羽生結弦2

 3月25日から中国・上海で行われるフィギュアスケート世界選手権のリンクに、羽生結弦が立つ。

 ’14 ~’15 シーズンの羽生は、度重なるアクシデントに見舞われた。羽生サイドとスケート連盟側のコミュニケーション不足も指摘されているが、強化部門は名ばかりとなり、選手サイドに丸投げ状態だと関係者は語る。

「羽生の足首の状態にしても、一時は《問題ない》なんて記事が新聞に載ったんですよ。羽生サイドとしては、“また連盟側が誤報を流しているよ”と、さらなる不信感を募らせた。コミュニケーション不足というよりも、確執という言葉のほうが合っているように思いますね。羽生サイドは、それこそジュニア時代から嫌がらせのような仕打ちを連盟側から受けてきたんです」(スポーツ紙ベテランカメラマン)

 最も有名な話が、2歳のころからぜんそくを抱える、羽生へのケアに関するトラブルだという。

「飲み薬ばかりか吸入薬も常備しなければならない羽生にとって、飛行機での移動は心配事のひとつ。気圧の変化で、ぜんそくの発作を起こしかねないからです。ある海外での大会に参加するときに、母親の由美さんが同行を願い出ても、連盟は“ドクターがいますから”のひと言で却下。しかも、由美さんには会場の関係者パスさえも発行しなかったのです」(元連盟関係者)

 当時の羽生は世界ジュニアチャンピオンに輝くほどの実績を残していた。高橋大輔や浅田真央には2枚以上の関係者パスが簡単に用意されていただけに、多くの人にはそのことが理不尽に見えたという。

「一般チケットを購入して会場入りしている由美さんを見かねたマスコミ関係者が、取材パスを貸してあげることもあったほどでしたね。ただ、そのパスを持っていても、ミックスゾーンで声をかけてあげることぐらいしかできない。彼女はとても不安だっただろうし、無念だったと思いますよ」(前出・元連盟関係者)

 ぜんそくを患う子どもを持つ親であれば、母・由美さんの心配は他人事ではない。偶然、同じ飛行機に乗り合わせたある商社マンが、羽生親子の様子をこう語ってくれた。

「すでにメジャー選手だったので、羽生クンはビジネスクラスでした。すると、突然、発作に襲われたようで、シートをリクライニングにして横向きに両脚を抱えるようにして寝たんです。そして、お母さんが添い寝するようにして背中を優しくさすっていました。それこそ、ひと晩中だったように記憶しています。羽生クンは呼吸が苦しくなると親指を噛むようにしていた仕草が印象的でした」

 ‘13 年7月からANAと所属契約したことで、羽生家の経済的負担は一気に軽減された。だが、もっと早くスポンサー契約するチャンスがあったというのだが……。

「’12 年に名コーチのブライアン・オーサーと契約し、一躍注目度が増したときにメジャー企業との契約話があったと聞いていますが、連盟は横やりを入れてきた。オーサーとの契約をめぐっても、通常なら強化担当者が窓口となるのが筋なのに、実際は元連盟関係者が橋渡しして、やっと実現したんです。このとき、一部報道では、母の由美さんが直談判したという情報が流れましたが、それも“ステージママ”というイメージをすり込むための連盟サイドがリークしたなんて噂も出たほどですよ」(フィギュアスケート専門誌の編集者)

 さらにこの編集者はこう語る。

「由美さんは、決して前に出るタイプじゃない。だいたい、羽生選手は自分で決めたら、母親の言葉でも聞かないタイプ。彼女は身体のケアや衣装を作ったりと、彼を陰から支え続けてきたんです」

 そこで、羽生について、日本スケート連盟に聞いてみた。

――体調はどれくらい戻っていますか?

「ケガの状況は小林強化部長が発表した以外ではお答えできません」

――羽生選手と確執があるようですが?

「そんなこと誰が言っているんですか! ありえません」

 最後に女子フィギュアスケート界のパイオニアである渡部絵美さんがこう話す。

「彼はドラマチックなカムバックがとても似合う。練習不足の中、昨年ケガをしたときと同じ上海の舞台でリベンジとなれば、素晴らしいストーリーですよね」