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 ケガに手術と身体のアクシデントが多かった今シーズンの羽生結弦。五輪王者は休養せず、16日から始まる国別対抗戦に初めて出場するという。

 ポイントもつかないこの大会になぜ彼は出場するのか。今回の“羽生強行出場”の裏には、スケート連盟の台所事情も見え隠れする。

「この大会は、鳴り物やかぶり物の持ち込みが許され、シーズン中とは違って賑やかなムードに包まれる。当然、応援グッズは売れるし、高額な放映権料も入るだけに、看板選手ははずせないんです。連盟はここ数年、スピードスケートとショートトラック部門で年間1億円以上の赤字を出していますが、フィギュアが3億円近い黒字を出し、それで補っている」(スポーツ紙デスク)

 だからこそ、羽生結弦の辞退など許されない状況だったのだ。ただ、羽生サイドにしても、連盟の思惑にすんなり首を縦に振ったわけではない。ある“恩人”の頼みがあったからこそ、彼は出場に踏み切ったというのだ。

「東北高校、早稲田大学の先輩であり、羽生が姉のように慕っている荒川静香さんの存在が大きかった。彼が仙台のリンクで舞い続けてこられたのも、荒川がトリノ五輪で金メダリストとなり、閉鎖寸前だったリンクの立て直しに立ち上がってくれたおかげでした。もし、彼女が金メダルをとっていなかったら、リンクは閉鎖され、今の羽生はいなかったでしょう。それだけに、羽生が荒川を慕う気持ちは、われわれの想像以上なんです。彼女の頼みであれば、当然、無下には断れないでしょう」(フィギュア関係者)

 ソチ五輪で金メダルをとった直後のテレビインタビューで、羽生は荒川を前にしてこう語っている。

「(荒川は)僕にとって憧れの存在。金メダルをとろうと思ったのは、荒川さんのおかげで、だからこそ、本当に頑張ってこられた」

 その荒川は現在、連盟の副会長の要職に就いている。連盟との確執がささやかれる羽生陣営にとって、現役選手の声を拾い上げてくれる彼女は、もっとも信頼できる人物のひとりなのだという。

「副会長とはいえ、若い荒川の提案や意見は軽んじられているようで……。例えば、当時は副会長ではなく理事だったということもあるかもしれませんが、ソチ五輪で直前合宿地を隣国のアルメニアで行うことへの見直しを提案したが、受け入れられなかった。真央ちゃんと佐藤コーチからも、団体戦から個人戦まで10日近く空くために調整場所としてロシア・ナショナル・トレーニングセンターを要望されるも退け、連盟側は強引にアルメニアへ移動させたんです」(スポーツライター)

 結果は周知のとおり、鈴木明子も真央ちゃんもSPで出遅れてしまった。

「下見が不十分だったんです。リンクに砂がまかれていたり、空調設備のトラブルもあって、寒さから体調を崩した。男子こそ、団体戦から4日後の個人戦だったのでモスクワでの調整となり、難を逃れた格好でした。もし男女の日程が逆であれば、羽生の金メダルも幻だったかもしれません」(スポーツライター)

 羽生サイドが荒川副会長をバックアップするのは恩人だからという理由だけではない。体調のすぐれない橋本聖子連盟会長の後任として彼女が会長に就任し、連盟改革を期待しているからにほかならない。

「フィギュア界にとって、連盟の会長に荒川を推す声は大きい。高橋は昨年10月の引退会見で“フィギュアから引いた生活をしながら次の道を探す。今はコーチや指導者は考えていない”と語ったように、連盟との関わりを避けている。もうひとりの五輪メダリストの真央ちゃんにしても今後について“ハーフ・ハーフ”と話す一方で、CMなどでタレントとして着実に地盤を固めており、連盟改革とはほど遠い。五輪メダリストのふたりがフィギュア界を離れる以上、羽生自身、自分が尊敬する荒川と一緒にフィギュア界を盛り上げていこうという思いになっているんじゃないでしょうか」(スポーツ紙記者)