【好評連載・フィフィ姐さんの言いたい放題】岐阜県美濃加茂市の農業高校を舞台にしたアニメ“のうりん”と、美濃加茂市観光協会がコラボレーションしたイベント“みのかもまるっとスタンプラリー2015”の告知用ポスターが波紋を呼んでいる。このポスター、作業服のボタンがはち切れるほどまでに豊かな胸を持つ“のうりん”の登場人物の一人が大きく描かれているため、公共の場にふさわしくないのではないかとの批判が寄せられているのだ。

”萌えキャラ”は市民権を得てない?

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【写真】一部で撤去された「みのかもまるっとスタンプラリー2015」のポスター

 問題となっている“のうりん”のポスター。アニメを見慣れている人は何とも思わないかもしれないけど、そうでない人たちには、やはり抵抗があったのではないでしょうか。

 また今回のポスターのみならず、三重県志摩市のPRのための海女さんの萌えキャラ“碧志摩メグ”も、性的描写が強いとして最近問題になっていたばかりです。なぜ同じような問題が起こるのか。それは、今のこういったアニメが大衆のものではなく、オタク文化だからなんだよね。

 アニメキャラを公的な場に積極的に取り入れ、発信しようとする動きは、自治体はもちろん国家レベルでも見受けられます。クールジャパンとかもそう。

 だけど海外では、今回のようなポスターに出てくるキャラは児童ポルノ扱いされる恐れもあります。“萌えキャラ”ではなくエロに分類されてしまうよ。

 ましてや日本国内でも、アニメというのは容認されているものの、大衆に受け入れられているとは言いがたい。まだまだオタク文化の一部。“萌えキャラ”といったものに免疫がない人たちが大勢いるわけ。そうした人たちにとっては、このポスター、やはり刺激が強かったのかも。

 私は、オタク文化はオタク文化のままで良いと思うんですよね。それを自治体や国がやたらと公のものとして外に出し過ぎるため、つまりオタク文化で受け入れられていることを安易に大衆文化として提示しちゃうから、今回のような問題が起こってしまうんです。

 第一、今回のポスターは“みのかもまるっとスタンプラリー2015”の告知のために作られたものでしょ。それなのに、まったくスタンプラリー的な要素が見受けられないですよね。要は、TPOに合っていないわけ。いくら美濃加茂市を舞台にしたアニメだからと言っても、何でも良いというわけではありません。一言でいうと、表現としてセンスがない。

 炎上商法などではなく、TPOを踏まえたうえで注目されるポスター、そういうポスターを作ることこそが腕の見せ所なんじゃないかな。

表現の自由を許すあまり、エロが氾濫する日本社会

 アニメに限らず、日本は表現の自由を許すあまり、性的描写のTPOをわきまえていないですよね。中吊り広告、コンビニに成人誌の陳列コーナー、携帯のエロアニメのバナーと、無差別に目に飛び込んできます。日本では、至る所にエロが氾濫しているんです。

 そして常日頃からそういったものを目にしていると、人間、次第に慣れていき、エロに対して無反応になってしまうか、もしくはエスカレートしておかしなことになってしまいます。これは健全な状態とは言えないよね。

 性欲をはじめ、欲というのは制限されている状態が健全なんです。食事も毎日おいしいものを食べていたら、それが普通になってしまうし、プレゼントだってしょっちゅうもらっていたら刺激がなくなってしまうでしょ。

 表現って、制限されたなかでこそセンスや才能が試されると私は思う。そこに人々は刺激を受ける。特にエロに関しては、想像力を働かせることで興奮度が増します。一方でエロがむやみに氾濫すれば、それはもはやエロではなくなっちゃうんですよね。

《構成・文/岸沙織》