6月22日、森三中の大島美幸が、待望の第一子となる長男・笑福(えふ)くんを出産した。そして自らの出産の様子を、CCDカメラの付いたヘルメットを被り撮影。7月5日には、その映像が『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)で放送された。しかし、この出産シーン放映を巡っては、感動したとの声もあがる一方、“出産シーンをテレビで放映するのは、産むことのできない女性への配慮が足りない”といったクレームも寄せられ、ネットで話題に。フィフィは何を感じたの?


 まず、最近ではよく「テレビ離れ」とか言われていますが、そんななかでの今回の炎上。なんだかんだで、テレビ見ている人はいるんだな〜って思いましたよ。

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 今回の件では、大きく3つの問題点があると思います。

 ひとつめは、クレーマーという存在の実体と、クレーマーを過剰に取り上げ過ぎる風潮。だいたい日本人は、クレーマーの存在に過敏になり過ぎているよね。今回の件に関しても、産むことのできない女性への配慮が足りないって批判するクレーマーは、産むことのできない女性の代表であるかのような立場をとっているけど、産むことのできない女性全員がそう思ってるわけじゃない。あくまでも“私”はそう思っているってだけなわけ。

 それは、たとえばジャポニカ学習帳で「私は虫が嫌いだから表紙に持ってこないでよ、花だったらいいけど」というのと一緒。虫の“見た目”が気持ち悪いっていうのは、あくまでその人の価値観なのに。それなのに、こうしたクレームが通ってしまうと、表紙は花ばかりになっちゃう。本来、子どもにとって昆虫は不思議な生物で、すごく勉強になるはずなのに、大人の価値観のせいで、その探究心を奪ってしまうことにも繋がってしまうんです。

 だから、私的な価値観の押し付けによるクレーマーに、いちいち耳を傾けるのはどうかと思うよ。同時に、こうしたクレーマーの意見を取り上げ、炎上って騒ぐメディアのあり方も問題なんだよね。

 日本人の多くはサイレントマジョリティであって、基本的にサイレントだから、そうした構造のなかではどうしても、クレームとして声をあげた人の意見が世間の代表のように見えてしまうんだよね。今回の大島さんのこともそう。ほんの一部でしかないクレーマーの声を大きく取り上げ過ぎ。そして、それをみんなが大きく受け取り過ぎ。

「産んだ女性の多くは自慢するつもりなんてないと思うんです」

 ふたつめは、クレームを入れた人たちの意識の問題。今回の件も、産むことのできない女性が可哀想ってクレームを入れているわけだけど、可哀想って思うこと自体がそもそも相手を憐れんでいるってことなんだよね。そして問題なのは、そういったクレーマーたちは、自分が相手を憐れむ意識をはらんでいるということに気付いていないこと。

 たとえ子どもを産むことができなくても、ベビーシッターをしたり、他人の子どもを可愛がったりしている人たちは、私の周りにもいっぱいいる。彼女たちは、自分たちに配慮して欲しいなんて押し付けはしないよ。

 子どもを産むことのできない女性には”配慮しなきゃならない”と思っているクレーマーたちの意識そのもの、憐れみの感情そのものが根本的に間違っているんだよね。

 そして最後に、出産シーンを流すか流さないかという問題。これは、いまテレビが面白くなくなっているっていう問題とも関わるんだけど、今回の件のように、いちいち敏感に反応し過ぎてしまうと、表現を狭めたり制限してしまうことにもなって、ますます感動するものや面白いものを作れなくなってしまう。今回の件を考えるときに忘れてはならないポイントは、これは大島さんなりの表現であったというところ。『イッテQ!』という番組のなかで、これまでずっとヘルメットを被って色々とやってきた大変なこと、その延長線上での出産なわけ。それが彼女のスタイルであって、キャラクターなの。

 何を売りにするのか、どこまで出すのかは芸能人によってそれぞれ違っていて、ある人は家を出す、ある人は出さない、私は出産シーンを出さないけど、大島さんは出す、それだけの話。実際、世間のほとんどは、出産の話を聞いて、いいんじゃない? って思うんじゃないのかな。そもそも、自慢したくて放送したようには見えなかったよ。

 それを今回みたいに批判し始めてしまうと、お正月の葉書に子どもの写真を載せたり、結婚や出産の報告をSNS上でするのも気持ち悪いってことにもなっちゃうよ。人が幸せを報告することを、心地良く受け取れない人間が一部にはいるかもしれないけど、世の中のほとんどは喜びを分かち合える。それこそ、今回のケースはテレビなんだから見たくなきゃ、見なきゃいい。

 いずれにせよ結婚して、妊活を頑張って、やっと出産した人を、結果的に批判しましたよね。人の幸せを最後は突き落としてしまう社会、これって問題だよ。

 むかし、大島さんとは番組企画“パンスト弁慶”でパンストを一緒に頭からかぶって引っ張りあった仲です。ブスだの何だのと言われても、大島さんは今後も彼女のスタイルで、体を張りながらやっていくだろうし、お子さんもその姿を見ればきっとリスペクトすると思うよ。だから、大島さんにはどんどん頑張ってやっていってほしいな。

《文・構成/岸沙織》