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 いまや2人に1人がかかり、3人に1人が亡くなる「がん時代」に突入。身近な病気であるわりに、デマや噂に惑わされないで本当に役立つ情報を見つけだすのは難しい。そこで、がんに詳しいスペシャリストたちに話を伺った。

・切らなくてもがんを治せる?

 手術は、がん治療の大きな柱のひとつ。しかし体力のない高齢者や重篤な合併症がある人にとって、大きな負担となることも。

「がんの種類にもよりますが、手術で切らなくても治せるがんはあります。例えば、皮膚がんの一種である有棘細胞がん。放射線治療で完治できるケースもあります」(ロンドン大学・小川徹先生)

 なかでも注目されているのが『重粒子線治療』。

「がんの大きさや位置に合わせて、重粒子線で狙い撃ちする治療法です。胃や腸のように動く臓器のがんは対象になりませんが、局所にあるがん、手術困難ながんなどに適しています」(小川先生)

 治療の傷痕が残らず、副作用が少ない。高齢者でも治療可能。通常のX線では届かない、深い部分にあるがんも治療できるなどのメリットがあるそう。

「デメリットは、治療を受けられる施設が限られていること。費用も高額です」(小川先生)

・「ニオイ」でがんを見つけられる?

「ホントです。がんには特有のニオイが存在します。これを嗅ぎ分けることによって、がんを見つける研究が進められています」(小川先生)

 その特性を生かし、なんと尿1滴で判定できる方法を編み出したのが九州大学理学部の研究グループだ。

「わずか体長1ミリの線虫が、尿のニオイによって高精度にがんの有無を識別できることを突き止めました」(小川先生)

 線虫は犬と同じように嗅覚のすぐれた生物。好きなニオイへ寄っていき、嫌いなニオイからは逃げるという走性行動があり、反応を容易に調べられるという。

「東京医科歯科大学でも、がん特有のニオイに注目。手のひらの小さな穴から出ている生体ガスのニオイで食道がんなどを早期発見する試みが研究されています」(小川先生)

・唾液や尿でがんがわかる?

「ホントです。がん細胞が分泌する物質に着目し、少量の唾液や尿、1滴の血液でがんを発見しようとする技術開発が国の主導で進められています。10種類以上のがんをターゲットとし、このうち乳がんと大腸がんについては実用化に向けて先行スタートしています」(小川先生)

 現に東京医科大学の研究グループは、唾液を使った膵臓がん検査の臨床試験を今年度から開始。実用化されれば、早期発見が困難な膵臓がんで“見つかったときは手遅れ”ということが大幅に少なくなる。国立がん研究センターや塩野義製薬は、尿から膀胱がんを見つける技術を開発中だ。

「がんの早期発見だけでなく、今後は転移の有無までわかるようになるかもしれません。治療法や病気の予後も大きく変わっていくことでしょう」(小川先生)