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 フィギュアスケート男子史上初のグランプリ(GP)ファイナル3連覇を達成した羽生結弦。ショートプログラム(SP)、フリーともに、NHK杯で打ち立てたばかりの世界歴代最高得点を2週間後に更新するという驚愕の演技で世界中を魅了した。

「時差ボケはありますね。ちょっと疲れたかな」

 12月15日、開催地のスペイン・バルセロナからは、乗り換えなどを含めると12時間を超えるフライトで、そう答えた羽生結弦。

 それでも、羽田空港に帰国した直後で、記者会見の前でも、爽やかな笑顔で『週刊女性』だけの直撃取材に応じてくれた。

 周囲にファンがいないこともあってか、そっと本音を漏らす羽生。それもそのはず、氷上のサバイバルと称されるGPファイナルでの激闘。肉体ばかりでなく絶対王者としてのハートの強さも試される戦いだった。

 長年にわたりフィギュアスケートを取材し、今年も現地スペイン入りして取材したスポーツライターの折山淑美氏はこう話す。

「プレッシャーはかなり感じていたみたいですね。誰かに勝たなきゃというより、(NHK杯で達成した)300点超えをしなくちゃいけないと常に感じていたようです。スケート選手にとって、ノーミスの演技は年に1、2回あるかないかというもの。周囲の期待が高まる中で自分を追い込んでいたのでしょう」

 会心のフリーの演技を終え、キスアンドクライでこぼれた涙こそが、その証であり、ミスを犯したGPシリーズ『カナダ杯』からの立て直しの苦しい日々が、脳裏をよぎったのかもしれない。

「(カナダ杯の後に)SPの演技構成を、後半に入れていた4回転ジャンプを前半に2回入れるという難しいプログラムに変えた。それを(拠点の)カナダで練習していたようですね。新しいSPを習得するために、いつもよりかなり練習量を増やしたんです。厳しいトレーニングをしたので、体力もついたようです」(折山氏)

 国内で行われたNHK杯で、世界歴代最高得点をマークしてから2週間で挑んだGPファイナル。折山氏の目には、21歳とは思えない精神力の成長ぶりが映っていた。

「NHK杯と比べ、SPの完成度はかなり高くなっていた。フリーはより丁寧に滑っていましたね。ただ、NHK杯よりは、調子は悪かったかもしれない。疲れがたまっていたのか、練習でも身体のキレそのものは落ちていたし……。でも、そういう自分の状態をわかって、うまくコントロールできるようになってきたんです。だからこそ、体調が悪くてもさらなる高得点を出すことができたのでしょう。得点が発表されたとき、会場は最高潮に盛り上がりました」