利用されるようになると、例えば引っ越しの手続きがかなりラクになります。役所に個人番号を提示するだけで、電気やガス、水道、銀行、新聞などの住所変更を自動的にしてくれるようになります。

 家族が亡くなったとき、遺族が当事者の銀行口座を容易に引き継げたり、知らされていなかった口座が通知されたりすることもあるでしょう」(榎並さん)

 いちばん大きなメリットが生まれるのは、医療分野での活用だ。

「電子カルテを個人番号で管理できるようになれば、病院間での情報交換がスムーズになります。転院するとき、改めて自分の病状を詳しく説明する必要がなくなるのです。

 これによって、二重検査や二重投薬がなくなり、約1兆円の費用が削減できるという試算もあるほど。かなりの経済効果が期待できます」(榎並さん)

 政府は医療分野にマイナンバー制度を導入する方針で進めており、年内にも決着させる予定だ。

 マイナンバー制度は左上にあるスケジュールで実施されていく。ここで注意しておきたいのが“通知カード”と“マイナンバーカード(個人番号カード)”との違い。

 来月から国民ひとりひとりに届く通知カードには、12ケタの個人番号と氏名、性別、住所、生年月日が記載されている。だが、この通知カードは個人番号を通知するだけのもの。

「通知カードを提示するだけでは、マイナンバーを使った行政サービスは受けることができません。通知カードとともに運転免許証などの身分証明書も必要になります」(榎並さん)

 来年1月以降、市町村に申請すると個人番号カードがもらえる。これには通知カードの記載情報のほか、顔写真やICチップの機能が入っている。

「このカードがあれば、ほかの身分証明書なしでマイナンバーの行政サービスが受けられます」(榎並さん)