「まかれたものがサリンとは知らなかった。殺害の共謀もありません」

 17年間の逃亡生活を続けたオウム真理教元信者の高橋克也被告(56)の裁判員裁判が東京地裁で始まった。16日の初公判では、殺人罪と殺人未遂罪に問われている地下鉄サリン事件で無罪を主張するなど、起訴された5つの事件すべてで争う姿勢を示した。

「高橋被告の持ち物からは松本智津夫死刑囚(59=教祖名・麻原彰晃)の顔写真や著書、説法テープが見つかっている。留置場では座禅を組み、ブツブツとお経のようなものを唱えているという。留置生活を修行と思っているのだろう。逮捕時は人相が変わるほどやせていたが、初公判ではさらに激やせしていたので驚いた」(全国紙社会部)

 どうやらまだ”洗脳”が解かれていないようだ。公判では裁判長の質問に小声でぼそぼそ答え、注意されるひと幕も。元教団幹部の野田成人氏は高橋被告について「まじめに黙々と仕事をこなし、言いたいことも内に秘めるタイプ」と教団にいたころを振り返る。

 ただ、1度だけ、感情をあらわにしたことがあったという。バスを運転することができた高橋被告が、乗用車しか運転できないくせにいっぱしの口をたたく信者にキレた。

「’90 年ごろだったと思います。バス移動のとき、ある信者が運転手の高橋被告に“そのへんに止めておいて”と路上駐車を指示したんです。すると、高橋被告は“そんなこと簡単に言わないでください! バスは自家用車と違って大きいんだから、路上に止めたら1車線ふさがって迷惑になるんですよ!”と強い口調で反論したんです。内にため込んでいたぶん、一気に爆発したんでしょう」(野田氏)

 今回の裁判員裁判、被害者参加制度で参加する遺族らは検察側の後方に座るため、常に高橋被告の視界に入る。判決言い渡しは4月下旬になる見込み。